現在放送中の連続テレビ小説『ブギウギ』(NHK総合 毎週月~土曜8:00~ほか ※土曜は1週間の振り返り)で、梅丸楽劇団(UGD)の制作部長・辛島一平役を演じている安井順平にインタビュー。『半分、青い。』、『ちむどんどん』に続き3度目となる朝ドラ出演の感想や辛島部長としての役作り、主演の趣里との初共演について話を聞いた。
連続テレビ小説(朝ドラ)第109作となる『ブギウギ』は、ヒロイン・花田鈴子(趣里)が下町の小さな銭湯の看板娘から“ブギの女王”と呼ばれる大スターになる波乱万丈の物語。「東京ブギウギ」や「買物ブギー」など数々の名曲や多数の映画に出演した戦後の大スター・笠置シヅ子(かさぎ・しづこ)さんをモデルにしている。
安井が演じる辛島は、鈴子が東京で出会う梅丸楽劇団(UGD)の制作部長で、大阪の梅丸少女歌劇団(USK)の林部長(橋本じゅん)の後輩。いつも、大物作曲家や演出家、歌手らの間に挟まれて苦しい思いをしているという役どころだ。
■『はだしのゲン』きっかけに好きだった「東京ブギウギ」
――『ブギウギ』のオファーを受けたときの心境をお聞かせください。
朝ドラは何度か出演させていただきましたが、今までは要所要所のコメディリリーフで、今回は1カ月くらいの間、ロングランで出させていただけるということだったので、キャラクターが作りやすいなと思いました。1~2週だとなかなか難しいですが、今回は辛島部長の人となりが少しずつ出せるのではないかなと。それがうれしかったです。
――作品の魅力はどう感じましたか?
小さい頃から『はだしのゲン』を愛読していて、主人公のゲンが「東京ブギウギ」の替え歌をよく歌うんです。変わり果てた広島で明るく歌っているというのがすごく印象的でした。メロディが好きだったので、笠置シヅ子さんがモデルのドラマに出られるというのは縁を感じうれしかったです。そして、戦時中の大変な時代に、鈴子が明るく元気に日本人に活力を与えるという物語で、不景気で混沌とした今に時代に明るい風を吹き込める前向きなドラマだったので、ぜひ出演したいと思いました。基本的に明るい作品が好きなので。
――もともと好きだったという「東京ブギウギ」の制作の裏側も描かれるドラマに出演するというのは、うれしいですよね。
そうですね。笠置シヅ子さんのことを詳しかったかというと全く知らなかったですし、僕にとっては「東京ブギウギ」は中岡ゲンが歌っている曲でした。出演が決まって資料を見ると、背の小さい女性がパワフルに「東京ブギウギ」を歌っているというのが衝撃的で。僕はブギのリズムが好きで、テンションが上がるんですよね。残念ながら僕が出演している時にはまだ「東京ブギウギ」は生まれないので、そこはオンエアを見て楽しみたいと思います。
■辛島部長は「エンタメラブという思いが人一倍強い人」という設定に
――辛島部長はどのような人物と捉えていますか?
草なぎ剛さん扮する作曲家・羽鳥(善一)先生と、新納(慎也)さん扮する演出家・松永(大星)さんの2人に振り回され、挙げ句は鈴子にも振り回されるという、中間管理職のような存在。制作部長なので立派な人ではありますが、物語上はその立派なところがあまりなく、忖度したり……例えば、派手なパフォーマンスは戦時中不謹慎だからやめろと警察に言われるが楽劇団存続のためには鈴子たちにそれを説得しないといけない。そういったことで悩んでいる人物です。
――演じる際にはどのようなことを意識しましたか?
記号的な中間管理職のニュアンスを織り込みながら、さらに辛島部長の人間的な魅力をどう伝えようかなと思ったときに、エンタメがすごく好きで、人を楽しませることがすごく好きで、だけど自分でやることはできないから、裏方になってエンタメのショーをたくさんの人たちに見てもらいたいという、エンタメラブという思いが人一倍強い人という設定で演じました。その思いが強いから多少の困難では辞めないし、振り回されても頑張れるのだと。
――ご自身と辛島部長の共通点は?
好きなことは集中して楽しめるけど、少しでも好きじゃないことになると顔に出るところは、辛島部長に近いのかなと思います。 ただ、僕は忖度とか板挟みになるということはないので。でも、そういう立場の人たちと会うことが多く、たくさん見てきたので参考にして演じやすかったです。
――客観的に見ている人は演じやすいんですね。
自分がそうというより、観察しているほうが芝居を吸収できる。今回だと、中間管理職のような人をたくさん見てきたので、すごく自然に演じられました。
――いろいろな制作現場で板挟みになっている人たちを見てきたのでしょうか。
そうですね。電話でぺこぺこ謝っている姿や、だんだん反省の声が大きくなっていく姿を見てきたので、そういうのを切り取りながら辛島部長を演じられたらいいなと思いました。