――主演舞台『剥愛』が11月10日に開幕します。とある片田舎の集落にある剥製師の工房を舞台に、現在の社会に垣間見える問題を反映し、愛情のゆがみ、欲望、人が過ちを犯していくまでを描く物語で、出戻り長女である主人公・菜月を演じられますが、本作への出演が決まったときの心境をお聞かせください。
プロットを読んだときに大きく心が動いて、菜月という人物が、境遇とか何かが似ているわけではないんですけど、自分のように見えてきて、ぜひやらせていただきたいという気持ちに。菜月という役ができないと次に進むのが難しくなりそうなくらい存在が大きくなって、今自分が向き合うべき作品だと感じました。
――菜月とご自身の重なった部分とは?
家族であっても友達であっても、どこかいびつなものはあると思っていて、このお話と同じ立場ではなくても、何か違和感やすれ違いはあると思うんです。うちも100%仲良しという家庭ではないので、ちょっとしたズレみたいなところが重なったのだと思います。
――ご自身にとってとても大切な舞台になりそうですが、演じ切ったときにどうなっていたらいいなと思いますか?
人としても役者としても一皮むけていたらいいなと。それぐらい自分にとって大事な作品になりそうな気がしています。
――女優業と音楽活動はこれからも二本柱でやっていきたいと考えていますか?
はい。どちらも本当に楽しくやらせていただいているので、これからも両方頑張っていけたらいいなと。ほかにやりたいものが出てきたらそれもやりたいと思いますが、音楽と芝居が軸というのは変わらないと思います。
――女優としてはどうなっていきたいと思い描いていますか?
いろんな方と出会いたいし、共演させていただきたい方もたくさんいますが、自分がどうなっていくかというのは全然わかりません。楽しんで芝居をされている方たちとの芝居を楽しんでいけたらうれしいです。
■現状に満足せず「ハングリー精神を持ち続けていきたい」
――お話を伺っていると、「楽しむ」というのがさとうさんにとってとても大切なキーワードみたいですね。
すごい「楽しい」って言っていますよね(笑)。昔から「楽しい」を追い求めている気はします。面白いとか、心が動くとか、そういうことをやっていないと心が死んでしまう気がしているので、そこは大事にしたいと思っています。
――楽しいを追い求め続け、やりたかった女優業でも活躍されるように。
今回の『剥愛』のようにやりたいと思ったことをやらせていただけるようになってきていますが、満足してはいけないなと。ずっとハングリー精神を持った生き方をしてきたので、そこはこれからも変わらない気がしています。
――ハングリー精神は、バイトもしながら必死に生活していた下積み時代に培われたのでしょうか。
芝居という自分のやりたいことが出てきた時からずっとそうだった気がします。それまではふわふわ生きていましたが、芝居をやりたいと思ってからは貪欲に自分から動くように。そして、自分1人で動くのではなく、前を進んでくれる人が増えてきたことで見える世界が広がっていき、それによってやりたいことがさらに広がっているので、現状に満足することなくハングリー精神はこれからも持ち続けていきたいと思います。
1989年8月22日生まれ、東京都出身。2017年にさとうほなみとして女優活動を開始。ゲスの極み乙女のドラマー、ほな・いこかとしても活動。近年の主な出演作品に『愛なのに』(22)、『恋い焦れ歌え』(22)、『銀平町シネマブルース』(23)、ドラマ『六本木クラス』(テレビ朝日/22)、『あなたがしてくれなくても』(フジテレビ/23)、Netflix『今際の国のアリスSeason2』(22)、Amazon Prime Video『次元大介』(23)、舞台『カノン』(21)、『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』(22)など。11月10日に映画『花腐し』が公開予定。主演舞台『剥愛』が11月10日~19日に東京・シアタートラム、11月22日・23日に愛知・穂の国とよはし芸術劇場PLAT アートスペース、11月25日・26日に大阪・扇町ミュージアムキューブにて上演。