また飯田氏は、北村匠海扮する弁護士・赤峰柊斗がラストで明墨と対峙するシーンについて「企画書の段階で、あのラストは決めていました」と述べると「赤峰が最終的にアンチヒーローを引き継ぐという意味合いではないのですが、ドラマを通して赤峰の中での正義の形がどんどん変わっていくところは表現したかった。実はあのシーンの照明は、LD(Lighting Director)の鈴木さんのこだわりで、第1話の冒頭で明墨がしゃべっているシーンと同じものにしているんです」と意図を明かす。

物語の一つのテーマであるという赤峰の変化。「どんどん赤峰が明墨に似てきた」という声も聞かれた。飯田氏は「正直脚本を作っている段階で、北村くんがこうやって演じることは想像できなかったんです。北村匠海さんが、赤峰をどう作っていくか、ということを、全話の脚本から逆算して構築してくれて。脚本上の何十倍にもなっている。見事でした」と脱帽。

特に、岩田剛典演じる緋山啓太が殺人を犯した証拠になる作業着を明墨が隠すように指示したことを突き止めたあとに明墨と対峙するシーンの北村の芝居に「あの辺りから赤峰に同化していくような感じがして、だんだん怖さも覚えるようになっていったんです。ゾクゾクしました」と印象に残るシーンを挙げていた。

飯田氏が最終回で一番印象に残っているシーンが、岩田演じる緋山と明墨が最後に対峙したシーンだという。

「1話の冒頭で明墨が言った『殺人犯として生きることはどういうことだと思いますか』という部分にリンクしているシーン。このドラマで言いたかったことなんです。一度レッテルを貼られてしまったら、ずっとその印象がぬぐえない。それはこの世の中の現実なんですよね。そういったシビアな現実を表現した上で、明墨にそれに対するアンサーをさせたかった」。

もう一つ、飯田氏は志水が娘である紗耶(近藤華)と対面する感動のシーンについて「緒形さんが、8~9キロ痩せて役に臨んでくださったんです。すごくブカブカのスーツ姿だと感じると思いますが、12年間を見事に表現してくれました。本当に敬意しかありません」と裏話を披露すると「作品を通して、志水と紗耶、(藤木直人演じる)倉田と紫ノ宮、伊達原と娘という関係性が描かれています。自分が窮地に陥ったとき、それを娘に言えるのか。自分自身にとって何が大切か、その辺の感覚や感情に注目してほしいです」と最終話のキーになる部分を述べた。

続編は?「もしあるのであればやりたいね……みたいな雰囲気は」

物語は、糸井一家殺人事件が解明されずに終わり、真犯人についても触れていない。飯田プロデューサーは「真犯人について、我々のなかでは設定を作っていて、それを物語で描くかどうかは議論になっていたのですが、それを描く必要のあるドラマかどうかを考えたとき、そこが論点のドラマではないなという判断で描かなかったんです」と説明。

その意味で、飯田氏は「まだのうのうと犯人が生きているだろうなという想像ができますよね」と余白の残すラストになっていることを述べ、続編については「キャストの皆さんも、とてもいいカンパニーだったなという印象を持ってくださっているみたいで、現場の最後の方では、例えば佳乃さんが『私ラブ路線ないのかしら』なんてことを話していましたし、妄想的な話では、もしあるのであればやりたいね……みたいな雰囲気はありました。まあ今のところまだ全くそういう予定はないですし、僕らが議論する段階でもないですね」と語っていた。

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