Samsung

2022年は割とオープンにSamsung Foundry ForumやSAFE Forumの情報を公開してくれたSamsungであるが、2023年は殆ど非公開になってしまっており、それもあって情報があまりない。とはいえ、以前こちらで示したロードマップ(Photo07)そのものに変更はない。既に2022年のうちにSF3Eはリリースされており、2023年はSF4PやSF5Aが量産に入った「筈である」。というのは、実際にそれを使っている顧客が判らない(Samsung自身も公開しておらず、また筆者が調べた限りではSF4PとかSF5Aを使っていると公言している顧客も存在しない)ので、立ち上がっているかどうかがはっきりしないためである。実はこれまでも業界では、たびたびSamsungが採用されるという「噂」は存在した。これは主にTSMCの供給能力が常に逼迫状態にあるからで、なのでTSMCだけに頼るのではなくSamsungも使う、という話である。実際過去には、例えばNVIDIAはA100をTSMC N7で、RTX 30シリーズをSamsung 8Nで製造するといった形で、TSMCだけに頼らない方策を取っていた。Qualcommも同じである。もっともそのQualcomm、Snapdragon 8 Gen 4はSamsungを使わずにTSMCだけを使う事にしたといった報道もあり、正直なところSamsungのSF4シリーズの需要がどの程度あるのか、筆者には掴み切れていない。

  • Photo07: このスライドは2022年のロードマップと同じもの。

実はそのSnapdragon 8 Gen 4は当初SF3を想定していたらしい。2023 Symposium on VLSI Technology and Circuitsにおける発表(Photo08)では、SF4世代と比較して22%の高速化と34%の省電力化、21%のエリア面積削減が実現した(Photo08)としており、これを組み合わせることでSF4世代より大幅に高性能かつ省電力・省面積を実現できるという触れ込みであったが、そもそもSF3Eが当初のYieldが10%台、その後2022年末あたりで40%台まで向上したものの、そこから遅々としてYieldが上がらず、SF3についても状況があまり変わっていないらしい。これがQualcommにとってはやはり許容範囲外だったようだ。SamsungはTSMCと比較すると大幅に値下げをかましているらしいのだが、それでもSF3は先端プロセスだけに製造コストはかなり高いと思われる。それでいてYieldが5割を切ってたら、それは考え直すのも無理ないだろう。

  • Photo08: SF3の場合、UHD(超高密度)/HD(高密度)/HP(高性能)の3種類のバリエーションがあり、更にNanosheetの枚数を1~2/3/4枚に変更して特性を変化できる。Speed/Areaは恐らくUHDの、SpeedはHPでの数字と思われる。

もっともSF4世代に関してはYieldが70%を超えた、という報道もある。同じ報道では、AMDがZen 5cベースのCCDをこのSF4世代(流石にSF4Xという事は考えられないので、SF4Pあたりかと思うのだが、ひょっとするとSF4かもしれない)で製造するという報道がある(Zen 5ベースのCCDはTSMCのN3Eだろう)ので、これが実現すればAMDはTSMCとSamsungのDual Fabの形で製品を投入する可能性がある。同様にAMDのRadeonやTSMCのGeForceについても、バリュー向けの下位製品向け(AMDならNAVI43、NVIDIAならB106あたり)は、コスト削減という意味でもSF4を利用する可能性は残っていそうだ。