■神戸での撮影で関西弁が出る可能性も
――今作の舞台は神戸となりますが、楽しみにしていることを教えてください。
ゴハンを食べることが大好きなので、神戸に詳しい方にリサーチして、行きたいお店をたくさんリストアップしています。パンやビーフが有名ですし、日本最古のコーヒー店があるとも聞きましたし、味噌だれをつけて食べる餃子も美味しいとか。
――楽しみがいっぱいですね!堀田さんは滋賀出身ですが、普段関西弁の方と話していると、影響されて関西弁が出るタイプですか。
めちゃくちゃ出ます。地元の友達に電話するとすぐ関西弁が出ますし。今はまだ神戸の撮影が始まっていないのですが(取材は9月上旬)、神戸の地に行くと、私もがっつり関西弁になってしまうんじゃないかと怖いです(笑)。でも東京から夢破れて神戸に来た美璃が、住んでいくうちに関西弁が出るようになるのもまたリアルですよね。だからちょっとだけ関西弁が出ても、それはそれで自然に映るのかなと思ってはいます。神戸と滋賀の言葉はちょっと違うのですが、イントネーションは似ているので、台本を読んでいるだけでも標準語のイントネーションが分からなくなるときがあります。
■女優としての原動力は「お芝居が好きという気持ち」
――浅野さんが描いた美璃と空の恋物語や人間模様を、いち読者としてどんな風に感じましたか。
SNSの普及もあって、自分を大切にするより周りと比べてしまうような世の中で、私も「人よりのんびりしちゃってないかな」と思うことがあるんです。でも、過去でも未来でもない、今という瞬間を大切に生きている空を見ると、「のんびりしちゃった」と思った日も全然無駄な一日じゃなかったと前向きになれます。登場人物たちが誰かと出会うことで自分の居場所を見つけていく物語なので、見てくださる方にとっての居場所や希望となるような作品を目指して美璃を演じたいです。
――「人よりのんびりしちゃってないかな」と感じる瞬間は。
少し前までは、お休みの日が怖かったり、常に刺激的なものに触れてないといけないと感じていたんです。現場でいる方がイキイキできるので、休みになると「今日は本当に何もしてない」「人に後れを取っているんじゃないか」「何かしたい」とすぐ考えてしまって、作品と作品の間のお休みをうまく活用できなくて。
――とてもストイックな考えですね。女優としての向上心から生まれる感情だと思うのですが、堀田さんをそうやって駆り立てる原動力は何ですか。
お芝居が好きという気持ちです。役を演じるというのは自分と違う人を生きるということで、たくさんの知らない感情にどう寄り添えるか、近づけるかは自分自身との戦い。過去の作品よりももっとパワーアップしたいと思って挑みますが、人にどう見られたいかというよりは、自分の中で納得したいという感情が一番大きいです。そのために、作品すべてに120%のパワーで臨みたいと思っています。120%満足する結果になるかどうかはまた別ですが、それだけやらないと私は納得ができない性格。そして最近は、120%を出すためには休むことも必要だと思えるようになりました。
休みの日に外を歩いて見た景色や、友達と会ってかけてもらった言葉って、本物だなと思って。ドラマや映画といった作品を通して伝えるものは綺麗に包み込まれているので、そうじゃない、生身の人間の私が見たもの、生身の人間から聞く言葉という本物に触れていきたいというのが今、心がけていることです。美術館に行くとか、旅行していろんなものを見るとか、本物から得る経験を役に活かしていきたい。「それって休みがないと無理だよね」と休むことの大切さに気付きました。
■『大奥』共に出演の風間俊介と交わした会話
――休みで経験したことが、役作りにつながっていくんですね。堀田さんは今年4月の25歳の誕生日に、「自分自身が幸せだと感じることを見つけて大切にしていきたい」とインスタグラムに目標を投稿されていました。“幸せに感じること”を教えてください。
やっぱりお芝居が楽しいと思えることです。どんな現場も楽しいのですが、これまで、お芝居が楽しいというシンプルな感覚は毎回持てるわけじゃなかったんです。でも最近はそう思える現場が増えてきていて、ドラマ『大奥』(NHK・23年)は特にそうでした。役どころとしてはつらいけど、演じている自分はすごくイキイキしていて、「お芝居が楽しい」という感覚にたくさん出会える1年でしたね。
――『大奥』の上様役、本当に素晴らしかったです。
『大奥』では同じ作品に出演しながらもお会いできていなかった風間俊介さんに、今作の現場でやっとお会いできてすごくうれしかったです。「上さま、お会いしとうございました」と言ってくださったので、「私もじゃ、杉下」って返して。風間さんは、杉下のお芝居ももうすごくて、素敵なお芝居をされる俳優さん。いつかご一緒したいと思っていたので、いとこという関係の近い役柄でお芝居を交わすのが楽しみです。
――では最後に、『たとえあなたを忘れても』の見どころを教えてください。
コロナ禍が始まって数年の間は、大切な人に会えることや、お仕事があるありがたさをより一層感じられた方が多いと思うのですが、制限が解除された今は、当たり前のことを当たり前に感じてしまっていないかと。作品を通して今日という一日を心から大切にしなきゃいけないんだと、考えさせられる日曜日になると思います。悩みもがく姿に、弱さではなく、力強さを感じてもらえる登場人物ばかりなので、『たとえあなたを忘れても』から、前向きな希望を感じとっていただければうれしいです。
1998年4月2日生まれ、滋賀県出身。2015年、WOWOW『テミスの求刑』でデビュー。2017年から放送されたNHK連続テレビ小説『わろてんか』で注目を集める。主な出演作にドラマ『3年A組 -今から皆さんは、人質です-』(19年)、映画『かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~』(21年)シリーズなど。2022年、『鎌倉殿の13人』でNHK大河ドラマ初出演。2023年は、NHKドラマ10『大奥』で3代将軍・徳川家光を演じて高い評価を受け、その後もフジテレビ月9『風間公親-教場0-』をはじめ、話題作への出演が続いている。公開待機作に映画『翔んで埼玉~琵琶湖より愛をこめて~』(11月23日公開予定)、『ある閉ざされた雪の山荘で』(2024年1月12日公開予定)、『劇場版 君と世界が終わる日にFINAL』(2024年1月26日公開予定)があり、WOWOWドラマ『OZU~小津安二郎が描いた物語~』第4話「淑女と髯」(11月12日放送)にも出演。