明石家さんまが主演するフジテレビ系スペシャルドラマ『心はロンリー 気持ちは「・・・」 FINAL』(27日21:00)。さんまが、三宅恵介ディレクターをはじめとする『オレたちひょうきん族』(フジ)の制作スタッフ、そして後に『踊る大捜査線』シリーズ(フジ)などの脚本を手がける君塚良一氏とタッグを組み、シリアスなドラマの中にたくさんのナンセンスギャグを散りばめた異色のドラマで、1984年から11作が放送されてきた。
第1作から40年という月日が流れ、テレビをめぐる環境が大きく変化した中で、令和の最新作はどのような意識で制作に臨んだのか。シリーズ全12作でメガホンを取る総合演出の三宅氏に、今作に込めた思いを聞いた――。
Z世代だなんだって気にせず
テレビ界に“コンプライアンス”が言語化されていなかった40年前と違い、ギャグの作り方にはやはり変化があったという。
「昔は、さんまさんが風船を取るために電信柱に登ると、向こうのマンションで女の人が着替えてて、さんまさんを追うはずのカメラがそっちが気になって撮っちゃうとか、ちょっとエッチなネタは今はできないですね。動物を使ったのもできないし、生意気な子どもに悪口言われた女優さんがその子をバンって叩くなんてことも、昔は平気でやっていました(笑)」(三宅氏、以下同)
その中で変わらず貫かれているのは、「自分たちが面白いものを作ろう」という姿勢。「Z世代だなんだって気にせず…まぁ気にしてもマネできないし、むしろ逆手に取りますね。最近の人は1.5倍速でしゃべってる内容がギリギリ分かる速さでドラマを見てるらしいけど、元のスピードを1.5倍速にしちゃって、“これを1.5倍速で見てる人は2.25倍速になります”ってテロップを入れて、“速すぎて分かんないだろ”っていう笑いにするつもりです(笑)」と、新しい視聴者に媚びずにギャグを作っている。
分かりにくいギャグは「考察視聴」向き?
『心はロンリー』の名物と言えば、「お腰(=腰巻き)姿の女性が雷の中で走りすぎる=雷おこし」といったものに代表される「分かりにくいギャグ」。その源流は、『オレたちひょうきん族』にあった。
裏番組の『8時だョ!全員集合』(TBS)では、セットが派手に壊れるなど大きな動きで小学生が見ても楽しめる笑いを作っていたのに対し、「やっぱり土曜の8時でいろんな世代が見てるから、分かりやすさ・伝わりやすさというのは一番なんですが、そのバランスを変えたんです」と狙ったという。
「例えば新選組のコントがあって、セットに『誠』という掛け軸があるんだけど、よく見たら『誠ちゃん』って書いてあるわけです。それに気づいた人が“分かった!”と面白がってくれて、そこから伝達していくんですよね。だから、誰でも見て分かるギャグは6割、残りの4割を分かりにくいギャグというバランスを考えていました」
この精神をより先鋭化させた『心はロンリー』。前回から21年ぶりの放送となるだけに、その世界観に親しみのない視聴者が増加していることも考慮して、「なるべく分かりやすくはしています」というが、「やっぱり“あれ気づかなかったでしょ?”って言いたいよね(笑)」と、難易度の高いギャグを忍ばせている。
伏線を幾重にも張った複雑なミステリーとは正反対のドラマだが、「分かりにくいギャグ」はもしかすると、SNS時代になって発達したドラマの「考察視聴」とマッチする可能性を秘めているのかもしれない……(?)