こうした貴重な体験を放送だけでなく、直接の対話によって伝える場として設けられるのが「取材報告会」。系列各局の協力で、主に全国の学校などを訪れ、若い世代の学生たちを対象に実施している。

佐々木アナは「“伝えてくださってありがとうございます”とか“知らないことを知ることができました”と言っていただいて、この話を聞いたのをきっかけに、その後国際支援の仕事を始めたという方もいらっしゃるんです。現地では無力感にさいなまれていましたが、顔が見える相手に伝えるという、アナウンサーの原点も感じることができて、すごくいい機会になりました」と、その意義を感じている。

倉田アナは、番組の映像では伝えきれないエピソードを共有できる貴重な場であると認識。

「今回ネパールに、日本からアルファ米を持っていって農村で夜食べたのですが、そのプラスチックの容器をゴミ箱に捨てますよね。でも、現地の人たちはプラスチック容器のゴミをどう処理していいのか分からなかったらしく、翌朝彼らの畑にそのまま捨てられていたんです。“これはいけない!”、“我々は何のために来たんだ!”と衝撃を受けて、その容器を拾って自分たちで持っていくことにしました。こうした些細なエピソードはVTRでは絶対使われない。小さいことだけど実は大事なことなので、それを語れるのが報告会だと思いますね」

  • ネパール取材より

「世界でフジテレビしかない」パートナーシップ

国連が定めた「SDGs」が掲げる17の目標のうち、「貧困をなくそう」「飢餓をゼロに」「すべての人に健康と福祉を」など、該当する活動をいくつも行ってきた「FNSチャリティキャンペーン」。吉川局長は「これを50年前から先取りして活動しているということに加えて、単発で終わらず、継続してきたことが大きいと思います。特にコロナ禍の頃はイベントもできないので募金活動など苦労しました。やめることは簡単ですが、一度止まるとまた始めるのはとても大変なことですから」と語る。

SDGsの目標には「パートナーシップで目標を達成しよう」という項目もあるが、吉川局長は「これは、まさにテレビ局が一番大きな役割を果たせるところだと思います」と強調。倉田アナは「ユニセフの現地スタッフに、海外のメディアともこうした活動を一緒にしているのかを聞いたのですが、カメラクルーが2週間来て、リサーチして、車を出して、毎日ロケ取材するのは、世界でフジテレビしかないと言われたんです。このパートナーシップが続いているというのは、素晴らしいことだと思います」と胸を張った。

テレビ局が主体となって行うことで「信頼」が担保されているが、昨年、日本テレビ系列の日本海テレビで『24時間テレビ』の寄付金を着服するという「信頼」を大きく揺るがす不祥事があった。この件を受け、吉川局長は「お金の出金・入金は1人でやらず、必ず複数人で行うという体制が整っているか。我が社はもちろん整っていますが、系列各局にも改めて確認し、もう一度注意喚起を行いました」と説明しており、次の50年に向け、改めて気を引き締め活動していく姿勢を示した。