■器と料理のマリアージュ
美食家の一面も持つ魯山人は、「器は料理の着物」と唱えた。彼の料理哲学にならってできた料理テーマが「器と料理のマリアージュ」。九谷焼や山中塗の器を用いて、北陸の旬を届けてくれる。
運ばれてきた料理はどれも芸術品! 美しい器とあいまって、料理がより一層おいしさを増す。ちなみに、器の一部はゲストとの会話や雰囲気に応じて、スタッフがその場で選ぶこともあるという。
季節に合わせた会席コースは、のどぐろやエビなど北陸の幸をたっぷり使用。特に酒好きの筆者が興奮したのは「鮑の若芽包み蒸し」。ぷりっぷりの大きな身と濃厚な肝が、山代温泉でしか販売されていない日本酒「やましろ」とも相まって、うまみが幾層にもなって押し寄せた。
■ラウンジで町と酒を愛でる大人のひととき
食後は大人の雰囲気漂う伝統建築棟の「べんがらラウンジ」へ。1日限定4組しか入れないここでは、お酒を楽しむ以上の体験が待っている。なんと、九谷焼や山中塗など100種類を超える中から自分が選んだ器や酒器を使って、お酒とおつまみを味わえる。
お酒は北陸地方の日本酒を含むアルコールから1種類、おつまみは、香の物・甘味・ナッツ盛り合わせから1種類をセレクト。そこに北陸の食材を組み合わせたピンチョスも加わり、ドリンク&フード合計3種を堪能できる。
頭をからっぽにして、盃片手に古総湯や温泉街の灯りをただただ見つめる――。非日常感満載の優雅な時間に一人悦に入っていた。
利用料金は、ラウンジ利用料・ドリンク1杯・おつまみ2品が含まれて3,500円(要予約)。贅沢な体験にも関わらず、意外に値段はリーズナブル。これを利用しない手はないだろう。
■ご当地楽 加賀獅子舞
続いては、「ご当地楽 加賀獅子舞」を鑑賞。実は石川県では各地で獅子頭が受け継がれているほど盛んなんだとか。同旅館では、加賀獅子を独自にアレンジした「白銀の舞」を、毎晩ゲストへ無料で披露している。
ラウンジでの落ち着いた雰囲気が一変。鋭く左右に広がった大きな両眼の獅子が、力強くダイナミックに舞う姿を目の当たりにし、体の芯から震えるような不思議な高揚感を味わった。
わずか15分だったが、その迫力はすさまじく、見ているだけで元気をもらえた。こうして、この日は終了。ふかふかの布団に包まれ、あっという間に夢の中へと誘われた。
■宿泊者は無料! 古総湯でエネルギーチャージ
起床は朝6:00。こんな早朝に起きたワケはというと古総湯での朝風呂だ。なんと古総湯は、「界 加賀」の宿泊者であれば無料で利用可能(通常大人500円)。部屋で渡される入湯料がわりの風呂敷とタオルを持って行く。
明治時代の総湯を復元したという「古総湯」は、外観や内装だけでなく、当時の入浴方法も再現。43℃の熱めのお湯にそっとつかり、体があったまったら2階の休憩処でひと休み、その後また温泉へ……を繰り返す。そうすると、体は驚くほどぽっかぽか!
ステンドグラスから朝陽が差し込むことで、水面にカラフルな光がゆらめく光景はなんとも幻想的。鳥のさえずりをBGMに、普段は味わえないくつろぎの時間を過ごすことができた。
ちなみに最初、間違って2階に上がってしまったが、1階に温泉(玄関右横を抜けると入り口がある)、2階は休憩所なのでご留意を(笑)。
■体操×朝食で身体を整える
おはよさーん体操
古総湯でシャキッと目が覚めたあとは、毎朝7時に開催される「おはよさーん体操」へ参加。
これは茶室で行うことを前提にした深呼吸ストレッチで、"姿勢・呼吸・心を整えて(茶室に臨むように)一日を始めよう"という意味がこめられているのだとか。筆者も体操を終えたあとは、不思議と姿勢が正され、頭や心がスッキリ。
ご当地朝食
朝型ではない筆者だが、久しぶりに健康的な生活をしたからか、おなかはいつの間にかペコペコに。色とりどりの小皿料理に加え、特徴的だったのが魚醤を使った鍋。
海の幸に恵まれている石川県では、古くから魚醤が料理に登場する。この日は、イワシの魚醤をベースに仕立てた鍋だったが、のどぐろをベースにした魚醤での提供もあるようだ。食材本来の旨みと、優しい汁が心と体にしみるしみる! 風呂×体操×朝食で朝からエネルギーチャージ完了だ。
■旅の記念をゲット
旅の終わりに訪れたのは館内ショップ。九谷焼やお茶など、ご当地アイテムがずらりとそろう。九谷の職人が絵付けを施したオリジナル紙箱のお菓子など、「界 加賀」でしか手に入らないお土産にも注目だ。
湯めぐりや文化体験など、さまざまなコンテンツを通して泊まる以上の楽しみをもたらしてくれる「界 加賀」。伝統を今に受け継ぐ場所にあなたも滞在してみてはいかがだろう。
取材協力:界 加賀
■Information
「界 加賀」
【住所】石川県加賀市山代温泉18-47
【アクセス】加賀温泉駅より車で10分