• 田口清隆監督とウルトラマンブレーザー

――第1話のバザンガ、第2話のゲードス、第3話のタガヌラーと、「新怪獣」がぞくぞく登場するのも驚きました。

今までのニュージェネレーションウルトラマンシリーズとは違うウルトラマンを、というのは円谷プロからの強い希望でもありました。。僕は『ウルトラマンZ』をやったとき、意識的に「これぞニュージェネ」という要素をあれもこれも入れ込んでみたつもりでした。過去ヒーローの客演もあり、リメイク怪獣の登場もあり、いろいろな部分で割り切りつつも「こういうことをやったらきっと面白いぞ」の塊を作ったのが『Z』でした。だから『ブレーザー』では同じことをやってもしょうがないので、まずは毎回できる限り新怪獣でいきたいと要望したんです。

――田口監督の思う「ニュージェネ」らしさを排除していったのが『ウルトラマンブレーザー』なんですね。

いわゆる「ニュージェネ」らしさを排除するというのは、たとえば「歴代ウルトラマンの力を借りたモードチェンジはしない」、「これまで過去怪獣を多く出し過ぎたように思うので、新怪獣を出していく」、そして「インナースペースで主人公が決めゼリフを放ち、アイテムを操作するのをやめる」、他にもいくつか提案したのですが、だいたいはこのあたりですね。結局その方向へ舵が切られて、新怪獣をどんどん作っていこうという話になりました。

最初のころは「ウルトラマンや怪獣の顔がついたメダルや小物アイテムを集めない」という意見も出しましたけど、さまざまな「押し・引き」の末に現在のような形に落ち着きました。必ずしも最初に提案したように、すべてのニュージェネ的要素がなくなったわけではありません。インナースペースも本当はなくそうと思って、ブレーザーブレスをブレーザー本人が操作するような演出を構想したんですが、それは流石にやめようということになりました。「子どもたちはウルトラマンの変身シーンになると、テレビの前でアイテムを持って主人公の真似をして夢中で遊ぶ」とこの仕事をしていて聞いたので、そうやって楽しんでくれる子どもたちは大事にしなければならないと、今回のような形に落ち着いていきました。

周囲の意見と自分の思いを折衷させた結果、「ブレスを操作するゲント」を彼の「主観」で表現する今の形にたどり着きました。僕は『ウルトラマンギンガS』(2014年)からウルトラマンシリーズに参加して、今年で10年目。企画に携わったみなさんも一緒に10年やってきたからこそ、お互いの意見を信じて「じゃあやってみよう」と挑戦してくれた。ここまで洗練された人間関係が築けるまで、10年の歳月が必要だったといえるでしょう。

――事前のインタビューや告知映像で拝見する限り、SKaRDメンバーを演じられる俳優さんが役柄とまったく同じキャラクターといいますか、シンクロ度がすごいと感じました。特にゲント隊長役の蕨野友也さんは、お話をうかがっていてもゲント隊長として喋っているのか、蕨野さん本人としてなのかの境目がわからないくらい、自然な形で役に入られていました。そんなキャスティングについてのお話を聞かせてください。

今回、隊長を主人公(ウルトラマンの変身者)にしたことはとても大きいと思っています。蕨野さんは撮影に入った当初から、すごいエネルギーを持っていて、役者としていろいろな思いをこの仕事に叩きつけてくれた。そんな彼の姿に、SKaRDのみんなも強い影響を受け、思いを込めて取り組んでくれました。撮影はだいぶ前に終わったのですが、今でも蕨野さんに会うとゲントさんと呼んでしまうし、撮影中は本当に、目の前の人物がゲントなのか蕨野さんなのかわからないくらいでした。

蕨野さんは、今までお会いした方たちの中でも屈指の「憑依型」俳優さんだと思います。これは監督としてはすごく面白いんですよ。「あなた(蕨野)がゲントそのものであるなら、この先の展開についてゲント本人の率直な意見が聞ける」と。僕らも知らないゲントの深い内面を、蕨野さんを通じて知ることができるんです。

SKaRDの4人は大人数によるオーディションではなく、ある程度候補を絞りこんだ上で、彼らに決めさせてもらいました。テルアキ(演:伊藤祐輝)、エミ(演:搗宮姫奈)、ヤスノブ(演:梶原颯)、アンリ(演:内藤好美)はみな特殊部隊の隊員で、少人数でもすごい量の仕事をこなさなければならない。精鋭の中の精鋭でないと……という思いから、候補出しの段階で「身体ができあがっている人にしてほしい」と条件を出していました。

ほぼ「狙いうち」で選んだメンバーで、みんな役とピッタリな人を選ぶことができたと喜んでいます。ヤスノブは最初、北海道出身という設定だったのですが、梶原くんと役についての話し合いをしているときに、地元が兵庫だということで、セリフを関西弁で話してもらったら、すごく自然な感じが出たので、設定の方を変えて台本のセリフをぜんぶ関西弁に変更することにしました。

――田口監督はメイン監督として、第14話「月下の記憶」のような重厚でサスペンスフルなストーリーを手がけつつ、同時に第15話「朝と夜の間に」では『ウルトラマン』(1966年)の人気怪獣ガヴァドン(A)が登場するメルヘンタッチのエピソードを作られました。いつもながら、そのふり幅の広さにも驚かされます。

『ウルトラゾーン』(2011年)のころから徹底してますよね(笑)。どシリアスな話と、バカバカしいほど明るく楽しい話の、どっちかに振り切った話が好みです。ガヴァドン(A)は、僕がずっと前から演出してみたかった怪獣です。人気怪獣をリメイクするにあたっては、オリジナル作品での怪獣の「生態」を崩さないよう心がけています。一方で、その怪獣がまだ見せていない別な生態なら描いてもいいはずだと考えて、人気怪獣の新たな一面を引き出すよう工夫を凝らしました。

  • 田口清隆監督とウルトラマンブレーザー

――これから最終展開に向け『ウルトラマンブレーザー』はますます目が離せなくなると思います。現段階ではお話するのが難しいかもしれませんが、1つだけ質問させてください。世界観、キャラクターともにとても濃密な『ウルトラマンブレーザー』ですから、第1話以前の物語であったり、あるいは最終話から数年後の「第X話」といった後日譚エピソードを作りたいという構想はお持ちですか?

もちろん構想はありますし、作りたいです! まずは『ウルトラマンブレーザー』の後半エピソードを観ていただいて、最終回がどうなるか、みなさんどうぞお楽しみにしてください!

(C)円谷プロ