フジテレビのドキュメンタリー番組『ザ・ノンフィクション』(毎週日曜14:00~ ※関東ローカル)で6月30日に放送された『東京 家賃2万5000円~僕が四畳半で見る夢~ 前編』(TVer・FODで見逃し配信中)。東京にある4畳半の小さな部屋で、それぞれ俳優、売れっ子芸人になる夢を追う2人の若者に密着した作品で、7日に「後編」が放送される。
取材したのは、これまで『ザ・ノンフィクション』で『都会を捨てた若者たち』『彼女が旅に出る理由』など、若者たちの生き方を描くドキュメンタリーを制作してきた蜂谷時紀ディレクター(テレビマンユニオン)。今回の主人公は、いずれも経済的に厳しい生活を送っているが、「夢に向かっている人は心まで貧乏ではないんだ」と受け止めたという――。
演劇とお笑いの世界で夢を追う
石川県から4年前に上京してきた金子翔さん(33)が暮らすのは、蒲田にある築80年の部屋。自炊をしながら、生活費を切り詰めて追うのは「俳優になる」「演劇の世界で生きていく」という夢だ。劇団の旗揚げ公演をするべく奔走するが、会場に選んだ地元の区民施設は、2日間貸し切るのに、金子さんの家賃のおよそ4カ月分もかかるという。
東中野にある築40年の木造アパートに住むのは、芸歴5年目のピン芸人・竹迫ゆうじ(27)。テレビに出演し、売れっ子芸人になることを夢見ているが、「テレビに出られる芸ではない」とダメ出しを受ける日々を送っていた。持ちネタは、女性との交際経験ゼロから生まれた「妄想恋愛」だが、同期の女性芸人を意識するように。肝心のお笑いそっちのけで人生初の恋愛に浮かれまくってしまう…。
激安物件に住むのは単身高齢者ばかり
今回の企画は、近年、地価や物価が高騰する東京で、破格の家賃のアパートに暮らして夢を追う若者の姿を通して、現代社会を見つめることを狙ってスタート。最初は不動産屋にかけあい、家賃3万円以下の物件に暮らす人を紹介してもらおうと思ったが、プライバシーの問題もあり、門前払いされてしまった。
それから自分で物件を探し、現地に張り込んで取材を申し込もうと考えたが、住んでいるのは単身の高齢者ばかり。これはこれで、現代社会を映す一つの事象だったが、当初の狙いを貫くため、10か月ほど取材対象が見つからない状況が続いた。
芸人の世界にも目を付けたが、収入の少ない芸人はシェアハウス生活が主流。それでもリサーチを続ける中で出会ったのが竹迫だった。
もう一人の金子さんは、別番組を担当していた編集スタッフが、その映像素材の中に映っている姿を発見し、「最近珍しい風呂なしのアパートに住んでいるそうですよ」と教えてくれたことで出会うことができた。当初は月々の家賃3万円以下で探していたが、2人ともより安い物件に住んでいたため、タイトルも『東京 家賃2万5000円』になったのだ。