フジテレビのドキュメンタリー番組『ザ・ノンフィクション』(毎週日曜14:00~ ※関東ローカル)で8日に放送された『今晩 泊めてください ~ボクと知らない誰かのおうち~ 前編』。街角で「今晩泊めてください」というフリップを掲げ、その日出会った人の部屋で夜を明かす生活を送るシュラフ石田さん(32)を取材した作品だが、この後編が15日に放送される。
「何のしがらみもない一期一会の関係なら、自分らしくいられる」と、28歳で仕事を辞め、貯金を取り崩しながらこの暮らしを続けている石田さんを追ったのは、奥村かおりディレクター(オルタスジャパン)。唯一無二の生活を送る彼を受け止めてくれる人たちに、どんな共通点を感じたのか――。
■どの人も人生のドラマを持っている
初対面の上、人通りの多い駅前で「今晩泊めてください」と書かれた奇妙なフリップを掲げる青年を快く泊めてくれる人たち(石田さんいわく「家主さん」)。
奥村Dは、彼らの共通点として、「1つは、やはりすごく優しい人が多いです。優しいというのはいろんな種類があると思いますが、他人に対してとても寛容だと感じました。32歳の石田さんに対して『働かないと』とか『彼女作らないと』とか、そういう押しつけがないんです。もう1つは、寂しい気持ちを持っていることに自覚的な人が多いと思いました」と印象を語る。
さらに、「皆さん普通に働いている人や学生さんだったりするのですが、それぞれに自分の人生のドラマみたいなものを持っているんです。だから、どんな人にも面白い物語があるんだというのを、石田さんを追いかけてすごく感じました」と発見があった。
■クールな人から温かい人へ「180度印象が変わった」
それを象徴するのが、後編に登場する80代の女性だ。28年前に主人を亡くし、現在は一人暮らしをしているが、石田さんを何度も泊めている。奥村Dは、今回の取材の中で特に印象に残った人だという。
「石田さんが泊めてくれる人を2時間たっても見つけられなくて、急きょ電話して夜の9時過ぎに行ったんですけど、それでも快く受け入れてくれるのに、まずびっくりしました、その上、いつか石田さんが来ると思って、いろんなものを用意している姿が、すごく印象に残ります」
80代という年齢にもかかわらず、固定概念にとらわれない石田さんの生き方に理解を示すことにも、「すごく寛容というか、心が広いなと感じます」と驚かされたそう。石田さんが2回、3回と泊まるのは、相当気の合った人の家に限定されるそうで、2人の“相思相愛”ぶりを感じたが、そこから石田さんにも“寂しさ”を感じる部分があったという。
「石田さんは、いろんな人の話を聞くのが楽しくてこの暮らしをしていると言っていて、たしかにそれは理解できるのですが、だったら、2回、3回と同じ家に行く意味は何だろうと考えたときに、やはり自分のことを分かってくれる人との継続的な交流を求めていて、それはどこかに孤独のような思いがあるのではないか。この生き方は本当に唯一無二なので、それを認めてくれる貴重な人との関係を求めるのは、少し寂しさもあるのかなと思いました」
このように、今回の取材を通して石田さんの印象は大きく変化。「見ず知らずの人の家に泊まってその人の話を聞くことを『毎晩違う小説を読んでいるかのような感覚』と表現していたりして、なんとなくクールな感じだと思っていたんです。でもそれでだけではなくて、会話を聞いていると、お互いを認め合える人を探していて、とても温かい人だと思うようになりました。そこは180度印象が変わりましたね」と語る。