ウォルト・ディズニー・カンパニー創立100周年となる記念作品『ウィッシュ』が公開を迎えた。本作はディズニーがこれまで長い歴史をかけて描いてきた“願いの力”を丁寧に紡いだ物語。製作陣もディズニー作品を愛するスタッフたちが集まった。来日したプロデューサーのピーター・デル・ヴェッコとフアン・パブロ・レイジェスにインタビューし、作品に込めた熱い思いを聞いた。

  • 『ウィッシュ』のプロデューサーを務めたピーター・デル・ヴェッコ(左)とフアン・パブロ・レイジェス

1923年に設立されたウォルト・ディズニー・カンパニーも今年、創立100周年を迎えた。そんな記念すべき年に公開されたのが、『アナと雪の女王』シリーズを手掛けたクリス・バックと、『アナと雪の女王』や『モアナと伝説の海』などのストーリーボード・アーティストとして活躍していたファウン・ヴィーラスンソーンが監督を務めた『ウィッシュ』だ。

物語の舞台となるのは、地中海の彼方に浮かぶ島にある魔法の王国ロサス。この国の住民は18歳になると、世界中の魔法を学んだ国王マグニフィコに願いを捧げ、そのいくつかは叶えられる。この国に住むアーシャは、間もなく100歳になる祖父サビーノの願いをかなえるために、マグニフィコ王の弟子になる決意をする。しかし、そこである邪悪な秘密を知ってしまい、人々の願いを守るために、強大な力を持つマグニフィコ王に戦いを挑むことになる――。

ディズニー・アニメーションが長きに渡り描き続けてきた“願いの力”。そんなストレートな題材を記念すべき作品に選んだ理由について、ディズニー・アニメーションのすべての長編映画の製作を担当しているピーターは「ディズニーをずっと愛してきた私たちから、ファンの方にラブレターを送りたいと思ったんです。その際、ディズニーの素晴らしさとは何かと考えました。その答えとして、夢、希望、星に願う純粋な思いが浮かびました。そういった思いをもとにオリジナルのおとぎ話を作ろうと思ったんです」と語る。

さらにピーターは「もう一つ。夢があるならば、それはしっかりと口に出そう」というメッセージも込めたと言い、「もちろん夢を実行するのは自分自身ですが、言葉に出すことで有言実行につながる。その夢を聞いた人たちが応援してくれる。他の人を巻き込むことの大切さを伝えたかったんです」と作品への思いを明かす。

『アナと雪の女王2』、『ミラベルと魔法だらけの家』の製作に携わってきたフアンは「ピーターが話したことに付随してもう一つ、その夢にたどり着くまでの複雑さも伝えたかった」と話し、「何かを欲することと、実現することは別のことなんです。もちろん願いは叶わないかもしれない。そういった困難もあることを同時に伝えたいという思いがありました」とストーリーテリングのうえで、意識したことを述べた。

「想像する力を掻き立てる種を見つけて、持ち帰ってほしい」

本作はディズニー・アニメーション100周年の集大成という位置づけの作品でありつつ、これからの未来に光を照らす物語でもある。本作で初めてディズニー作品と出会う子供たちもいる。ピーターは「ディズニーの根底にあるのはストーリーテリング。ウォルトも未来志向でずっと、先の世界への希望を描いていました。この作品もそれは同じで、初めて本作でディズニー・アニメーションに触れた方は、想像する力を掻き立てる種を見つけて、持ち帰ってほしいです。それは夢だったり、希望だったり……」と語る。

またフアンは「いまはとても複雑な世界です」と述べ、「そんな世界を生き抜くために必要なのが“希望を持ち続ける力”なのかもしれません。その力を持つことで“この世界はそんなに悪くない”と思える。それは100年後、この映画を観たとしても、メッセージとして色あせないものが描かれていると思います」と自信をのぞかせた。