Vシネクスト『仮面ライダー555 20th パラダイス・リゲインド』(監督:田﨑竜太)は、2003年から2004年にかけて放送された平成仮面ライダーシリーズの第4弾『仮面ライダー555』の20周年を記念して作られた作品である。

人類の進化形・オルフェノクの猛威に立ち向かうべく、変身アイテム「ファイズギア」を用いて戦士ファイズになる乾巧(演:半田健人)や仲間たちの複雑な人間模様を描いた本作は、子どもから大人まで幅広い年齢層を魅了。さまざまなキャラクター同士が自分の存在意義をかけて激しくぶつかりあう熱いドラマは、放送が終わった後も幾度となくファンの間で語り継がれ、愛されてきた。

  • 半田健人(はんだ・けんと) 1984年6月4日生まれ。兵庫県出身。2001年にジュノン・スーパーボーイ・コンテストのファイナリストに選ばれ、芸能界入り。2002年に俳優デビューを果たし、2003年『仮面ライダー555』乾巧役で好評を博した。昭和歌謡、昭和カルチャーの研究家としてバラエティ番組に多数出演するほか、ラジオパーソナリティやシンガーとしても活躍を続ける。撮影:大塚素久(SYASYA)

『仮面ライダー555』を長年愛し続けたファンの思いを汲んで、オリジナル・キャストが再結集。テレビシリーズ全話を手がけた脚本家・井上敏樹氏とテレビのメイン監督でもあった田﨑竜太監督によって「その後の555」の物語が創造された。ここでは、仮面ライダーファイズ/仮面ライダーネクストファイズに変身する乾巧を演じた半田健人にインタビューを行い、ファンの念願というべき「20周年記念作品」が完成するまで、さまざまな「仮面ライダー」シリーズにゲスト出演したときの思いや、新作の撮影にあたって強くこだわった部分、そして『仮面ライダー555』と乾巧を応援してくれたファンの方々への感謝の気持ちを、改めて語ってもらった。

『仮面ライダー大戦』での復活が、後につながるチャンスに

――『仮面ライダー555』から『仮面ライダー555 20th パラダイス・リゲインド』までの20年の間に、半田さんは乾巧としていくつかの「仮面ライダー」作品に出演されています。まずはそんな「乾巧の軌跡」についてお話をうかがってみたいと思います。最初は2014年、テレビシリーズ放送から11年を経て、出演された映画『平成ライダー対昭和ライダー 仮面ライダー大戦 feat.スーパー戦隊』からお願いします。

あのときは、およそ10年ぶりに乾巧を演じるということで、果たして「戻れるんだろうか」という戸惑いを抱えながら撮影に臨みました。なにしろ、撮影が始まる1ヶ月前に、白倉(伸一郎/プロデューサー)さんから直々にお電話で依頼を受けたので……。髪型も以前と違っていましたからね。そのころ、自分の中では『555』は完結した作品ですし、もう乾巧を演じることはないとまで思っていただけに、仮面ライダーファンのみなさんが期待する巧を表現できたのか正直不安で。でも一度あそこで「復活」を経験していたからこそ、後の作品につながったんじゃないか、やれるんだなという気持ちになりました。そんなチャンスをいただいたのが『仮面ライダー大戦』だと思っています。

――『仮面ライダー大戦』は平成ライダー15人と昭和ライダー15人が対立する!? というショッキングな話題で盛り上がりました。乾巧は『仮面ライダーX』(1974年)の神敬介(演:速水亮)との交流があり、しみじみとした味わいのあるドラマを生み出しましたね。

平成ライダーと昭和ライダーの対決を主軸に置いた映画でしたが、僕と速水先輩とのやりとりはアクション主体ではなく、シリアスなドラマでの共演となり、すごくよかったですね。最初、本郷猛/仮面ライダー1号(演:藤岡弘、)が「平成ライダーは認めん!」なんて圧をかけてくるじゃないですか。あのまんまだと、昭和ライダーの方々がみな「老害」っぽくなってしまうところですが(笑)、僕と速水先輩との共演シーンで、仮面ライダーには昭和も平成もない、みんな仮面ライダーには違いないんだという部分が描けたのは重要でした。

――続いて、仮面ライダーの歴史上に存在しないイレギュラーな「仮面ライダー3号」が登場し、歴代ライダーとさまざまな関わり方をする映画『スーパーヒーロー大戦GP 仮面ライダー3号』(2015年)でも、半田さんは乾巧として出演されました。映画でも印象的な活躍がありましたが、WEB配信用に作られたスピンオフ作品『dビデオスペシャル 仮面ライダー4号』では、巧が物語の鍵を握る重要な役どころで出てきて、ある意味『仮面ライダー555』テレビシリーズ最終回の「その後」を思わせる印象的なカットも見られました。

僕自身『3号』よりもむしろ『4号』のほうに思い入れがあります。いわゆる「タイムループ」を描いたストーリーで、脚本がとてもよく出来ていました。メインは『仮面ライダードライブ』(2014年)のキャラクターたちですが、全体の雰囲気がとても『555』っぽくて、切なさの残るラストシーンであるとか、とても好きな作品です。監督の山口恭平さんは『555』テレビシリーズ当時は助監督で、ずっと現場についていらっしゃいました。山口監督の『555』への熱い思いが爆発した作品だといえますね。『4号』で巧は「死」を迎えますけど、僕としては『パラダイス・リゲインド』などいろいろなエピソードを経て、乾巧の人生の最後を描いたのが『4号』なんじゃないのかなと考えています。

――パラレルな世界線と解釈してもいいし、つながった時間軸での乾巧のファイナル・エピソードと捉えてもいいわけですね。「ありえたかもしれない別次元のストーリー」といえば、歴代仮面ライダーが存在していた時間をめぐり、未来世界の「魔王」に近づく常磐ソウゴ(演:奥野壮)の戦いを描く『仮面ライダージオウ』(2018年)の第5、6話に乾巧と草加雅人(演:村上幸平)が登場しました。

『ジオウ』では「ファイズにならなかった乾巧」という複雑な役どころでしたね。15年前(2003年)に存在していた「10代だったころの巧」も演じたのですが、なかなか無茶だな~と思いました。最初は「無理ですよ」と言ったんですが「大丈夫、一瞬だけだから」と言われ、茶髪のカツラを被ったりして。自分で昔の自分のコスプレをしているようなものですからね。勘弁してよ~って言いながらやっていました(笑)。『555』のストーリーが『ジオウ』に干渉して、巧がファイズにならなかったら……なんて考えると、じゃあテレビシリーズのとき、エレファントオルフェノクを倒す奴がいなくなるわけで、そうなると真理(演:芳賀優里亜)を助けられないんじゃないの? とか、いろんなパラドックスが生じてかなり混乱しましたが、そういうところはあまり考え過ぎないほうがいいかもしれません。