きょう13日にスタートする日本テレビ系ドラマ『GO HOME~警視庁身元不明人相談室~』(毎週土曜21:00~)。社会問題になりつつある、全国に2万体も存在するどこの誰かもわからない“名もなき遺体”の身元を特定し、家族の元に帰すことが役目の「警視庁身元不明人相談室」が舞台だ。
これまでも“遺体”を起点にした警察ドラマのヒット作はあったが、どんなところが特徴で魅力となっているのか。「ありそうでなかった“警察エンタテインメント”」と銘打たれた今作を、第1話を事前に視聴した筆者がひも解いていく――。
視聴者に新しいミステリー体験をさせる
この作品は警視庁に実在する「身元不明相談室」をモデルにしたオリジナルドラマで、脚本は『半沢直樹』(13年、TBS)や『VIVANT』(※共同脚本 23年、TBS)、26年にはNHK大河ドラマ『豊臣兄弟!』も控えているヒットメーカーの八津弘幸氏が手がけており、身元が分からない遺体を、家族の元へ“帰す”(=「GO HOME」)ために奔走する捜査官を描いた、死因究明のミステリーと、亡くなった人の生前とその関係者たちの人間模様を重ねていく。
「身元不明人相談室」というこれまでスポットの当たることのなかった部署を舞台にしてはいるが、遺体から“なぜ亡くなってしまったのか?”を解明するドラマと言えば、監察医が主人公の『きらきらひかる』(98年、フジテレビ)や『監察医 朝顔』(19年・20年、同)、解剖医の『アンナチュラル』(18年、TBS)などのヒットドラマが挙げられ、新味に欠けるのではないかと懸念していた。しかし、まさにタイトルの通り、遺体を“帰す”ことに重点を置いた本作は、亡くなった人の“生きた証し”を丁寧に描き込むことで、神秘的な趣すらも感じさせる新しい警察ドラマに仕上がっていた。
まず、今作のテーマであり最も重きを置いている、遺体を“帰す”ことに関して顕著だったのは、冒頭、遺体を発見する事件の発端から、その犯人を見つけ出すまでの捜査、そしてその“ご遺体”は一体誰なのか? の真相が明かされる展開を、一切もったいぶることなく潔く描いた点だ。第1話のあらすじは、とある中学校の理科室に置かれていた人体模型が実は本物の人骨で、その身元を探っていくと…いうもの。この冒頭から繰り広げられる、ある意味“キャッチー”な事件であるにもかかわらず、一体なぜ?誰の犯行なのか?そして、その人骨=“ご遺体”は誰なのか?を前半の時点で全てをスピーディーに明かしてしまうのだ。
それは、スピーディに進行させることで、視聴者へストレスなく見せ切ることにつながっているのはもちろんのこと、視聴者になぜ?なに?誰?と推理させた次の瞬間、すぐに明かしてしまう展開にすることで“予想外”を演出し、それが視聴者に新しいミステリー体験をさせることにも成功している。そして、その前半部分の真相解明は、ただただ謎を提示して明かすだけではなく、様々な知見からのフォローでなるほど感を与えたり、“真実”を巧みに伏せながら進行させていく構成であるため、単純な謎解きではない奥深さもプラスされている。
どうすれば無事に遺体を“帰す”ことができるか
何より、その真相解明のスピーディさは、決して意外性だけを狙ったものではなく、当然、このドラマの肝である、遺体を“帰す”ことに奔走する姿を描くための手段にもなっている。
第1話において、最も多く時間が割かれるのは、遺族側の心情と、亡くなった人の生前のドラマ、そして主人公たちがどうすれば無事に遺体を“帰す”ことができるかの部分だ。その描き込みが丁寧であればあるほど、このドラマはこれまでの警察モノや死因究明ドラマで見ることのできなかった新鮮さにもつながる仕組みになっている。
中でも、遺族が遺体と対峙(たいじ)したとき、自分の関係者であってほしい、あってほしくない…という、逡巡(しゅんじゅん)まで描いている点が、このドラマの良心を感じさせる。また実在の部署をモデルにしているというだけあって、「身元不明人相談室」の働きぶりを、さりげなくHOW TO的に描いている点も興味深い。謎解きに加えて、丁寧な人間ドラマ、そしてお仕事ドラマとしても興味を惹かれる、まさにありそうでなかった“警察エンタテインメント”と言っていいだろう。