“視聴者の感情に訴える”という点で、石原氏は「頑張っている人など、応援メッセージが伝えられるような人、例えば若いベンチャーの方など、見ていて元気になるような人は、なるべく取り上げたいと常に思っています。それと、ニュースをお伝えするときに、ただ“大変だ”とか“これは深刻だ”と伝えるだけで終わらないで、その課題を解決するためにはどんな方法があるのかとか、それに向かってどういうふうに立ち向かっているのか、というところまでなるべく取材してお伝えしようと。“視聴後感”が少しでも前向きになれるようにということは意識しています」と明かす。
それを聞いて、柳井氏は大きくうなずきながら、「だからこそ、大谷翔平さんが頑張っている姿というのは、こういう時代だからこそ皆さんがすごく応援したいという気持ちになるんじゃないですかね」と推測。
ただ、経済ニュースの『WBS』で米メジャーリーグの大谷翔平選手を取り上げ続けるのは難しいようで、石原氏は「最初は勝ったときにすぐTシャツを作成する会社を取材したり、経済効果とかをお伝えしていたんですが、さすがにネタ切れになってしまうんですけれど、経済目線というところは外せないので、そことのバランスにはなりますね」と苦悩を打ち明けた。
視聴率でニュースの順番を判断するのか
放送するニュースの順番の決め方は、「日々すごく悩みます」(柳井氏)、「毎日正解はないと思っています」(石原氏)という中で、視聴率が獲れるということも判断に影響するのか。
柳井氏は「見ていただく人がいなければ、ニュース番組としての価値はないと思っています。ただ、数字というのは獲りに行っても獲れるものではないので、どれだけその日の関心事に近いものであるのか、そしてそれがニュースであるのかというところに、一つポイントを置いています。最近では、グミを食べたらバタバタ倒れていく“大麻グミ”というのが出てくると、身近で起きていることはちゃんと掘り下げて取材しますし、半径の近いものは非常に関心があるのかなと思っています」と語った。
「テレビカンファレンス2023」のテーマは、「今、あらためて、テレビ」ということで、最後に「今、あらためてテレビとは何か」という質問が投げかけられた。
フリップに「本物」と書いた柳井氏は「やはりこれだけ情報があふれる時代に、我々テレビのニュース番組に問われているのは、より何が本物なのか、何が事実なのか、そういったものが重要になってきていると思います。これはニュースの原点でもあるんですけど、きちんと足で稼いでお伝えしていくということを、これからもきちんとやっていこうと思っています」と、その意図を説明。
一方、「偶然の発見」と書いた石原氏は「ネットですと自分から情報を取りに行くという行動が必要ですけど、テレビですと次のニュースが分からない中で流れてきたときに、“こういうことだったんだ”という偶然の発見が得られるのが大きな特徴かなと思っていますし、ぜひ“偶然の発見”を皆さんに楽しんでいただきたいと思っています」と呼びかけた。