女優の堀田真由が、22日にスタートするABCテレビ・テレビ朝日系新ドラマ『たとえあなたを忘れても』(毎週日曜22:00~)で地上波連続ドラマ初主演を務める。『神様、もう少しだけ』(98年)でHIVを、『ラスト・フレンズ』(08年)でDVや性同一性障害を題材に取り入れ、苦難の中の純愛を描いてきた脚本家・浅野妙子氏の書き下ろし恋愛ドラマとなる今作。夢を失い、生活苦に陥ってしまった美璃(堀田)と、記憶を失ってしまう解離性健忘という障害を抱えながらも、キッチンカーを運営し懸命に生きる空(萩原利久)のラブストーリーを、神戸ロケの美しい映像で紡いでいく。

今回は、ピアニストになる夢に挫折し、現実から逃れるように東京から神戸に引っ越してきた美璃を演じる堀田に、今作の見どころや4度目の共演となる萩原の印象、芝居へのストイックな思いについて話を聞いた。

  • 堀田真由

    堀田真由 撮影:泉山美代子

■地上波連続ドラマ初出演を「楽しみたい」

――今作で地上波連続ドラマ初主演を務められますが、率直な気持ちを教えてください。

主演という形で真ん中に立たせていただけるということはとてもうれしいことですし、初めては何度も味わえることじゃないので、とにかく楽しみたいなという気持ちで撮影に臨んでいます。

――座長として目標とする姿はありますか。

作品のテイストにもよりますが、リラックスした中でそれぞれが自分の意見を言える現場は素敵だと思います。ドラマ『危険なビーナス』(TBS・20年)では、吉高由里子さんや妻夫木聡さんが、考えを口にすることを遠慮してしまうような若手の方たちと積極的にコミュニケーションを取っていて。私の近くにも来てくださってすごくうれしかったんです。緊迫感あふれるシーンもありましたが、いいお芝居はリラックスしないと生まれないので、場をほぐしてくださる座長は魅力的だと感じます。

――では、堀田さんの座長としての意気込みは。

今作では大先輩の方から年齢が近い方までいらっしゃいますが、神戸という慣れない地で撮影する中でも、皆が自分の思ったことを表現できる現場になればと思っています。主演という形でいただけた作品なので、今まで先輩方に甘えさせていただいていたところを、自分が引っ張るとまでは言えませんが、コミュニケーションを取って皆で一緒に楽しめたらいいなと。

  • 堀田真由

■4度目共演・萩原利久との相手役に照れも

――萩原さんとは4度目の共演になりますね。

初めて同じ作品に出演したのが、10代のときの映画『あの日のオルガン』で、作品の中では関わりがなかったのですが、撮影場所の京都で初めてお会いできました。2度目の共演となったドラマ『3年A組 -今から皆さんは、人質です-』(日本テレビ・19年)では席が前後で。席が近いと交流が増えるので、窓側の席のメンバー同士、仲良くなりました(笑)。次は『ラジエーションハウスII』(フジテレビ・21年)で、萩原さんが私を好きになるけど私は幼馴染みとしての感情しかないという関係の役柄だったので、今回4度目にして、やっとお互いの矢印が同じ方向に向く関係を演じられそうです。『3年A組』で共演した時間が長いので、同級生と恋をしてるような、大人になって再会して恋が始まったような感覚で、4回目の共演で恥ずかしいねと2人で話しました。

――改めて、萩原さんの印象を教えてください。

昔からお人柄が変わらず、空気感が柔らかく、とても話しやすい方です。今回は顔合わせの初日に役へのアプローチについてかなり時間をかけて話したのですが、難しいと感じている部分のすり合わせもできて、「また悩むところが出てきたら相談させてね」と素直に言える相手だと感じました。4回目の共演だからこそ話しやすくて信頼感もありますし、お芝居も本当に素敵なので、相手役が萩原さんで良かったと思っています。

――初めての共演から、萩原さんも数々の作品に出演されていましたが、ご活躍を目にする機会はありましたか。

『真夏のシンデレラ』(フジテレビ・23年)を見てキュンキュンしていました。萩原さんだけでなく知り合いの多い作品だったので、それも含めて楽しく見ていましたね。

  • 『たとえあなたを忘れても』より (C)ABCテレビ

■主人公・美璃にとって空は運命的な出会い

――そんな萩原さんと演じる美璃と空とのラブストーリーを、どう作っていきたいと考えているか教えてください。

いろいろな要素が盛り込まれている作品ですが、ラブストーリーだということをちゃんと念頭に置きながら、萩原さんと「1話・2話がすごく大事になってくるよね」、「なぜ2人は恋に落ちたんだろう」と、お弁当を食べながらたくさん話し合いました。自分の居場所がどこにあるのか分からなくなっている美璃にとって、母が喜んでくれた記憶がピアノ。ピアニストを目指していたのもきっとその影響で、これまで自分のために何かを選ぶことができなかったかもしれない美璃が、初めて自分の意志で手を差し伸べたい、支えたい、一緒にいたいと思えた相手が空だと思うんです。空は美璃の人生の中で、運命的な出会いだったんじゃないかなと。

  • 『たとえあなたを忘れても』より (C)ABCテレビ

――美璃にとって空は、ただ恋に落ちただけの相手ではなく、初めて自分のために選択できるきっかけを作った運命の相手だと。

脚本には、1話も含めて「月」が何度も出てくるんです。月のシンボルは女性で、太陽のように光を放つのが男性だと言われがちですが、2人は逆だと思っていて。包み込むような優しさを持つ空が月で、美璃は、暗闇の中にいるかもしれない空に光を差してあげたいと思っている太陽のよう。真逆の位置にいる太陽と月が日食のときだけ重なり合うように、美璃と空が重なる瞬間は運命なんじゃないかって、勝手な裏設定を作っています。

――すごく深い解釈ですね。

台本は脚本家さんからの素敵な贈り物ですが、セリフやト書きに「この人はこういう人です」とすべてが書かれているわけではないので、いただいたものを自分がどう広げていけるかが大事だと思っています。今作は要素が多い分、私も伝えたいことが多いですし、浅野さんがくださった脚本に萩原さんと一緒に色をつけていければと。