第8話「虹が出た 後編」の撮影時に実はイタズラ

――『ウルトラマンブレーザー』でのゲント隊長とテルアキ副隊長とのやりとりで印象的なのが、第8話「虹が出た 後編」のラスト近く、お二人が作業着を着て畑仕事をしているシーンでした。

蕨野:テルアキの実家の農園を手伝って、一息ついた場面ですね。そのとき、本番直前にラムネの瓶を思いっきり振って、テルアキが栓を抜いたとたん炭酸がブシューッと噴き出すのを楽しみにしていたんですけど(笑)

  • 蕨野友也、伊藤祐輝、田口清隆監督

田口監督:そんなイタズラをやってたのか(笑)

伊藤:でも、僕はあそこでラムネを飲まなかったから、何事も起きずに芝居を続けられました。

蕨野:僕は「うわ~面白くねえ」と思っていた(笑)

伊藤:隊長からラムネを手渡されたテルアキが、しみじみと「あのあと、横峯教授はどうなったんでしょう」と尋ねるシーンだったので、そこでラムネが噴き出していたら、絶対セリフなんて言えなかったと思います。

蕨野:それはわかっていたんだけど、予期せぬ出来事が起きたとき、どんなテルアキの表情が出てくるか、そこが見たかったんです。

伊藤:OKが出たあと、ゲント隊長すごく悔しがってましたよね(笑)

田口監督:ラムネの瓶を振ってたの、テルアキさんは気付いてた?

伊藤:ぜんぜん気づかなかったんです。

蕨野:セリフのあと、座っていた俺が立ち上がったから、ラムネを飲むチャンスがなかったのかも。

伊藤:そうかもしれません。もうちょっと間があったら、手にしていたラムネを使っていた可能性もありますね。

  • 蕨野友也、伊藤祐輝、田口清隆監督

蕨野:まあ、ラムネが噴き出ていたら、そのシーンは使われてなかっただろうね(笑)

伊藤:作業着にラムネがかかって、大変なことになってました。そして撮り直し(笑)

蕨野:そうなったら、俺は知らない顔で「早く乾かねえかな~」なんて言いながら待っていたと思うね(笑)

田口監督:それ、助監督がめちゃめちゃ怒られるやつだよ(笑)。濡れなくて良かった!

――テルアキ副隊長といえば、SKaRDとウルトラマンブレーザーが戦ってきた怪獣たちの特徴を子どもたちに向けて解説する、テルアキ先生の「ブレーザーかいじゅうアカデミー」のYouTube配信もファンの話題を集めましたね。毎回、テルアキさんが極めて真剣に怪獣のモノマネをするところが好評でした。

伊藤:怪獣の写真を見ながら、毎回一生懸命やっていました!

田口監督:あの映像は別のチームがやっていて、僕のほうにも「こういう感じで行きますが……」と確認の連絡が来るのですが、テルアキさんがあそこまで頑張って怪獣のモノマネをやってくださると、僕からは何も言うことがありません。

蕨野:第20話の「怪獣が出てきた時の対処法講座」と同じで、テルアキの「かいじゅうアカデミー」もSKaRDの任務としてやってるわけなんだよね。

伊藤:テルアキとしては、どんな任務であっても全力で取り組む姿勢でした!

  • 伊藤祐輝

田口監督:「SKaRD体操」もそうなんですけど、ああいう広報活動について、それまで上層部と現場の間に入ってくれていたハルノ レツ参謀長(加藤雅也)が外されたことにより、上からの無茶な命令がSKaRDへ直に降りてくるようになった時期の出来事だと考えれば、ああいった番組の存在も世界観がつながるんじゃないかと思うようにしました(笑)

伊藤:僕もそういう思いでやっていました。

田口監督:Blu-rayBOX特典のスピンオフドラマ『SKaRD休憩室』ではその辺も重点的に描いています(笑)

映画のテーマは“家族の絆”

