吉岡里帆と永山瑛太演じる、常盤廻(めぐ)と井浦翔(かける)の時を超えた“恋の超展開”に、笑ったり突っ込んだりしながら、ほっこり温かな気持ちになっていた火曜の夜。SFラブコメディの『時をかけるな、恋人たち』(カンテレ・フジテレビ系毎週火曜23:00~)の放送が、ついに残り2話となった。ラストに向け、さらに加速する“恋の超展開”を前に、すべての仕掛け人である脚本家の上田誠氏にインタビュー。劇団「ヨーロッパ企画」の主宰である上田氏は、もとよりタイムリープものを得意としており、本ドラマで翔を演じる瑛太の映画初主演作『サマータイムマシン・ブルース』の脚本家としても知られる。

そこで、約20年近くの時を経て叶った瑛太とのエモーショナルな再タッグについて、「なぜ翔は瑛太だったのか」とぶつけてみると、話は“恋に落ちること”を描く難しさへと及んだ。

  • 脚本家の上田誠氏

    脚本家の上田誠氏

■吉岡と瑛太の芝居で、楽しくカラフルなドラマに

――物語はもちろんですが、吉岡さんと瑛太さんのコンビが本当に愛らしくてキャスティングもばっちりです。

自分のモットーなんですけど、作品の企画を進めるときには、企画自体が良くても、その裏で進んでいるドキュメンタリー的な部分で揉めていたり、どこかハマっていない部分があると、勢いが削がれて、あまりいい作品はできないと思っているんです。どちらも大事にしたい。キャスティングは、まず吉岡さんと京都でお話しました。瑛太さんとはリモートでお話したんですけど、ひとつひとつが美しくドラマチックに決まっていって、最初からクランクアップに至るまで、ちゃんと走れる作品でした。

――瑛太さんの翔はキャラ立ちも濃いですが、最初の脚本の時点で、あの演技イメージだったのですか?

全然違いました(笑)。でも今となればこの翔じゃないと物足りないですから、すごいことですよね。瑛太さんもすごいし、それを受ける吉岡さんのリアクションもすごく面白い。辻褄のあった脚本を書くのって楽なことではないので、どうしても脚本の空気が縛られるところがあるんです。けど、そこを瑛太さんが経験値と、かなりの思い切りで風穴を開ける感じでぶつかってくださり、もっとカラフルな空気にしてくれました。やっぱり生身の役者さんが生き生きと演じてくれると、面白くなります。廻と翔の関係は、脚本でも好きでしたが、それをおふたりが演じられることで、さらに楽しいものになった。とにかく一途な翔が良かったですよね。瑛太さんなんか、取材会でも吉岡さんに告白まがいのことを言ってましたし(笑)。

――蓋を開けてみるとピッタリでしたが、特に今年の瑛太さんは、本作のスタートまでは、ドラマ『あなたがしてくれなくても』や『怪物』のイメージが強かったです。あえて瑛太さんにお願いした理由はなんだったのでしょう。

瑛太さんとは『サマータイムマシン・ブルース』でご一緒していて、その意味は僕としても大きくて、特別な存在です。みんなの記憶にもありますしね。そこから約20年後に、タイムトラベルもので、未来人の役って、めちゃくちゃ熱いけど、頼んでいいのかなって。葛藤はありました。最近の瑛太さんの仕事の傾向からしても、一番ぶっ飛んでいるオファーだったでしょうから、受けてもらえるとは、正直あまり思ってませんでした。ビジュアルイメージも含めて、だいぶ飛ばした未来人のパトロール役ですから。でも瑛太さんって現代人離れしてるし。未来人プラス、廻が“恋に落ちる”という両方の難しさを、瑛太さんなら突破してくださる気がしたんです。受けていただいて、やっぱり食えない人だなと思いました(笑)。