石田さんの第一印象は、「最初にお会いしてお話を聞いたとき、あまり目を合わせてくれない感じがしたので、人見知りなのかなと思ったんです」というが、密着取材では高いコミュニケーション能力を目の当たりにした。

「泊まるときは、相手の話を聞くのがすごく上手なんです。その人の悩みや今頑張っていることとか、話が途切れることなく聞き出していくし、この活動をしていろんな人に会ってるから引き出しも多くて『こんな人がいましたよ』と言える。それに肩肘張ってない感じがあって、相手の人もリラックスして話せているのかなと思いました。私もディレクターとしていろんな人にインタビューで話を聞きますが、私よりも全然上手で(笑)、そこはすごく勉強になりました」

ナレーションでは、石田さんのスタイルを「案外、厚かましいんだ…」と言うシーンも。

「石田さんは大きなバックパックを持っていて、その中には洋服とか爪切りとか歯ブラシとか、身の回りのものが全部入ってるんです。バスタオルもあるんですが、家主さんに『使っていいですよ』と言われたら『持ってます』と言うんじゃなくて『ありがとうございます』ってそのまま借りる(笑)。それと、石田さんはお風呂に夜入りたい派らしく、家主さんが『お風呂いいですよ』となかなか言ってくれなかったら、自分から『お風呂借りていいですか?』と切り出したりとか、そういうところはちょっとびっくりしましたね」

だが、この“厚かましさ”が、独特な生活を送る上でのコツであると感じた。

「石田さんは『この暮らしは一切気を使わない』と言ってたんです。職場や学校では人間関係がありますが、石田さんのスタイルは“泊まる・泊まらせる”だけのつながりだから、嫌われたらそれで終わりでいいし、一期一会で遠慮がいらないからこそ、本音で付き合えると言うんです。だから、一見厚かましいんですけど、家主さんから全く嫌われてないんですよ。むしろ『すごく礼儀正しい人』とか『好青年』と言われていて、そこがすごく面白いなと思いました」

  • クリスマスイブに泊めてくれた家主(左)と石田さん (C)フジテレビ

他人の家に泊まると慣れない環境で夜中や朝早くに起きてしまいそうだが、昼頃まで寝続けることも多々ある。「家主さんが『明日は7時に起きます』と言うと、石田さんは『分かりました』と応えるんですけど、目覚ましのアラームをセットしないんです。家主さんが起きたらその気配で目覚めて、家主さんが寝坊したら一緒に寝坊する。そうやって全く気を使っていないところが、相手にとっても心地いいのかなと思いました。実は気を使うから、気まずくなることがあるんですよね」と、独特の距離の取り方を感じ取った。

元々は気を使って周りの顔色をうかがったり、行きたくないけど行かなければいけない飲み会に参加したりすることもあったそうだが、今の暮らしではそれが一切ないことに大きなメリットを感じているようだ。

■オンリーワンの生き方…あのをナレーションに起用

今回は、ドキュメンタリー番組初挑戦となる、あのをナレーションに起用。その狙いは、「石田さんはオンリーワンの生き方をして、自分らしさを追い求めている人なので、あのさんのような個性を持った声の人が読んでくれたら、内容とすごく合うのではないかと思いました」と明かす。

その上で、今回のドキュメンタリーの見どころについて、「駅前に立っている人を泊めるって、結構“異常なこと”だと思うんです。今、SNSで全く知らない人と会話できる世の中ではありますが、本当に目の前に現れた人との不思議な一期一会の出会いの面白さを見てほしいです」と予告した。

  • 奥村かおりディレクター