岡田麿里監督最新作となるMAPPA初のオリジナル劇場アニメーション『アリスとテレスのまぼろし工場』(9月15日公開)で声優に初挑戦した俳優の瀬戸康史にインタビュー。本作は“変化”がテーマの物語だが、瀬戸自身の人生のテーマも“変化”だという。声優初挑戦の感想とともに、変化に対する思いや、自身の変化について話を聞いた。

  • 瀬戸康史

    瀬戸康史 撮影:加藤千雅

■岡田麿里監督×MAPPA作品で声優初挑戦「まさかこんな奇跡が!」

本作は、製鉄所の爆発事故により全ての出口を失い、時まで止まってしまった町が舞台。いつか元に戻れるようにと、住民たちは何も変えてはいけないというルールを作り、鬱屈とした日々を過ごしていた。そんな中、14歳の主人公・正宗は、謎めいた同級生の睦実に導かれて製鉄所の第五高炉へと足を踏み入れ、野生の狼のような少女・五実と出会う。そして、この2人の少女と正宗との出会いから、世界の均衡が崩れ始める。

瀬戸は、主人公・正宗の父親で製鉄所に勤める菊入昭宗の声を担当。出演が決まったときは大喜びだったという。

「すごくうれしかったです。アニメも好きですし、岡田麿里さんも好きですし、MAPPAも好きですし、岡田さんとMAPPAから知られているということがうれしかったです」

今回が声優初挑戦となったが、いつか挑戦したいという思いがあったという。

「声のお仕事は、ナレーションや美術館の音声ナビゲーターは経験がありましたが、声優の仕事は機会がなかったので、いつかやりたいなと思っていたら、まさかこんな奇跡が! という感じでした」

そして、本作の魅力について、「見た人の状況や心情で捉え方が変わるぐらい、いろんな捉え方ができる作品で、誰かと話したくなるような作品だなと感じました」と紹介。また、本作のテーマである“変化”について、「僕自身の人生のテーマでもあるので、すごく共感できました」と語る。

「日本人は輪から外れるのが苦手だと思うし、輪にいることが正義みたいなところがありますが、我々表現の世界で生きている人間は、どうはみ出すかというのが大事で、そこにしかないものがあると思うんです。そういった意味でも、変化は僕の中ですごく大事にしています。この作品も、変わってはいけないというルールがある世界で、変わろうとしている人たちの話なので、共感できる部分が多かったです」

  • 瀬戸康史

■仕事に対して前のめりに! プライベートも大事にするように

変化が自身のテーマになったのは「24~25歳頃」とのことで、そこからずっと大切にしているのだという。

「心を豊かにしたいというか、枠内に収まっていたくないという気持ちがすごくあります。変化イコール成長という意味もあって、成長し続けたいという思いが強いです」

変化を意識する中で、実際に「考え方は変わってきている」と自己分析する。

「ずっと受け身でしたが、この仕事が好きになりましたし、どんどん仕事に対して前のめりになっているなと思います。監督に提案することも若い頃はしていませんでしたが、できるようになってきました」

特に自身にとって大きな転機となったのが、舞台『マーキュリー・ファー』(2015)だそうで、「演出家の白井晃さんに『芝居だけど、芝居するな』と言われて、その言葉から考え方が変わったなと思います」と告白。そこから芝居がより好きになり、前のめりになっていったという。

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そのほかにも何か変わったことはあるか尋ねると、「プライベートを大事にするようになりました」と明かした。

「以前は休みがあるのがすごく怖かったので、休みなくていいので仕事を入れてくださいという感じでしたが、プライベートを充実させないと表現は豊かにならないと気づきました」

その変化も、『マーキュリー・ファー』の頃からだという。

「自分が演じる姿が想像できない役など、乗り越えるべき壁を立てるように、そういう風に仕事を選ぶようになりました。そして、空いた時間でプライベートを充実させるようにしています」

逆に変わらず貫いていることを尋ねると、「家族のために頑張るというのは変わらないし、変えられないところです」と答え、「たくさんテレビに出ると母や祖母たちが喜んでくれるので、そのためにも頑張るというのはずっと変わらないです」と笑顔を見せた。