長谷川博己主演のTBS系日曜劇場『アンチヒーロー』(毎週日曜21:00~)で、殺人容疑をかけられた緋山啓太役を演じている岩田剛典にインタビュー。奇しくもNHKの連続テレビ小説『虎に翼』(総合 毎週月~土曜8:00~ほか)では、裁判官を目指す花岡悟という対照的な役柄を演じている。「たまたまオンエアがかぶりましたが、同時期に真逆の役ができたことは自分にとってラッキーでした」と語る岩田に、『アンチヒーロー』のキーマンとなりそうな緋山役について話を聞いた。

  • 『アンチヒーロー』緋山啓太役の岩田剛典

本作は、犯罪者である証拠が100%揃っていても無罪を勝ち取るという限りなくダークで“アンチ”な弁護士・明墨正樹(長谷川)が主人公。岩田が演じているのは、羽木精工という会社の従業員だった緋山で、社長を殺害した容疑で起訴されたが、明墨の弁護によって無罪となった。どうやら緋山はその後も水面下で明墨と組み、何かを探っている様子だが、その内容はまだ明かされていない。

数多くの伏線が張り巡らされた巧妙な脚本について岩田は「本が面白いということで、役者にとってはすごく魅力がある作品だなと思います」と語る。

さらに「作品に入る前の段階で、すでに8~9話くらいまでの脚本が出来上がっていたので、どっしりとした信頼できる現場だなという印象を受けました。連ドラにおいて、それはなかなかないことで、自分としては、先にあるシーンを計算しながら演じられたことが良かったです。クランクインのシーンから、自分の中で整理をしてから臨めたので、すごくありがたかったです。また、緋山がどういう人物なのかは、8話で初めてわかるのですが、そこが最初からあるのとないのとでは、芝居としても雲泥の差があると思うので、あって良かったです」と、逆算しながら演じられたことが功を奏したことを明かした。

岩田は金髪の緋山役について「この髪の明るさでドラマに出たことはないですし、犯人役はこれまでにも演じたことがあるのですが、いわゆる1、2話のゲスト出演風に見せかけて、後半でまた出てくるといった役どころは今までなかったかなと。12年前と現在が入り組んだ脚本で、ちょっとしたキーマン的な役という点が新鮮に感じました。役作りについては、決して根が明るい青年ではないというところで、佇まいや目の奥の光のなさ、口調などを意識しながら演じています」と語った。

演じていて難しい点を聞くと「僕は少ししか台詞がないから、皆さんと比べて大変だとかは言っていられない感じです」と恐縮しつつ、「逆に言えば、表情だけでストーリーを繋ぐ役目があるので、 そういうところでしょうか。また、法廷のシーンは人が多いので非常に大変です。1シーンにつき100近いカット数を撮るので集中力をキープしなければいけないし、スタッフ、キャストを含め、 チーム力が試されるような撮影が続いています」と答えた。

1話で初登場した時点で、視聴者からかなり反響があった緋山。岩田は「殺人事件の犯人とされながらも、実際に彼が罪を犯しているのか否かと。2話のラストシーンでは、そこを少しうやむやにさせるような脚本になっていたので、いろんな考察記事が上がって盛り上がってくれました。そういうキーマンを演じられて、すごく役者冥利に尽きます。この先もけっこう予想外の事実がきっと出てくると思うので、そういう観点から1、2話の反応を見ると、このチームの作戦通りにことが進んでいるかなという気はします」と手応えを口にする。

日曜劇場への出演は本作が初めて。「緊張感あるシーンが続く作品で、出演者の皆さんもいろんな作品で重要な役どころを演じてきた方々なので、これぞ日曜劇場だなという感じがしています」と語り、作品自体の魅力については「やっぱり重厚な脚本です」と語る。

「別に1、2話で視聴者のみなさんを騙そうと思ってお芝居をしていないのですが、8~10話を観ていただけば、こういうことだったのか! という流れになると思います。脚本に穴がない、隙がないんです。脚本が面白いという点が、作品の良し悪しを決める一番大きな要素になってくると僕は思っているので、そこが盤石であることが、視聴者の皆さんの満足度にも繋がっているのかなと。また、撮り方がとても丁寧で、仕上がった映像が映画っぽい質感になっているので、そこも好きです。ノアール感があるし、これは映画館のスクリーンでもいけると、第2話の上映会の時に感じました」