『ハイパーハードボイルドグルメリポート』と『ヒューマングルメンタリー オモウマい店』という強烈な個性を放つ番組を担当してきた両氏のコラボによる作用が、『こどもディレクター』に反映されているのはどんな点か。

流川Dは「『ハイパー』も『オモウマい店』も、ご飯を入口に人を見ていくということや、取材相手の方への向き合い方、面白がるポイント、考え方みたいな方向性は同じだと思うんです。ただ演出の方法で言うと、僕らは結構ゆったりつないで見せていくスタイルなのですが、上出さんはかなり緩急をつける形なので、そこを吸収させてもらうことで、同じ方向性であるけど、違うメソッドを混ぜ合わせていけているんじゃないかなと勝手に思っています」と答える。

一方で、上出氏が流川Dに強く伝えているのは、「ビビってるんじゃねぇぞ」という精神だ。

「エンタテインメントの原理として、おどおどしてる人が作ってるものなんて見たくないじゃないですか。一発コケたって別に大したことじゃないんだから、“ドヤっ”って見せつけるぐらいの気持ちでいってほしいんです。例えば、番組を作る中でテレビ的常識というのがたくさんあって、その常識の引力って強いんですよ。そこに寄っていけば安心感があるから。日本のテレビ番組はその引力に負けて、みんな同じ番組になっていってしまうというのが起こってるから、“この番組の一番大事なところは何だっけ?”という話を時折しています」(上出氏)

斎藤工は「不思議な番組です」と魅力を話しているが、その“不思議”さは、従来の常識にとらわれない演出面の意識によっても生まれているようだ。

『オモウマい店』Dは継続、「ニューヨーク編」も構想

流川Dは、チーフディレクターを務める『オモウマい店』も引き続き担当。「お世話になっているお店がたくさんあるので引き続き向き合いながら、『こどもディレクター』も頑張っていこうと思います」と意気込む。

一方、米・ニューヨークを拠点に活動する上出氏は、リモートをベースに『こどもディレクター』の監修をしながら、「今はフワッフワしてます。旅をして、文章を書いて、テレビの収録に顔出したりして、僕はやりたいようにやるんで、みんなそっとしておいてくれっていう感じです(笑)」と要望。その中で、「『こどもディレクター』のニューヨーク編も面白いかもしれないですね」と構想を語った。

  • 『こどもディレクター』監修の上出遼平氏(左)と、企画・演出の北山流川氏

●上出遼平
1989年生まれ、東京都出身。早稲田大学卒業後、11年にテレビ東京入社。『ありえへん∞世界』『世界ナゼそこに?日本人』『所さんの学校では教えてくれないそこんトコロ!』などを担当し、17年にスタートした『ハイパーハードボイルドグルメリポート』シリーズでは企画・演出・撮影・編集など番組制作の全過程を担い、注目を集める。その後『蓋』、『空気階段の料理天国』、『家、ついて行ってイイですか?』ではイノマーのがん闘病記などを制作し、22年6月に同局を退社。『群像』『POPEYE Web』での連載やドラマ『エルピス―希望、あるいは災い―』(カンテレ)のエンディング映像などを手がけると、米ニューヨークに拠点を移し、『こどもディレクター』監修のほか、ポッドキャスト『上出遼平 NY御馳走帖』(TBS)なども制作。最新刊は『ありえない仕事術 正しい“正義”の使い方』(徳間書店)。

●北山流川
1994年生まれ、愛知県出身。立教大学卒業後、17年に中京テレビ放送入社。『PS純金』を経て、特番『ウマい!安い!おもしろい!全日本びっくり仰店グランプリ』でディレクターデビュー。レギュラーでは『こどもディレクター ~私にしか撮れない家族のハナシ~』で企画・演出、『ヒューマングルメンタリー オモウマい店』でチーフディレクターを務め、『オレの一行』『仕事の武器は恋の武器』『遠距離宅配バラエティ オカンからの荷物です。』といった単発番組も手がける。