――役作りで大変だったことを教えてください。

龍笛は大変でした。あとは 天皇という立場だと、動きでお芝居を見せることがしにくく、基本的には座してお芝居することが多いので、限られた動きで伝えることは難しいなと感じています。また、帝であるがゆえの佇まい、余裕さだったり、天皇だけ時間の流れがゆっくりで穏やかということは常に意識して演じています。

――セリフに関してはいかがですか?

平安時代の言葉を言い慣れているように話して説得力を持たせたいと意識していますが、すらすら言うと威厳がなくなるので。とはいえ、ずっと帝であるという感じで話すと少しロボット的になり、思いが伝わり切らないという心配もあり、天皇として座している瞬間と、一条の本音として相手に伝えたい言葉を投げかける時の品の良さと感情を両立させるのは難しいなと思いました。

――龍笛はどれくらい練習されたのでしょうか。

2カ月ぐらいだと思います。龍笛は不思議なもので、吹こうと思うと音が出なくて、いい意味で適当にリラックスしてやるのがちょうどいいんです。だからみっちり稽古というより、家で自分の目につくところに笛を置き、目に入ったらとりあえず吹くように。それも2~3分くらいで終わらせて、それを毎日繰り返していました。もちろん指はもっと練習しますが、吹くことに関しては5分以内が多かったです。息の吐き方とか、緊張したり、こうしようと思えば思うほど音が出なくなるので、心をはっきりと映す楽器だなと思いました。

――撮影だと緊張しそうですよね。

そうなんです、本番と相性が悪いんです(笑)。本番になると音がなかなか出ないこともありましたし、その中でいかに落ち着いて、そして、上手い下手ではなく、思いを音にして届けるか。もちろん史実上では「一条天皇は笛の名手」と書かれていますが、龍笛の先生が「天皇のことを『大層お上手でした』と書くのは当然」とおっしゃっていて、確かにそうだなと。また、「龍笛のプロではなく、遊びの延長でやっていたという意味でもすごく説得力のある演奏をなさっている」と言っていただけたので、自信がついて徐々に上達できたという感じです。

――吹き替えなしで塩野さんが実際に吹いているシーンもあるそうですね。

実際に僕の龍笛の音を使っていただけたシーンもあって、それは大河ドラマでは初めてのことらしくて。先生から「短い時間ですごいです」と言っていただいたのですが、先生のおかげで上達することができました。

■塩野瑛久
1995年1月3日生まれ、東京都出身。劇団EXILEのメンバー。2012年にドラマ『GTO』で俳優デビューし、2013年『獣電戦隊キョウリュウジャー』で立風館ソウジキョウリュウグリーン役を務める。近年の主な出演作は、ドラマ『来世ではちゃんとします』シリーズ、『探偵が早すぎる~春のトリック返し祭り~』(22)、『バツイチがモテるなんて聞いてません』(23)、『天狗の台所』(23)、『ブラックファミリア~新堂家の復讐~』(23)、映画『貴族降臨 -PRINCE OF LEGEND-』(20)、『HiGH&LOW THE WORST X』(22)など。