【以下、質疑応答】
――練習相手である永瀬九段とは、王座戦の直前から指していないと思われます。対人の練習対局は、現在はどのように行われていますか。
藤井 研究会はやっていますが、相手がいることなので、詳しくはお話しできません。
――ご自身の将棋の才能はどんな部分だと思いますか。
藤井 やはり子どもの頃から詰将棋を解いていたので、終盤では踏み込んでいくことを中心に考えることが、特徴なのでしょうか。またそれを目指した将棋を指せればと思います。
――八冠を達成した王座戦では、敗れた第1局終了後に「早くも厳しい状況になってしまった」と振り返っていましたが、シリーズ第1局の重要性を意識してのものでしたか。
藤井 大きなシリーズだと思っていましたし、永瀬王座の実力は十分知っていたので、先手番の第1局を落としてしまったことで、厳しいシリーズになったのかなと感じていました。
相対した棋士から学んだこと
――将棋以外のリフレッシュ法で、鉄道のことは語られていましたが、身近なものはありますか。
藤井 チェスプロブレムも合間に解いたりすることはありますが、解けないと終わらないのが欠点です(笑)。それでも解けたらときは気持ちがよいので、一つのリフレッシュ法と言えるでしょうか。
――タイトル戦では王将戦の羽生九段から始まって、竜王戦の伊藤匠七段で2023年が終わりましたが、さまざまな世代の棋士と戦いました。その中で得られた収穫はありますか。
藤井 いろいろな棋士と対戦できて強さを学べた1年でした。羽生九段との対戦では柔軟な大局観や考え方を感じましたし、永瀬王座や伊藤七段の序盤や読みの鋭さは非常に勉強になりました。
――タイトル戦でスコア的には追い込まれることはなかった1年でした。その中で苦労された棋戦はありますか。
藤井 王座戦と叡王戦はどちらも大変なシリーズだったかなと。勝った対局も中終盤は苦しい局面も多かったので、振り返ってみて課題が残ったシリーズでした。
――いろいろな戦術、あまり見ない形を指されることが多かったとありましたが、藤井竜王・名人のほうが受け身になることが多かった印象です。今後は自分のほうから工夫した作戦を、打ち出していくこともありますか。
藤井 力戦に近い形を指されることも多くなったと感じているので、そういう形に対する認識を深めて、対応する力が必要です。それによって、私自身もいろいろな指し方を、選べることができるようになるのかなと思います。
――いずれは藤井流といったように、自分の名前が冠する戦法、作戦を編み出していきたいですか。
藤井 現代ではなかなか新しい戦法というレベルのものは、見つけるのはできないので、それは難しそうです(笑)。ただ序盤から工夫して、自分らしさを出していければと思っています。**