• こうち旅広場の休憩スペースに展示されている牧野博士のパネル

『らんまん』で素晴らしい物語を紡いだ脚本家の長田育恵氏も明言しているが、槙野万太郎=牧野富太郎ではなく、万太郎はあくまでも牧野博士をモデルにした人物である。とはいえ植物学の父である牧野博士が残した名言「雑草という草はない」は、今の時代にも刺さるメッセージとして劇中で何度も登場し、ドラマの骨子となった。いわば牧野博士のスピリットは見事にドラマに反映されたわけだ。

SDGsや多様性が世界的に叫ばれている昨今だからこそ、牧野博士の人生観と功績は、今を生きる私たちの琴線にも触れたに違いないが、加えて、博士自身もきっとチャーミングな人物だったのではないかと思う。制作決定時に主演の神木隆之介が「牧野富太郎さんの笑顔を見た時に、なんてすてきな優しい笑顔なんだ、こんなに純粋に屈託ない笑顔ができる牧野さんがすごく羨ましいな、と思うと同時に、優しさに包まれる気持ちになりました」と公式コメントを出していたが、確かに写真に残っている牧野博士はほとんどが満面の笑みをたたえている。だからこそ、神木演じる万太郎の笑顔にも、きっと観る者の心が洗われたはず。

ちなみに9月29日には、『らんまん』最終回を見る会が、高知県立県民文化ホールで開催され、チーフ演出の渡邊良雄氏が登壇予定だ。そして『らんまん』の放送が終わったあとも、美術館や博物館、記念館などでは牧野博士関連の様々な企画展、特別展が続行されているし、秋冬には牧野博士をフィーチャーしたイベントも多数開催予定だ。

例えば10月29日には、『らんまん』の音楽を担当した作曲家・阿部海太郎と、その挿入曲を演奏したギタリストで元いちむじんの山下俊輔が企画した「牧野富太郎ボタニカルオーケストラコンサート」が高知県立県民文化ホールで開催。12月16日、17日は第7回高知市民ミュージカル「Gift of Life ~にぎやかな植物園~」が高知市文化プラザかるぽーとで開催されるが、本作も牧野植物園を舞台にした物語だ。牧野植物園では、菅原一剛「MAKINO 植物の肖像」展が10月1日まで開催中だが、11月3日より新たな企画展「牧野富太郎物語」がスタートする。

■「歩ける植物図鑑」高知 1年を通して様々な場所で植物が咲き誇る

また、牧野植物園の植物としては、10~11月にかけては『らんまん』のオープニングに登場する「ジョウロウホトトギス」や、第21週のサブタイトルになった「ノジギク」が開花時期となるのでおすすめ。ちなみに最終週のサブタイトル「スエコザサ」は、いつ訪れても見られるが、「バイカオウレン」の見頃は1~2月くらいなので、その時期を狙うというのもアリだ。

「ようこそ、『歩ける植物図鑑』高知へ。」これは「牧野博士の新休日~らんまんの舞台・高知」のキャッチフレーズである。本当にそのとおりで、高知県は1年を通して様々な場所で植物が咲き誇る自然豊かな街なのだ。折しも、越知町では9月30日~10月15日にコスモスまつりが開催される。まさに“らんまん”な風景が四季折々にいろいろな場所で広がっている。

高知に行ったことがない人はもちろん、『らんまん』を見て興味を持った人も、ぜひ「歩ける植物図鑑」高知を訪れてもらいたい。きっとどの季節に訪れても、草花はもちろん地元の人たちも温かく迎えてくれるはずだから。

  • 高知県立牧野植物園