■“自分を褒める”ことを頑張った2023年

――2023年は、1月クールのドラマ『リエゾン-こどものこころ診療所-』(テレビ朝日)から始まって、映画『“それ”がいる森』で第46回日本アカデミー賞 優秀助演女優賞を受賞されたり、主演ドラマ『ミワさんなりすます』(NHK)が放送されたりと、大活躍の1年だったと思います。ご自身ではどう感じていますか。

幅広い作品に出演させていただいて、役を通してまたいろいろな世界を知ることができた1年でした。『リエゾン』から始まったので、特にそう感じます。

――先ほども、「悩むことが好きなのかも」とおっしゃってましたが、この1年は自分を褒めてあげたいのか、それともいろいろな経験をしたからこそまた悩みが増えたのか、どちらが近いですか。

悩んでしまう性格だからこそ、今年は「自分を褒める習慣をつけていきたい」という目標を立てていたんです。たとえダラダラした時間を過ごしたとしても「いいんだよ」、弱気なときも、「大丈夫だよ」って言ってあげて、もっと自分で自分の味方になってあげられたらなって。

■皆が周囲を褒めて認めて肯定してあげられる世の中に

――では、2023年の自分を褒めてあげるなら。

作品には、毎回しっかりと向き合えていたと思います。でもそれよりも、目標通り自分を毎日褒めてあげられたことを褒めてあげたいです。

――毎日どんなふうに自分を褒めてあげてたんですか。

単純なことですけど「今日も仕事して偉い!」みたいな。朝から夜中まで撮影した日は、もう「なんて偉いんだ」って褒めてあげてました(笑)。これまでは褒めるっていう発想がなかったんです。頑張って当たり前だし、頑張らないと成果を残せないと思っていて。でも頑張ることが当たり前だと思っちゃうと、自分を追い詰めてしんどくなっちゃうんですよね。

――どんなきっかけで「頑張っている自分を褒めてあげよう」と思えるようになったんでしょうか。

本で読んだことがきっかけでした。褒めて認めて肯定してあげることで、物事がいい方向へ向かうという発想を知って、「あぁ、そんな考えがあるんだ」って気持ちが楽になって。その通りに自分を褒め始めたら、本当に物事がいい方向へ向かった、と実感できることが起きたんです。今は、自分だけじゃなく周りにも褒めることの大切さを伝えられたらと思っていて。私が誰かに何かをしてあげられることは少ないかもしれませんが、皆が周囲を褒めて認めて肯定してあげられる世の中になれば素敵だなと思います。

――では最後の質問です。この『自転しながら公転する』を見て、視聴者の皆さんにどんな気持ちになってほしいですか。

自分一人で何かを背負っている方に、少しでもその荷物を下ろしていいんだと思っていただけたら。都が自分に重なる方は多いと思うので、恥ずかしいと思うような悩みでも口にしていいし、やりたくないことはやめていいし、このドラマを通して人生の選択肢が広がればうれしいです。

■松本穂香
1997年生まれ、大阪府出身。15年に『風に立つライオン』で長編映画デビュー、17年に連続テレビ小説『ひよっこ』(NHK)で注目を集め、18年には『この世界の片隅に』(TBS)で連ドラ初主演。その後も『JOKER×FACE』(フジテレビ)、『リエゾン -こどものこころ診療所-』(テレビ朝日)、『エンジェルフライト 国際霊柩送還士』(Amazon Prime Video)などのドラマ、『おいしい家族』『わたしは光をにぎっている』『酔うと化け物になる父がつらい』『みをつくし料理帖』『“それ”がいる森』『恋のいばら』などの映画に出演。現在、『アートフルワールド~たぶん、すばらしき芸術の世界~』(BSフジ)でナレーションを担当する。