BTS、SEVENTEEN、NewJeansなど、グローバルに活躍する人気アーティストを多数擁するエンタテインメント企業・HYBE。韓国・ソウルにある社屋はファンたちの間で“聖地”として位置づけられ、日本からも駆けつける人がいるほどだ。そのオフィスに潜入すると、シンプルなデザインで洗練された空間が広がっていた。

さらに、HYBEの事業部門の一つであるグローバルファンダムライフプラットフォーム「Weverse」を運営するWEVERSE COMPANYのオフィスもレポートする。

龍山(ヨンサン)のHYBE社屋

機能性を追求したトータルデザイン

HYBE社屋が立地するのは、ソウル中心部の龍山(ヨンサン)。韓国版新幹線・KTXも停車するターミナルで、多くの人々が行き交う龍山駅が徒歩圏内にあり、ドラマ『梨泰院クラス』の舞台となった繁華街・梨泰院(イテウォン)にもほど近い。

そんなにぎやかな街で、大通り沿いにひと際目立つガラス張りのビルが、HYBE社屋。空間ブランディングとデザインを統括したのは、数々のアーティストの作品も手がけてきた、ミン・ヒジン氏(当時・HYBE CBO=最高ブランド統括責任者、現・ADOR代表取締役)だ。

会社の顔となる1階ロビーは、ダークグレーを基調としたシックな空間と思いきや、天井は木目を想起するような落ち着いたオレンジがグリッド状に張り巡らされていた。誰かの好みに左右されず、機能性の追求が意図されているといい、このコンセプトで建物内部のトータルデザインが施されている。

中層階にはオフィスを配置。仕切りを移動式ラック(モービルラック)にすることで、用途に合わせた最適な広さのスペースを自由に作ることが可能となっており、壁とドアを設置すれば会議室にも変貌する。HYBEがここに移転してきたのは、コロナ禍の2021年。リモートワークが増えるなど、オフィスの使用形態が大きく変化する中でも対応できる設計となった。

  • (C)Roh Kyung

ソウルを一望できる屋上庭園

最上階の19階にあるのは、共用空間「Forum」。ここもロビーと同じ色合いのデザインで、天井の高さは4mと解放感のある空間だ。すり鉢状になったスペースは小さなステージとしても利用でき、電動カーテンで仕切ってアーティストが音楽番組やSNS用動画の撮影に使用することもあるという。

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「Forum」の中には、カフェを併設。運営するのは、ソウルの人気コーヒーショップ・FRITZで、かわいらしいアザラシのキャラクターが出迎えてくれる。提供されるカップはオフィスにテイクアウト可能で、オフィスには回収ボックスが設置されており、SDGsなシステムが構築されている。

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ここから外に出ると、「Comb」と呼ばれる屋上庭園が広がる。200本あまり植えられたシラカバの木が、まるでクシ(Comb)のように見えたことから名付けられたという。至るところにベンチが設置され、ソウルの街を一望しながら休憩できるのはもちろんだが、ここでもアーティストがSNS動画の撮影をすることがあるそうだ。

  • (C)Roh Kyung

ラッピングバスにファン有志による広告も

“聖地”というだけあって、社屋周辺も“HYBE色”に染まっている。目の前の大通りには、誕生日が近い所属グループのメンバーのファンが、有志で作ったラッピングバスを駐車してお祝いしていた。それを見るために日本からやって来たファンがいたのに驚いていたら、向かい側のバス停にはファンが広告費を出し合って設置したポスターも。

それだけにとどまらず、近隣のコンビニ、カフェの外壁や店内、さらには道路沿いの壁面に至るまで、ポスターや横断幕があちこちで掲出されており、隙あらば“推し”のバースデーをお祝いしてあげたいという熱い思いが、周辺エリア一帯から感じられる。

ちなみに、社屋地下1・2階にあったミュージアム「HYBE INSIGHT」は、今年1月で営業を終了。今後は、アーティスト専用空間の不足を解消すべく、ダンス練習室や制作室など、アーティストの活動をサポートする施設として活用される計画となっている。

「HYBE INSIGHT」はその後、ソウルと東京で企画写真展が開催されており、今後も「新しい空間で、より発展した姿で皆様をお迎えする予定です」とのことだ。