テレビの広告主・広告会社を対象にした民放キー局5社による共創イベント「テレビカンファレンス2023」がこのほど、都内で初開催され、各ジャンルの制作者が局の垣根を越えて登壇した。

「ドラマ」のセッションでは、TBS『VIVANT』の飯田和孝プロデューサーと、フジテレビ『いちばんすきな花』『silent』の村瀬健プロデューサーが登場。制作の舞台裏や連続ドラマの可能性などを語った。

  • 『VIVANT』飯田和孝プロデューサー(左)と『いちばんすきな花』『silent』村瀬健プロデューサー

    『VIVANT』飯田和孝プロデューサー(左)と『いちばんすきな花』『silent』村瀬健プロデューサー

“見たい”を超えて“知りたい”に応える戦略

まず、ドラマづくりにおける戦略を聞かれると、飯田氏は「生活スタイルが変わってきてる中で、“ドラマ見たいな”という欲求だけだと弱いんじゃないかと考えてるんです。“見たい”を超えて何が起こるんだろうと“知りたい”、その知ったものを月曜の朝にいろんな人に教えたくなる。そこまでの欲求をどうやって盛り上げていくかっていうことを考えて戦略を練ってますね」と紹介。

それを聞いた村瀬氏も「語ってほしいというのはすごくあります」といい、飯田氏は「『silent』も『いちばんすきな花』も村瀬さんのドラマって語りたくなるんですよね。連続ドラマは1週間空くという特徴があるじゃないですか。その中で、“他の人はこれを知ったのか”というところで悔しくなったりすると、より周りの人と語る材料になったりして、それが次につながっていくというのがあるんですよね」と分析した。

村瀬氏も「1週間をワクワクしながら来週を待たせようという意識は、僕も『VIVANT』にはすごく感じていて、それは配信の一気見にはない、テレビドラマが持ってる武器だと思うんです」といい、飯田氏は「(1週間のワクワクで)何か気持ちが豊かになりますよね」と同調。

その考えから、村瀬氏は「僕は次回予告に命を懸けてるんです。いかに来週を面白そうに感じさせるか、ADの頃から予告作りが大好きで今もやってますから」といい、飯田氏が「村瀬さんの予告の使い方は上手だなと思います」と感心すると、村瀬氏は「もし良かったら飯田さんのドラマの予告だけ僕に作らせてほしいです(笑)」と立候補(!?)した。

『silent』の影響を受けて『VIVANT』で実践したこと

ドラマ制作に様々な人が携わる中で、飯田氏は「日曜劇場には固定のスポンサーさんが4社いらっしゃるので、その皆さんと並走していけるようなドラマは常に目指してますね。すごく愛してくださってるのが伝わってくるので、“これ頑張らなきゃな”と思えるし、うれしいですよね」という。

村瀬氏も「(視聴者だけでなく)実は、スポンサーさんのために作ってるという意識があります。『VIVANT』なんてとんでもない制作費がかかってると思うんですけど、スポンサーさんが出してくれているお金を預かって、その人たちの期待に応える作品を作ろうという気持ちを持っているので、“CMを見てる人たちが絶対にうれしくなるようなドラマを、スポンサーさんの顔も想像しながら作ってます”、“こんな作品作らせてくれてありがとうございます”と言いたい」と強調。さらに、台本にはスポンサー名が掲載されていることにも触れて「自分は台本に名前が載っている全ての方を仲間だと思っているので、チームの一員にスポンサーの企業の方々もいるという気持ちがすごく大きいんです。だから、“俺が『silent』作ったんだぜ”ってみんなに言ってほしい」と思いを述べた。

村瀬氏のプロデュースするドラマは、台本の表紙を全話変えており、「僕は台本の表紙にも命を懸けてるんです(笑)」と制作におけるこだわりにも言及。「『silent』は最初に企画を作ったときに、雪原に一本立ってる木というイメージがあったので、それを台本の表紙にして、ストーリーに合わせて1話からだんだん雪が降ってきて、ものすごい積もって、雪がやんで、晴れ間が出るっていう最終回にしたんです。『silent』の中に雪原も木も何も出てこないんですけど、イメージなんです。『いちばんすきな花』は、ドラマ本編も撮影しているカメラマンの市橋織江さんが撮った花の写真を毎話使っているので、写真集みたいな表紙ですよ」と明かした。

飯田氏は「とても素敵だなと思って、それを聞いて『VIVANT』の台本の表紙も全部変えました」と影響を受けて実践したことを告白。「太陽をモチーフにしていて、1話は日本から見る太陽で、2話は砂漠のラクダと太陽で、3話で日本に帰ってくるので飛行機。4話で過去が分かってくるので過去の神社。最終話は、台本を開いたら日本とバルカ両方の景色から一つ太陽が見えるという構図にして、世界中の人が見る太陽は一つなんだというイメージなんです」と、こちらもこだわったが、「悲しいことに、最近はデータで欲しいという人がいるんです(笑)」と、製本された台本を受け取ってくれない事情もあるそうだ。