オリジナルドラマならではの、当て書きの強み
――今作は岡光さんの実体験から構想されたオリジナルドラマですが、オリジナルだからこそ実現できた作品の強みを教えてください。
あらかじめ企画の軸やストーリー、キャラクターは存在したのですが、奈緒さんと木梨さんが親子役を演じると決まってから、脚本の福田靖さんによる本格的な執筆が始まったので、お二人が持つ素敵な部分を反映できたらいいな、お二人が演じるうえで無理のない役になればいいな、と考えながら“奈緒さんが演じる瞳”、“木梨さんが演じる雅彦”を生み出すことができました。役には演じる方の人間性がにじみ出ると思っているので、当て書きができるところはオリジナルドラマの強さだと思います。
――役者さんにとっても、自分が演じる前提で書かれたキャラクターの役作りをしていくことはやりがいになりそうですね。
奈緒さんとはドラマ『姉ちゃんの恋人』(カンテレ、20年)でご一緒したとき、「また絶対にお仕事したいですね」と話していたのですが、3年経って、今回は主演という形でお迎えすることができました。今作では制作の初期段階から奈緒さんとお話していたので、一緒にものづくりをしているという感覚がとても強いです。
プロデューサーとして“リアリティ”の創出にこだわり
――印象に残ってるシーンを教えてください。
たくさんあるのですが、強いて挙げるなら、第1話で、雅彦の病について半信半疑だった瞳が、お医者さんに話を聞いて事実だと分かり、リビングで父に「治療を受けてほしい。死んじゃ嫌だ」と訴えるシーンです。撮影もまだ序盤戦だったのですが、木梨さんと奈緒さんのぶつかり合うようなお芝居にグッと心を掴まれて「きっと素敵なドラマになるに違いない」と肌で感じることができ、現場の空気が一変したのを感じました。スタッフの団結力も一気に上がりましたね。
――視聴者目線でも、今作で初めての山場といえるようなシーンで、とても印象に残っています。視聴者の方から寄せられる反響に、感じることはありますか。
「このドラマを見て、遠くで暮らす両親に電話してみようと思います」とか、「明日、友達にありがとうって声をかけてみようと思います」とか、「もう一度自分の大切な人のことを考えてみようと思います」というお声をいただけて、すごくうれしいです。
――岡光さんがプロデューサーとして、こだわったポイントを教えてください。
親子が実際に存在しているようなリアリティを持たせるために、撮影が始まる前から、奈緒さんと木梨さんが一緒に過ごす時間を何回か作らせていただいたことですね。家のセットが出来上がったときにも、撮影の日に二人が初めて見てすぐに撮影するのではなく、「椎名家に馴染む日」を取って、雅彦と瞳ってどこに座るんだろう、この部屋のどこに何が置いてあるんだろう、椎名家ならではのルールや役割分担ってどうなってるんだろう、と皆で考えながら、部屋の中を歩いたり、家具や置いてあるものを触る日を設けました。
――時間をかけて、丁寧に親子の関係性を作っていったことが感じられます。そんな岡光さんは、『ウソ婚』、『時をかけるな、恋人たち』、そして『春になったら』と、3クール連続で連ドラのプロデューサーを務めていますが、こんなに担当が続くことがあるんですね。
なかなかないです(笑)。色んなタイミングが重なって連続で担当することになりましたが『ウソ婚』はラブコメ、『時をかけるな、恋人たち』は時間SF、『春になったら』はホームドラマと、全く違うジャンルの作品を手掛けることができ、可能性を広げてくれる貴重な経験になりました。しかも主演の菊池風磨さん、吉岡里帆さん、奈緒さんは、“二度目まして”。再会できる喜びと、二度目だからこそ、より役者さんの魅力を引き出したい、そして自分も成長した姿をお見せしたいという思いがいいプレッシャーになり、モチベーションにつながりました。キャストスタッフとのうれしい再会や、新しい出会いも沢山あり、毎日が刺激的で、全てのドラマに思い入れがあります。
第10話のラストには多くのスタッフが涙
――では最後に、『春になったら』18日放送の第10話の見どころを教えてください。
第10話は、瞳が助産師として、初めてメインとなって出産を任されるというストーリーになっています。このドラマの中で最後となる出産に、瞳がどう向き合うのか、見届けていただければと思います。一方で、死が近づく雅彦は病室で何を思うのか。瞳は父の願いを叶えるため、ある一大決心をします。そして、最終回=結婚式前夜の3月24日も描かれます。父と娘への、家でのラストシーンでは、撮影中に多くのスタッフが涙していました。親子は何を語るのか、ぜひご注目ください。
1989年生まれ、広島県出身。12年、関西テレビ放送に入社し、宣伝部、制作部を経てドラマプロデューサーに。これまでのプロデュース作品に『TWO WEEKS』『姉ちゃんの恋人』『アバランチ』『魔法のリノベ』など。『ウソ婚』『時をかけるな、恋人たち』『春になったら』と、3クール連続で連ドラプロデューサーを担当中。