テレビの広告主・広告会社を対象にした民放キー局5社による共創イベント「テレビカンファレンス2023」がこのほど、都内で初開催され、各ジャンルの制作者が局の垣根を越えて登壇した。

「バラエティ」のセッションでは、日本テレビ『ぐるぐるナインティナイン』総合演出の三浦伸介氏、テレビ朝日『アメトーーク!』の加地倫三エグゼクティブプロデューサー、テレビ東京『出川哲朗の充電させてもらえませんか?』の鈴木拓也プロデューサーが登場。メディア環境が大きく変化する中での番組作りの意識などを語った。

  • (左から)『ぐるぐるナインティナイン』総合演出の三浦伸介氏、『アメトーーク!』加地倫三エグゼクティブプロデューサー、『出川哲朗の充電させてもらえませんか?』鈴木拓也プロデューサー

    『ぐるぐるナインティナイン』総合演出の三浦伸介氏、『アメトーーク!』加地倫三エグゼクティブプロデューサー、『出川哲朗の充電させてもらえませんか?』鈴木拓也プロデューサー

ロケで実感するテレビの影響力

まず、YouTubeやTikTok、配信番組などコンテンツがあふれる中で、テレビバラエティの強みや特徴を聞かれ、三浦氏が「ネットのものは自分の趣味のものばかり見ますが、テレビは広いですよね。会社や学校で話せるし、家族の会話のきっかけになるし、そこが他とは違うんじゃないかという感じがします」と話すと、それに加えて加地氏は「見る予定じゃなかったものをうっかり見ちゃうというのもいいところですよね。それで知識が得られて会話ができるのは、テレビの強みかなと思います」と考えを披露。

鈴木氏が「何十年もテレビ文化をつないできて、練り込まれた技術でクオリティが高いので、面白く見てもらえるんじゃないかなと思ってます」という視点を語ると、加地氏は「数えきれないノウハウと数えきれない計算がありますよね」といい、三浦氏は「すごい人たちがコラボしたり、いろんな組み合わせがあって、テレビは豪華だなと思います」と語る。

また、毎週レギュラーで放送できることで、「今週は現場でこんなことがあったから、これをつまんで企画にしていこうとか、そうやって面白みが転がっていくというのは、テレビならではかなと思います。『アメトーーク!』だと、本番中に“◯◯芸人”ができるなって思いついたりしますから」という加地氏。三浦氏も「見てる人たちみんなの声が反映されて次の回ができてどんどん変化していくという、共有できる媒体な感じもします」、鈴木氏も「続きがあるとうまくいったことは次にも生かせるし、うまくいかなかったこともそれを振りにして次に面白くできるので、決められた時間に放送があるのはいいなと思います」と同調した。

媒体の影響力を特に感じるのは、ロケの場面。『充電旅』の鈴木氏は「すごく皆さんが認知してくださって、ワーッと集まってきてくれるのを見ると、テレビはすごく影響力があるのを感じます。撮影中に番組が好きだという人に会えるので、その後の編集などいろんな作業も純粋に頑張れるというのがあります」と、充実感があるそうだ。

コンプライアンスよりも“視聴者感情”を意識

昨今、コンプライアンスの厳守によって番組作りが制限されるのではないかと指摘されることが多いが、鈴木氏は「いつの時代でもやっていいこと、やっちゃいけないことというのがあるのは当たり前だし、どの仕事でもあることなので、そんなにコンプライアンスが厳しくなったなぁという意識をしてもの作りはしていないです」、加地氏は「コンプライアンスはすごく大事でそれに対応していくんですけど、それとは別に“視聴者感情”というのがあるんです。バブルの頃に結構キツいことをやってるお笑いの時代と、今見ている人との感覚の違いがあるので、むしろそっちのほうを意識してますね」と打ち明ける。

具体的に、加地氏は「ヤバいことをやるときに、どういうふうな目線で見せるか。今は不安になると見てくれないので、“ヤバいことやってるよ”って言いながら、本当はヤバくないという安心感をちょっと演出に入れて、その辺のバランスを取りながら、演者の人と話したり編集したりしてますね」といい、「例えばリアクションをやるときに、ケガしそうって最初から分かりそうなことはあんまりさせないんです。だけどケガするのと同じぐらい痛そうでも安心するやつというので、僕は足つぼマッサージが好きなんです(笑)」という。

それを受け、三浦氏が「上の人が“やれ!”と言って足つぼをやらせるんじゃなくて、MCの人も後でやらされるとか、そういうことが入ると全然見え方が違いますよね」と言うと、加地氏は「やらされてる感じじゃなくて、最初に“俺たちは体張りたいんだ!”と言って、芸人としてオイシい仕事だと思ってやっていることを示すと、“キツい!”と言っても安心できるんです」と、“安心感”を出すためのテクニックを明かした。

また、三浦氏は「“コンプラが厳しいからテレビキツいよね”と言われる風潮が強まってる気がするんですけど、実はそんなに大したことなくて、ものはやりようで、だいたい昔と同じようなことはできるんじゃないかなと思います。イジメにつながるような下品なことはやらないようにしてますけど、昔と変わらず面白いことは頑張ればできる土壌がある。作ってる人がちゃんとその時代に合った感性を持っていれば、コンプライアンス違反になるようなことはやらないんじゃないかなと思っています」と強調。さらに、「『世界まる見え!(テレビ特捜部)』で所(ジョージ)さんに“番組は上品じゃないと”と言われて感銘を受けたんです。コンプラと言われると萎縮しちゃうかもしれないけど、上品な番組を作っていくことを意識すればいい。所さんは(ビート)たけしさんがCO2で暴れるのも上品だと言いますから(笑)」と補足した。