――遺品整理すら任せられるという絆の深いお二人ですが、リリーさんだからこそこういうマイケルになったと、長澤さんが感じていることがありましたらお聞かせください。

長澤:マイケルさんはみんなのまとめ役ですが、束ねているという感じではないんですよね。みんなに楽しみを与えて、みんなが「しょうがないな、マイケルさんのためなら」と動く。マイケルさんの思いが純粋だからこそ周りが放っておけなくなるというキャラクターで、まさにリリーさんはみんなの中心にいるけど、寄り添って控えめにまとめてくれている人だから、マイケルさんと相通ずるものがあるなと。リリーさんがいるからみんなが好意的な気持ちになってオープンになる。それはリリーさんにしかできないことだし、制作陣がリリーさんにマイケルさんを演じてほしいと思った理由はそこにあるんだろうなと思います。

  • 長澤まさみ、リリー・フランキー

――役者としてのリリーさんの魅力はどのように感じていますか?

長澤:リリーさんは生活をするように芝居をしていて、ライフワーク的に芝居に取り組んでいる感じがいいなといつも思います。私はそういう風には向き合えないので。リリーさんに会うといい意味で自分の角が取れて、リラックスした状態で芝居に向き合えて、いい気づきを与えてくれる人だし、同じ立場になってものを考えてくれるから、すごくありがたいです。もちろん先輩として尊敬していますが、それ以前に頼れる同志みたいな気持ちを持てるので、一緒にお芝居するのがすごく楽しいです。

長澤の真面目さにリリー感嘆「だからこの人のお芝居は輝いているんだ」

――リリーさんは、長澤さんだからこういう美奈子になったと感じているところはいかがでしょうか。

リリー:美奈子さんはまあちゃんに似ているところがけっこうあって、不器用な真面目さとか……まあちゃんすごく自己評価が低いんですよ。どんどん成長して大女優になっていく過程を見てうれしいなという気持ちで、長澤まさみファンとしてほとんどの映画を見ていますが、「この間のあれすごくよかったね」という話をしても、「いや全然」って、自分になかなか丸をつけない。昨日撮影したシーンがうまくいかなかったということで、いまだに泣ける人なんです。「お前すごいな!」と言いましたが、その新鮮さを持っている真面目さがあるから人に伝わるんだなと。だからこの人のお芝居は輝いているんだと思い、もの作りに対する姿勢を見て俺も襟を正すというか、そうやって一緒に成長してきた感じがします。

――不器用な真面目さというのは長澤さん自身もそうだなと感じますか?

長澤:そうですね。あまり器用な人間ではないのでタイムロスも多いなと思いますが、それが自分のやり方になってしまっているのでしょうがないなと。その通りだなと思います。

――リリーさんは、役作りにおいて河村さんに寄せる部分があったかと思いますが、どのような意識で演じられましたか?

リリー:一番河村さんに近づけるところがあるとするなら、映画に対する愛情ということですかね。それをマイケルの無邪気さ、プラスいろいろな思い残しから、みんなに「映画を一緒にやろうよ」と言うのはなかなか力技な展開だと思いますが、突き動かされる何かがある。役作りというよりも、藤井監督の中にあるマイケルというものを聞きながら演じました。

――ご自身がマイケルさんと重なるところはあると感じていますか?

リリー:自分に近いところがあるとしたら幼稚なところ(笑)。まあちゃんとお互い、小学生感が常にある(笑)。前は小4ぐらいだと言われていましたが、今は小5ぐらいにはなったかな。

長澤:ちょっとかっこつけられるように(笑)

親友役で出会い「あの時の関係が延々と続いている感じ」

――お二人は2011年に共演して以来10年以上の仲ですが、お互いにとってどんな存在になっていますか?

長澤:友達です。もちろん尊敬しているし、俳優としても人としても先輩ですが、本当に友達。学生時代の友達とも違いますが、自分の思っていることを何でも共有できる人であることは間違いなくて、そうすると友達という言葉が一番合っているなと思います。

リリー:友達としか言いようがない。一番最初に親友の役で出会ったので、プライベートもあの時の関係が延々と続いている感じです。うちのお袋が遺書みたいなものを残していて、「いい友達に恵まれる子になってもらいたいとずっと思っていました」と。実際、まあちゃんや何人かの友達ができて、いい友達に恵まれたなと思うと、悪くない人生なんだろうなと思います。仕事に対しては貪欲にもっといいものを作りたいというのはありますが。

――何でも話せる友達の存在は本当に大切ですよね。

長澤:そうですね。

リリー:最近はあまり会ってなかったけど、ということはまあちゃん悪い状態じゃないんだなと思います。

――悪い状態になるとリリーさんに連絡を?

長澤:そうですね。いろんな相談をします。

――今後も素敵な関係が続いていくと思いますが、お互いどうなっていってほしいなと思っていますか?

長澤:楽しく日々を過ごしてほしいです。

リリー:プライベートでは今まで通り、「ご飯でも食べますか」みたいな感じで。でも、この人の映画を見るのが好きなので、たくさんいい作品に出てもらいたいですし、これからのまあちゃんの作品を楽しみにしたいです。

長澤:そして、また何か節目で共演できたらうれしいです。

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■長澤まさみ
1987年6月3日生まれ。静岡県出身。2000年、第5回「東宝シンデレラ」オーディションにてグランプリを受賞し、同年女優としてデビュー。近年の主な出演作は、『コンフィデンスマンJP』シリーズ、映画『MOTHER マザー』(20)、『すばらしき世界』『マスカレード・ナイト』(21)、『シン・ウルトラマン』『百花』(22)、『シン・仮面ライダー』『ロストケア』(23)など。また、2022年放送のドラマ『エルピス-希望、あるいは災い-』にて、第31回橋田賞、第60回ギャラクシー賞 テレビ部門個人賞、第49回放送文化基金賞 演技賞を受賞。『四月になれば彼女は』が3月22日、『スオミの話をしよう』が9月13日公開予定。
■リリー・フランキー
1963年11月4日生まれ。福岡県出身。武蔵野美術大学卒業後、イラスト、文筆、俳優など幅広く活躍。小説『東京タワー~オカンとボクと、時々、オトン~』は230万部超のベストセラーとなり、2006年本屋大賞を受賞。俳優としては、『ぐるりのこと。』(08)で第51回ブルーリボン賞新人賞、『そして父になる』(13)で第37回日本アカデミー賞最優秀助演男優賞を受賞。主演を務めた『万引き家族』(18)が第71回カンヌ国際映画祭でパルム・ドールを受賞した。『コットンテール』が3月1日公開予定。

【長澤まさみ】スタイリスト:Kayo Yoshida ヘアメイク:スズキミナコ 【リリー・フランキー】ヘアメイク:Aki Kudo