■瑛太だからこそ説得力を与えられた、未来人との恋
――“恋に落ちる”の難しさとは。
“恋に落ちること”を描くのって難しいんです。たとえばAさんがBさんに復讐する動機を描くには、嫌なことをされたら腹が立つとか、何かを損なったとか、憎む動機となる出来事を描けばいい。でも好きになるところって書きようがないんですよ。人って、いいことをされたから好きになるってものじゃないから。この作品で、未来から来た翔に恋に落ちる、という説得力を与えられるのって重要なんです。
――廻が翔を好きになるのは共感できました。
たとえば『時をかける少女』の時代って、みんなが未来に希望を持っていたので、未来から来る人は先進国の外国から来る人のような見られ方で、憧れの存在だったと思うんです。ある意味、無条件に恋できる。だけど今は未来にそんなに希望が持てない時代なので、未来人が来て、それで恋に落ちるかという問題がある。でも瑛太さんならそうしたいろんなことを乗り越えられる感じがあるんです。未来の苦労を背負っている感じもありつつ、未来人の特別感も残しながら、何かを突破してくれる空気がある。
――たしかに。ちなみに翔からの廻へのあそこまでの一途で熱い思いは。
あれはイタリア人みたいな感じですかね。
――なるほど! より納得できました(笑)。ちなみに瑛太さんは、廻を想う気持ちをとても大切に演じられたからこそ、最終回のセリフを自分でも書き換えたと。
はい。やりとりしました。時間にまつわるセリフは僕が番人になる必要がありますが、感情にまつわるセリフは、ある程度は、11話までそのキャラクターを演じてきた役者さんのものだったりする。もちろん最終的に、僕が違和感のないように整えたりはしましたけど、瑛太さんが言いたいセリフを受け取りました(笑)。
■キャストらの期待超える役作りに大満足
――ほかのキャストさんの感想も教えてください。
伊藤万理華さんは、脚本上では血の通わないような役ですけど、伊藤さん自身はエモーショナルな雰囲気もあり、彼女が演じたことによって、そこの塩梅が面白くなりました。後半で、りおんちゃんの杓子定規だけではない要素が出てきますけど、伊藤さんが演じたことで、前半から、そのニュアンスを加えてくださっている感じがあって良かったです。西垣匠さんの演じた広瀬は、単純に役として見るとヒドイ男なんです。下手したら「なんだコイツ」となる(笑)けど、「こいつだったらしょうがないな」となる。西垣さんの人柄と演じ方で、あの役が悪役にならずにすんでいると思います。広瀬が嫌われてしまったら、「廻、そんな奴より、とっとと翔のところに行きなよ」と見ている方が思ってしまいます。それではつまらないですから。そこをうまく出してくださったと思います。7話のラストの夏子さん(リリリー)もすごく良かったですね(笑)。
――シソンヌ・じろうさんのキャスティングについても、9話まで見終わって、改めてなるほどなと。
八丁堀がラスボスというか、小悪人というか。じろうさんにお願いするなら、ひと癖ある役にしようと、最初から思っていました。あそこは書くのもすごく楽しかったです(笑)
――ありがとうございました!後編では、作品の誕生秘話をお伺い致します。
1979年、11月4日生まれ、京都府出身。劇作家、演出家、脚本家、構成作家。劇団ヨーロッパ企画の代表であり、全ての公演の脚本・演出を務める。2017年に舞台『来てけつかるべき新世界』で第61回岸田國士戯曲賞を受賞。主な作品に映画『サマータイムマシン・ブルース』『前田建設ファンタジー営業部』『リバー、流れないでよ』、劇場アニメ『夜は短し歩けよ乙女』『四畳半タイムマシンブルース』、ドラマ『魔法のリノベ』などがある。