このドラマに新鮮味をさらに加えているのが、10歳差でありながら同期という女性バディものという点だろう。女性同士の年の差バディものであれば、同局の佳作『ハコヅメ ~たたかう!交番女子』(21年)と同様の構図だが、今回の桜と真を演じる小芝風花と大島優子は、10歳差とは思えないビジュアル面での違和感のなさと、先輩後輩関係ない2人のやりとりが丁々発止で楽しい。信頼し合う同僚であり、良き友でもあり、さらに深い部分でもわかり合っている…という“奥行き”も感じられ、これまでありそうでなかった絶妙な関係性を初回序盤から完成させている。
その“奥行き”の部分で発揮されているのが、小芝と大島に共通する俳優の魅力としてある、一見すると芯が強く快活そうでありながら、それとは裏腹の危うさと脆(もろ)さが潜む、光と影のコントラストだ。実際に前半部分だけをみると、2人の明るさからカジュアルなキャラクタードラマにも映りそうだが、それはただの前振りで、中盤から後半にかけて徐々に明かされる2人の影の部分にドキッとさせられる。1話時点で、その“陰”の全てが明かされることはないが、今後もドラマを見続けようと思う吸引力と、誰よりも遺族を“帰す”ことに一生懸命な姿に、説得力を持たせることにも成功している。
“生前の人物像”に焦点が当たり始めて起こる変化
最後に、このドラマの世界観を構築する演出にも新しいエッセンスが含まれていることに触れておきたい。
前半のポップな映像世界は、前期の『花咲舞が黙ってない』にも通じる日テレらしさがあるのだが、後半 “生前の人物像”に焦点が当たり始めると、神秘的な雰囲気も醸し出され、ラストに映し出される幻想的な風景は、実にファンタジック。また“生きた証し”を克明に映し出したリアルでもあり、それがまさに生と死…両極端がないまぜになった世界観のようで新感覚であった。そして今作の主題歌を担当するヨルシカが、第1話の物語に美しいリボンをかけてくれるようで、視聴後感も爽やかだ。
第1話で見せたスピーディーな展開は、“帰す”という今作のテーマをより強調させたい理由があったためだろう。しかし今後は、誰が犯人なのか?遺体は一体誰なのか?のミステリー部分に重きが置かれる回も出てくるのではないか。いずれにしても、遺体を家族の元へ“帰す”この作品が、今後どんな物語を見せてくれるのか、最後まで楽しみだ。