フジテレビのドキュメンタリー番組『ザ・ノンフィクション』(毎週日曜14:00~ ※関東ローカル)では、街角で「今晩泊めてください」というフリップを掲げ、その日出会った人の部屋で夜を明かす生活を送るシュラフ石田さん(32)に密着した『今晩 泊めてください ~ボクと知らない誰かのおうち~』を、8日・15日の2週にわたって放送する。

「何のしがらみもない一期一会の関係なら、自分らしくいられる」と、28歳で仕事を辞め、貯金を取り崩しながらこの暮らしを続けている石田さんに興味を持ったのは、奥村かおりディレクター(オルタスジャパン)。8カ月間にわたり彼に密着し、どんな印象を持ったのか――。

  • 「今晩泊めてください」のフリップを掲げるシュラフ石田さん (C)フジテレビ

    「今晩泊めてください」のフリップを掲げるシュラフ石田さん (C)フジテレビ

■名古屋駅前で偶然の出会い

初対面の人を自宅に泊めるのは、なかなか躊躇してしまうが、石田さんを泊めてくれる人(=石田さんいわく「家主さん」)は毎日のように現れ、夕食をごちそうになったり、お風呂を借りたり、一緒にゲームをしたりと、一期一会の出会いを楽しんでいる。この生活を始めて4年になるが、これまでに300軒以上の家を泊まり歩いてきたという。

そんな石田さんに奥村Dが出会ったのは、まさに偶然だった。

「私は名古屋に住んでいるのですが、去年10月に名古屋駅の前を通ったら、『今晩泊めてください』と書いた不思議なフリップを持っている人がいて、それが石田さんでした。何をやっているんだろう…と思ってお話を聞いたら面白そうだったので、ぜひ取材したいと思ったんです」

テレビのスタッフが付いてくると、宿泊のハードルが上がりそうだが、「『どうしてこういうことをやってるんですか?』と尋ねると、よく聞かれるからだと思うのですが、まるで用意されたように『僕は元々旅行が好きで…』と淡々とお話しになるんです。そんな感じで、取材も『全然いいですよ』という感じでした」と、難色を示されることはなかったという。

石田さんの生活を理解するため、まずは自分の家に泊めてみることも考えたが、「夫と暮らしているのですが、石田さんと出会った日は夫がたまたま家にいなくて、夫のいない家に泊めることはさすがにできず(笑)。そうこうしているうちに、石田さんがどんどん西のほうへ行ってしまったので、残念ながら機会を逃しました」とのことだ。

■石田さんと家主だけの姿を撮るために苦心

“1人の人間が、初対面の人の家に泊まる”というドキュメンタリーを撮るにあたり、ディレクターが入ることで本来の姿から変質すること避けるため、石田さんと家主の2人だけの会話を、カメラを置いて定点的に撮影するなど工夫を行っていたが、「あまりにイレギュラーな取材だったので、最初の頃はなかなかうまくいかなくて、そこは石田さんと話しながら私が邪魔にならない形を探っていきました」と苦心。

それは家の中の取材だけでなく、駅前に立っているときも同様で、「“テレビ番組のカメラがいるから泊めよう”と思ってもらいたくないという思いを石田さんに聞いて、なるべく遠くから撮るようにしました」といった点も含め、徐々に取材スタイルが固まっていった。