――そもそもの話になりますが、女優になりたいと思ったきっかけを教えてください。
一人っ子で、小さい時から映画やテレビドラマが自分のすべてのようでした。学校から帰って「寝なさい」と怒られるまでずっとドラマを見ていて、休日には映画館に行って。家には録画機器が無く、CMごとにチャンネルを変えて全部のドラマを見ようとするぐらい大好きだったので、物心ついた時には女優さんになりたいと思っていました。
――そこからトライストーン・エンタテイメントの俳優養成所に入られましたが、その経緯も教えてください。
大阪で専門学校に通っていたのですが、そこへトライストーンの養成所の方がいらしてオーディションみたいなものをしてくださり、お芝居をより本格的にやりたいと思って、まずは養成所へ入りました。
■『おちょやん』で大切な気づき「作品を良くすることだけ考えようと」
――そこから舞台中心に活動され、映像作品にもいろいろ出演されるようになりましたが、やはり『おちょやん』への出演は大きな経験になりましたか?
そうですね。その前もゲストで出させていただくことはありましたが、長い間レギュラーでというのは本当に初めてでした。地元の大阪で撮っていたので安心感もありながら、皆さん家族みたいな存在で1年間ずっと一緒にいてくれて、いまだに演出の方が舞台を見に来てくれると「お父さんが来ている」みたいな気持ちに(笑)。今でもご飯を食べたりしますし、ずっと見守ってくださっています。
――私も楽しく見させていただいていたので、いまだに「みつえちゃんだ!」という思いになります。
ありがとうございます! 本当に「みつえちゃん」って呼んでくださる方が多く、みつえちゃんを覚えてくれているだけで本当にうれしいなと思います。
――『おちょやん』出演後、ドラマ出演も増えていますし、やはり大きな転機になったと感じていますか?
その時は全然実感はなく、大好きなお芝居をやらせてもらえるということで、そこだけに集中していました。そのうち感想をいただいたりファンレターをいただいたりして、「朝ドラに出たんだ」という実感が湧いてきて、ますます頑張っていかなきゃいけないなと、そこがスタートだったなという感覚があります。改めて自分はお芝居が好きだと気づき、この世界でやっていくんだという覚悟が芽生えました。
――『おちょやん』撮影時に経験したことで、今でも大事にしていることがありましたら教えてください。
それ以前は、自分のやりたい芝居、見せたい表現が強くて、それが先行しすぎていましたが、『おちょやん』のときに初めて、作品を良くすることだけ考えようと思い、そこから意識が変わりました。自分のやりたい表現も頭の中にありますが、一番は作品が良くなるように動くことだなと思い、それはいまだに大切にしています。
――ほかにも女優として大切にしていることがありましたら教えてください。
自分が演じる役は誰よりも好きになりたいと思っています。今回の神戸八重子も、原作者の朝井リョウさんには負けるかもしれませんが、私なりに精一杯愛して、人生を演じたつもりなので、それがいい方向に作用していたらうれしいです。
■ファンからの手紙やコメントに「元気をもらっている」
――今後についてはどのように思い描いていますか?
いろんな人や作品と出会って、きっといろんな気付きや反省などたくさんあると思いますが、『正欲』も25歳の時の私にしかできなかったことですし、30代や40代の時でも、その時その瞬間にしかできないものがあると思います。それを舞台でも映像でもしっかりと残せて、誰かの価値になるものであればすごく幸せだなと思います。
――映画公開の前日、11月9日に26歳に。25歳と26歳ではあまり意識の変化はないですか?
そうですね。あまり変わらないかなと。25歳になった時に節目感がありました。
――最後にファンの皆さんへメッセージをお願いします。
東京国際映画祭のレッドカーペットの時に「絢香ちゃん」と言ってくださった方がいて、本当にうれしくて。ファンレターも『おちょやん』を見たお子さんなどからいただくことがあり、手作りの手裏剣が入っていてめちゃくちゃかわいくて。応援してくださる方から元気をもらっています。日々SNSでコメントくださる方もそうですが、自分事のように応援してくださる方もいて、特にしみじみうれしく感じています。お芝居でしか恩返しできないと思いますが、皆さんに“東野を応援してよかった!”と思ってもらえるぐらい、頑張っていきたいと思います。
1997年11月9日生まれ、大阪府出身。俳優養成・演技研究所のトライストーン・アクティングラボで学び、2018年に映像産業振興機構(VIPO)主催のアクターズセミナー賞優秀賞を受賞。NHK連続テレビ小説『おちょやん』(20-21)で芝居茶屋「岡安」の一人娘みつえ役を演じ注目を浴びる。主な出演作は、ドラマ『じゃない方の彼女』(21)、『メンタル強め美女白川さん』(22)、『六本木クラス』(22)、『CODE-願いの代償-』(23)、舞台『獣の柱』(19)、『掬う』(19)、『リボルバー~誰が【ゴッホ】を撃ち抜いたんだ?~』(21)、『温暖化の秋-hot autumn-』(22)、『メルセデス・アイス MERCEDES ICE』(23)など。『正欲』(11月10日公開)で長編映画初出演。