新たな徳川家康像を演じた松本潤については、「すごく真面目で、繊細に役を作っていらしたなという印象です」と語る。

「最初に全48話の構成を作って松本さんにも見ていただきましたが、彼はそれを熱心に読み込み、どこでどう変化していくのがいいのか懸命に考えて、家康像の段階を計算しながら最初から現場に入られてきたという印象があります」

松本は10代の家康から演じ、“弱く頼りないプリンス”という本作の家康像を表現。老けメイクを施した晩年の演技を評価する声が多いが、古沢氏はそれ以上に前半の演技が素晴らしかったと絶賛する。

「後半の貫録のある家康になってからみんな褒めてくださっていると思いますが、僕からしたら前半のダメダメな家康をあそこまで振り切ってやることのほうが難しいことで、松本さんは頑張ってくれたと思うので、もっと前半を評価してくれと。前半の松本さんが素晴らしかったと思っています」

■想像を超えた最終地点に「思っていた以上に新しい家康像が出来上がった」

3日放送の第46回から「大坂の陣」に突入。家康は14年ぶりの大戦に踏み切る。

古沢氏は「大坂の陣」について、「ずっと戦争をし続けてきた家康の最後の戦争で、これによって彼の悲願である戦なき世を成し遂げる。戦争に明け暮れた人生から解放される戦争だけど、彼にとって晴れやかなものではなく、それと引き換えに彼個人の幸せみたいなものを捨てたという描き方がしたいと思いました」と語る。

まだまだ家康には苦しみが待ち受けているようだが、古沢氏は最後の撮影の日に松本と「家康はかわいそうな人」という話をしたと明かした。

「松本さんが『家康ってかわいそうですね』とおっしゃっていて、『そうですよね』と。ここまでかわいそうな人になるとは僕も思ってなかったです。天下を取ってかわいそうと思われる家康は今までないと思うので、自分でも思っていた以上に新しい家康像が出来上がったのではないかなと思いますし、そういう風に感じてくれる人が多ければ幸せです」

松本とはそれまでに3回くらい展開について話す機会があったそうで、結果的に想像を超えた最終地点にたどり着いたという。

「どう変化していくのか最初に作り、基本的にはその通りですが、途中で何回か松本さんと話し合い、最後にたどり着く家康の境地は書きながら見つかったことなので、自分の中では想像してなかったところにたどり着いたなという感じはありました」

そして、「このドラマの家康は好きです。現実の家康を僕は知らないのでなんともわからないですが」と語った古沢氏。納得のいく家康像が出来上がったと手応えを感じていると言い、「大きな挑戦でしたが、やり切ったなとは我ながら思います」と語った。

  • 第46回「大坂の陣」の場面写真

■古沢良太
1973年8月6日生まれ、神奈川県出身。2002年に『アシ!』で第2回テレビ朝日21世紀新人シナリオ大賞を受賞し、脚本家デビュー。『ALWAYS 三丁目の夕日』(2005)で日本アカデミー賞最優秀脚本賞を受賞。映画『キサラギ』(2007)、『探偵はBARにいる』シリーズ、ドラマ『リーガル・ハイ』シリーズ、『コンフィデンスマンJP』シリーズ、劇場アニメ『映画ドラえもん のび太と空の理想郷』(2023)などを手掛けている。

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