――映画『ウルトラマンブレーザー THE MOVIE 大怪獣首都激突』の、テレビシリーズと一味違うスペシャルな要素について教えてください。

田口監督:テレビと映画ではなるべく作風を変えたいという思いがありますから、シリアスなテレビの最終回との対比もあって、映画は“エンタメ”に振り切ろうと考えました。いい意味で「怪獣映画です!」と割り切って、ドドーンと勢いと迫力で見せていきたいと思って作り上げました。テレビの25話分でSKaRDメンバー個々のキャラクターやチームワークについてはできあがっていますから、それを活かしつつ、SKaRDのみんなが新しい事件に巻き込まれていくという“王道”の怪獣映画を目指しています。テレビの第1話で実際の都市(池袋サンシャインシティ)を戦闘の舞台にしましたから、映画ではあれを超えるものがないとつまらないのではないか、と僕自身が思ったので、ウルトラマンシリーズではあまりやらない“実在する建物”を登場させることにしたんです。クライマックスで派手にぶっ壊す場所はどこかと考えまして、国会議事堂に狙いを定めました。今回、1/25の精密なミニチュアを作り、3回に分けて丁寧に破壊しています(笑)

  • 田口清隆監督

蕨野:田口監督のお話を聞いて、監督の頭の中はどうなっているんだろうって改めて思いますね。これまでにない新しい映像製作にチャレンジしつつ、お客さんを楽しませる姿勢を崩さない。そういうところが田口監督の良さであり、ファンが多くついている理由なんだと思います。常にいろいろな映画やドラマを研究して、頭の中をアップデートしているがゆえに、我々を驚かせる発想が出てくるんじゃないでしょうか。そんな実験精神を『ウルトラマンブレーザー』で発揮してくれて、ほんとうに嬉しく思います。

伊藤:映画では、SKaRDがどんな作戦を立て、どんな戦いを見せるのか、繊細かつ大胆な、SKaRDメンバーの連携プレーにも注目してほしいです。テルアキが珍しく“激高”するシーンもありますので、そこもお見逃しなく!

蕨野:今回の映画のテーマは“家族の絆”。それがゲントの妻や息子との絆のことなのか、または映画の中で描かれる別の家族なのか、ぜひ劇場に足を運んでいただいて、確かめてください。待っています。

  • 蕨野友也

田口監督:映画を作る際に強く思っていたことは、この『ウルトラマンブレーザー』が生まれて初めての“怪獣映画”になるであろう子どもたちの存在です。僕が子どものころ、ワクワクしながら観ていた怪獣映画はこんな感じの作品だったから、今を生きる子どもたちにも同じワクワク感を味わってもらいたい! と思って取り組みました。もちろん大人の方々にも楽しんでいただける作品になっていると思います。ぜひ劇場へ足を運んでください!

■蕨野友也
1987年、宮崎県都城市出身。2007年に俳優デビューを果たし、『ごくせん』(第3シリーズ/08年)、『最高のオバハン 中島ハルコ』(21年、22年)をはじめとするテレビドラマ、『252生存者あり』(08年)などの映画に出演。2014年には東映『仮面ライダードライブ』でロイミュードのリーダー格・ハートを演じ、特撮ファンからの人気を獲得する。2010年より「みやざき大使」を務め、さらに2022年、都城市の「みやこんじょ大使」に就任。俳優業と共に故郷の魅力を県内外へ発信する役目も担っている。

■伊藤祐輝
1987年生まれ、北海道出身。映画『フレフレ少女!』(08年)、『海賊とよばれた男』(16年)、テレビドラマ『新警視庁捜査一課 9係』(10年)、『ラジエーションハウス』(19年)、『合理的にあり得ない』(23年)、舞台『飛龍伝21~殺戮の秋~』(13年)、『High Life』(18年)、ドキュメンタリー、MV、CMなど出演作多数。2009年の映画『ぼくはうみがみたくなりました』で主演を務めたほか、短編映画『MIRRORLIAR FILMS plus/ハレの夜』(21年)では脚本・監督・主演をこなした。

■田口清隆監督
1980年生まれ、北海道出身。日活芸術学院を経て、映画、テレビドラマの世界で助監督・美術助手・デジタルコンポジットを担当。同時に制作していた自主映画『大怪獣映画 G』が認められ、2009年にNHKの番組内企画『長髪大怪獣 ゲハラ』で商業監督デビューを果たす。映画『THE NEXT GENERATION -パトレイバー-』(14年)、『12人のイカれた ワークショプ』(20年)や、テレビシリーズ『MM9』(10年)、『ウルトラゾーン』(11年)、『ゆうべはお楽しみでしたね』(19年)のほか、『ウルトラマンX』(15年)、『ウルトラマンオーブ』(16年)、『ウルトラマンZ』(20年)、『ウルトラマンブレーザー』(23年)をはじめとするウルトラマンシリーズで監督を務める。