――前半で肉体的、精神的に追い込まれた孤門を何度も救った姫矢准もまた、ネクサスに変身するたび肉体的に疲弊し、辛い戦いを強いられていましたね。

自分に課せられた使命に向き合って「なぜこの仕事をやっているのか」「俺の何が求められているんだ」と自問自答する気持ち、多くの人に当てはまると思うんです。だからこそ、光の「絆」を託されて、自分が出来る精一杯のことをしようとする姫矢の姿に、感動を覚えた人が多かったんだと思います。孤門もまた、姫矢に救われたひとりだったんです。

――姫矢から光の「絆」を受け継ぎ、ネクサス ジュネッスブルーに変身する能力を得た千樹憐は陽気な少年で、後半のストーリーに明るさをもたらしてくれました。

後半に入ったばかりのころは、憐にまつわる深刻な「事情」についても詳しくわからず、明るい彼の性格に引っ張られるかのように、楽しい雰囲気に変化していましたね。撮影時期も夏から秋になり、気持ちのよい乾いた風に吹かれながら進んでいて、自分の中でも「新しいネクサスが始まった」という思いが強かったんです。とにかく夏場の撮影がキツかったものですから(笑)。

――重々しい空気が印象的なナイトレイダーでしたが、隊員役のみなさんとの実際の雰囲気はいかがでしたか?

クールな撮影現場の空気にあって、キャスト陣はみんな明るい方ばかりでした。平木詩織役の五藤圭子は役柄と同じで、陽気な人(笑)。和倉隊長役の石橋(保)さん、石堀光彦役の加藤厚成さんも、撮影以外のところでは面白い話ばかりしていました。西条凪副隊長役の佐藤康恵さんは、普段は雰囲気がすごくやわらかな方でしたけど、役に入るとキュッと目つきが変わって、副隊長の厳しいイメージに変わるんです。康恵さんは最初のころ、普段から僕に対して距離を取って接していたと、後になって聞きました。まだ芝居の経験が浅かった自分に対して、無言のメッセージだったんだと気づいて、すごく感謝しましたね。最初は氷のように冷たかったナイトレイダーの雰囲気が、ラストに向けてだんだん結束を固めていく。あの大きな流れを体感させてくれたのも、経験豊富な他のメンバーたちが僕に対してやってくれていたことでした。僕はいろんな人からのパワーをもらって、あの場所に立てていたんだなと、改めて感じています。

――石橋保さんや、溝呂木眞也役の俊藤さんをはじめ、ネクサスのキャストやスタッフ陣が集まる「絆会」という会が定期的に行われているそうですね。

俊藤さんのような兄貴分的存在がいてくださるのは、本当にありがたいです。つい先日も、昨年亡くなった中丸シオン(斎田リコ役)さんのお墓参りに、みんなで行ってきたんです。悲しい出来事だったし、喪失感も強いのですが、彼女のパワフルさ、明るさが強烈だったので、もうこの世にいないという実感がいまだに湧かないでいます。だからこそ、こうして『ウルトラマンネクサス』のお話をするたびに、リコちゃん、シオンさんのことを語って、多くの方たちにとって忘れられない存在でい続けてほしいなと思います。『ウルトラマンネクサス』の映像の中には、シオンさんの姿が永遠に残っていますしね。

――あれから19年が経ち、今では川久保さんがかつての和倉隊長/石橋保さんのようなポジションとなって、若い俳優たちにアドバイスをされているのではないですか。

少し前まで、ミュージカルで鈴木福くんと共演し、一緒に各地を回っていました。ご存じのように福くんは『仮面ライダーギーツ』(2022年)に出演していて、同じ特撮ヒーロー仲間になりましたよね(笑)。仕事の場で僕が若い福くんにどんなサポートができるかな、自分がこれまで経験してきたことの何を伝えられるかな、と考えたとき、ふと『ウルトラマンネクサス』のころ石橋さんが僕に対しどんなことを思い、どんな風にメッセージを伝えようとしていたんだろう……と想像したんです。あのときは何かを伝えてもらっていた自分が、今では何かを伝えようとしている。年齢の変化によって役割が変わるという人生の面白みを、いままさに感じているところです。

――『ウルトラマンネクサス』を観て、孤門たちから「あきらめない」気持ちを受け継いだあのころの子どもたちはみな大人になり、社会に進出しはじめています。そんなかつての『ウルトラマンネクサス』ファンに再会されたときのお気持ちはいかがですか。

取材を受けているとき、あるライターの方が「僕、小学3年生のとき『ウルトラマンネクサス』を観ていました。いまこうして取材ができて、嬉しく思っています!」と目をキラキラさせながら言ってくれました。それを聞いて、僕のほうがウルッと来ちゃいました(笑)。あのころ、僕たちキャストとスタッフみんなが嘘偽りなく、命がけで作り上げた作品を、子どもたちがパワーとして受け止めて、「今でもネクサスが好き」「あの作品があったから今を頑張ることができる」と言葉にして発信してくれる。その言葉が僕たちのパワーになるわけで、やっぱり光の絆は時代をめぐり、受け継がれて、いろんな方面に力を拡散し、届けているんだなと感じました。

――川久保さんが『ウルトラマンネクサス』でもっとも印象に残っているシーンを教えてください。

孤門のラストカット、「あきらめるな!」と1人の子どもに向かって叫ぶくだりです。あのときのセリフは製作に関わってくださったすべての人たちに届けるような思いで言いました。あのラストで、孤門の顔で終わるのか、子どもの顔で終わるのか、スタッフさんの間で少し議論になったんですよね。僕としては『ウルトラマンネクサス』とは「受け継がれる思い」の物語だから、子どもの顔で終わるべきだと思いました。孤門が受け取ったものを、誰かに受け継いでこそ、この物語は完結する。完成作品のラストには感動しましたし、これぞ『ウルトラマンネクサス』だと強く思いました。

――もしも将来、川久保さんにウルトラマンシリーズの出演オファーが来たとしたら、どんな役柄を演じてみたいですか。

隊長役を演じてみたいです。自分が『ウルトラマンネクサス』のころに直面した数々の辛く厳しいできごとを踏まえ、若い隊員に「僕にもこんな経験があった」「今の状況を乗り越えた先には、こういうことがあるんだ」と伝えられる、心の広さと共に弱さや辛さも兼ね備えているような隊長像に、強い魅力を感じています。

  • 『ウルトラマンネクサス』主人公・孤門一輝を演じた川久保拓司

――改めて川久保さんから『ウルトラマンネクサス』配信開始における注目ポイントを聞かせてください。

『ウルトラマンネクサス』は、第1話から最終話まで、連続ドラマをすべて観ていただくことで、何かがつかめるのではないかと思っています。せめて、僕が演じる孤門一輝が「変身」するところまでは絶対に観てください(笑)!

(C)円谷プロ