話を聞いていると、自分の考えや見方がすべてではなく、視野を広く持とうと心がけているように感じたが、「それは意識しています。自分の中で揺るぎないものはあっても、人に押し付けるものではないと思っています」と新垣。その思いは本作に参加したことでさらに増したという。
「何かを決めつけないとか、自分以外の何かがあるということを意識していきたいとより一層思うようになりました。自分の想像し得ない世界で夏月のような思いをしている人が絶対にいて、そういう人たちがいるということがどういうことなのか、すぐに答えを出して終わりではなくて、考え続けることを大事にしたいと思い、とても大きな一生の課題をいただいたなと思っています。自分の想像し得ない世界があるということを知っているだけでも、これから出会うことに対して自分が感じることや感覚が変わっていくと思うので、大事にしていきたいです」
監督とたくさん話し合って作り上げたからこそ、完成した作品を見たときにイメージの相違は全くなかったそうで、参加した喜びを改めて感じたという。
「イメージ通り、もしくはイメージ以上の仕上がりでしたし、こういった作品に参加することができてうれしいな、ありがたいなと思い、そういう意味では安心しました。難しかったし苦しかったし、温かくもあって、すごくいろんな気持ちにさせられて、素晴らしい作品に参加できたなと思います」
一方で、「いつまでも安心できない」という思いも明かす。
「どこかにいる夏月のような人たちが見たときにどう感じるのかというのはわからないので。世界中の一人ひとりに感想を聞くことはできませんし、個人個人で受け取り方が違うので、きりがないことを考えてしまいます。自分としてはやれることは尽くしたと思っていますが、心から安心はしないんだろうなと思います」
■「何事も楽しむこと」が人生の目標 ポジティブに考える練習も
2001年にモデルとしてデビューし、2005年にドラマ『Sh15uya』(テレビ朝日)で女優デビューした新垣。経験を重ねてきて、今の仕事に対する思いを尋ねると、「仕事もプライベートも含めて人生の目標という感じですが、楽しんでいきたいと思っています」と答えた。
「仕事は楽しいだけではやれないと思いますが、大変なことがあっても、そんな中でも“楽しい”の割合を増やしていけたら。単純に笑っているということだけではなく、充実感とか、前向きに取り組めたかとか、そういうのも含めて楽しいと思う割合を増やしていきたいと思っています」
あるときふと、「楽しんでいきたい」と思うようになったのだという。
「自分ができる精一杯を尽くすというのは昔も今も変わっていなくて、それが自分にとって誠実に向き合うことだと思っているので、ずっとそうやってきていますが、あるときふと、楽しむってすごくいいなと思ったんです。自分はネガティブな発想を持ちがちで、初めてのことに対して怖がりなので、それを変えたいというのはずっと漠然と思っていて、何事も楽しむことができたらいいなと意識するようになりました」
また、「できるだけポジティブに考えるという練習をずっとしている」と明かし、「いまだに根っこにあるものは変わりませんが、ポジティブに考える練習というのは、自分にとって問題になっていることの見方・視点を変えるという作業な気がしていて、それが昔より早くなったなとは思います」と自身の変化を語った。
それでも、「自分だけではどうすることもできないときもある」と言い、「そういうときに話ができる誰かがそばにいるって本当に恵まれているなと感じます」としみじみ。「夏月は佳道に会うまでそういう人がいない人生だったので、2人を見ていると本当に私は人に恵まれている人生だなと思うし、感謝して大切にしたいなってつくづく思いました」と語っていた。
1988年6月11日生まれ、沖縄県出身。2001年にモデルとしてデビューし、2005年にドラマ『Sh15uya』で女優デビュー。2007年に公開された主演映画『恋空』が大ヒットとなり、第31回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。『ミックス。』(17)では第41回日本アカデミー賞優秀主演女優賞、第60回ブルーリボン賞主演女優賞を受賞。近年の主な出演映画は『劇場版コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-』(18)、『GHOSTBOOK おばけずかん』(22)など。テレビドラマでは、『コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-』シリーズ、『リーガル・ハイ』シリーズ、『逃げるは恥だが役に立つ』(16)、『獣になれない私たち』(18)、大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(22)、『風間公親-教場0-』(23)などがある。主演映画『違国日記』が2024年公開予定。
スタイリング:小松嘉章(nomadica) メイク:藤尾明日香