ついにノートPCでも3D V-Cache搭載Ryzenが利用可能になった。今回試すのは「AMD Ryzen 9 7945HX3D」を搭載するゲーミングノートPCのASUSTeK「ROG Strix Scar 17 X3D」。3D V-Cacheがもっとも効くのがゲーミング。GPUには「GeForce RTX 4090 Laptop GPU」を搭載するROG Strix Scar 17 X3Dは、現時点でトップクラスのパフォーマンスを持つゲーミングノートPCと言えるだろう。
ゲーミングノートPCにもL3キャッシュ128MB搭載Ryzenが来た
最初に説明しておくと、ROG Strix Scar 17の既存モデルに搭載されていたのはRyzen 9 7945HX。「3D」がつかないこちらは3D V-Cacheなしモデルだ。もちろんそれでもPコアが16基、合計32スレッドの強力なパフォーマンスである。以下の表で、Ryzen 9 7945HXとRyzen 9 7945HX3Dの違いをまとめておこう。
Ryzen 9 7945HX3D | Ryzen 9 7945HX | |
---|---|---|
コア数 | 16基 | 16基 |
スレッド数 | 32スレッド | 32スレッド |
ベースクロック | 2.3GHz | 2.5GHz |
ブーストクロック | 5.4GHz | 5.4GHz |
L1キャッシュ | 1MB | 1MB |
L2キャッシュ | 16MB | 16MB |
L3キャッシュ | 128MB | 64MB |
cTDP | 55~75W | 55~75W |
最大温度 | 89℃ | 100℃ |
仕様はある程度共通しているので、特に異なる部分をピックアップしよう。まず3D V-Cacheの部分でL3キャッシュ容量がRyzen 9 7945HX3Dは128MBで、Ryzen 9 7945HXの倍量になっている。まあ、Ryzen 9 7945HX自体64MBとかなり大容量ではあるが、倍になることでより多くのデータをキャッシュしておくことができるようになり、ヒット率も高くなるというのがポイントだ。そして最大温度が89℃と少し低く設定されているのも3D V-Cacheに関連するところだろう。もう一つ温度を抑えるものとして、ベースクロックを200MHzほど落としている。おそらくマルチスレッド時はRyzen 9 7945HXよりも若干クロックが低いと思われる。一方で3D V-Cacheでキャッシュヒット率が上がる。つまり目的のアプリケーションがどのような性格なのかが肝心だ。キャッシュが効くならRyzen 9 7945HX3D、クロックが有効に効くならRyzen 9 7945HXのほうが高性能ということになる。本製品のようにゲーミング用途に関しては、3D V-Cacheが効くためRyzen 9 7945HX3Dのほうが適していると言えるだろう。現在のゲームタイトルで16コアも求められるか……という点はあるが、多い分には問題ない。ただ、どちらかと言えばギガスレッド用途、プレイしながらの配信や録画といった用途が適しているのだろう。
ASUSTeK「ROG Strix Scar 17 X3D」を隅々まで見てみる
ROG Strix Scar 17 X3Dは、ROGらしいデザイン性の高さに加え、17.3型の大画面、高いゲーミング性能を備えている。サイズは305×282×23.4~28.3mm。重量は約3.0kg。自宅プライベートルームに置いて、ゲーミングをメインにプライベート全般をこなすことができる。もちろん高性能なのでビジネスやコンテンツ制作も視野に入る。とくにゲーム+配信のような使い方なら、本製品の高いマルチスレッド性能が生かせるだろう。
ディスプレイ解像度は2,560×1,440ドット。4Kを目指さなかった代わりにリフレッシュレートは240Hzと高い設定なので、搭載するGeForce RTX 4090 Laptop GPUのパフォーマンスと合わせ、重いゲームタイトルでも高フレームレート、軽いeスポーツタイトルでは240Hzパネルの性能を引き出して余りあるほどの超高フレームレートを実現する。応答速度は3ms。また、NVIDIA G-Syncにも対応している。
評価機のキーボードは英語版。Ryzen 9 7945HX3D版は未発表モデルなので国内販売モデルがあるかどうかは不明だが、日本語配列とは異なると思われる。ROGなのでゲーミングキーボード仕様が特徴で、スイッチは2,000万回の押下に耐える高耐久のものと言う。また、ROG独自と言うオーバーストローク・テクノロジーを採用。キーストロークは2mm確保されているが、キーストロークが浅い位置で反応することで高レスポンス、快適さを実現すると言う。また、キートップもわずかな傾斜を設けてフィット感を高めている。イルミネーションでは個別にLEDバックライトを搭載。Aura Syncで制御ができる。
インターフェースを見てみよう。左側面にはUSB 3.2 Gen1 Type-A×2基、マイク/ヘッドホンコンボジャック1基。背面にはHDMI×1基、USB 3.2 Gen2 Type-C×2(1基はUSB PD対応、もう1基は映像出力対応)、2.5GbE×1。そのほかWi-Fi 6EおよびBluetooth 5.1をサポートしている。
ACアダプタは出力330Wのものが付属している。大きな、いわゆるゲーミングノートPC向けのACアダプタサイズだ。本体バッテリー容量は90Whとされるが、この330W ACアダプタで急速充電すれば30分でバッテリー残量ゼロの状態から50%まで充電できると言う。加えて、USB PD(100W)による充電も可能とされる。たとえば本製品をビジネス用として職場に持ち込むような場合は、こうしたUSB PD充電も検討できるだろう。
CPU+GPUで最大240W! 冷却機構も強力
CPUは先ほど説明したとおり。cTDPの最大はマニュアルモードで65W、ターボモードで55W。GPUもNVIDIA GeForce RTX 4090 Laptop GPU。ROG Strix Scar 17 X3DではTGP 175W(Dynamic Boost対応)までで運用できると言う。グラフィックスメモリは16GB。CPUとGPUのトータルでは、マニュアル時240W、ターボ時230W+そのほかの消費電力となるので、330Wアダプタをバンドルするのもうなずける。
熱源であるCPUやGPUのいわゆるサーマルペーストについては、Thermal Grizzlyの液体金属のものを採用していると言う。通常のグリスと比較して最大15℃冷えるそうだ。冷却機構にはベイパーチャンバーを採用。ディスプレイ裏上部から吸気、背面左右と両側面の4つの排気孔を設けたエアフローを行なう。左右に配置するファンは84のブレードを持つ「Arc Flow Fans」と銘打ち、冷却性能をうたっている。
メモリはDDR5-4800 16GB×2枚を採用しており、標準で32GBという大容量だ。CPU-Zからもどのスロットに搭載されているかが表示できるため、SO-DIMMで搭載されていると見られる。
評価機のストレージはSK hynix PC801「HFS001TEJ9X101N」が搭載されていた。容量が1TB、PCI Express 4.0 x4接続のM.2 NVMe対応SSDだ。転送速度はシーケンシャルリードで7367.15MB/s、同ライトで6409.9MB/sとPCI Express 4.0 x4の帯域上限に迫る高速モデルだ。