■中村倫也は“上司”と呼びたい存在

――制作するうえで意図していないのに、自然と考察が盛り上がっているのは1つの理想系のようにも思えます。では、今作の主演・中村さんの印象を教えてください。

本当にすごい方で尊敬しています。ご一緒するのは3回目で、比較的よく知っている俳優さんなのですが、どんどん進化されているのを感じます。主演俳優として作品を背負う以上のことをしてくれていて、俳優の視点にとどまらず物事を見る広い視野があるし、ちょっとしたことをやるにも高いスキルを発揮してくれるし、なんでもできるんです。きっと俳優じゃなく、何をしても成功できる人だと思います。

プロデューサーの目線も持っているので、私は上司と呼びたいくらい(笑)。台本について、「ねぇねぇ」と呼ばれて、「はいはいはい」とお伺いして、「こことここって、入れ替えたほうがいいと思うんだよね」「どういうことですか?」「ここをこう変えると、こうなるじゃない?」「ほんとだ! そうします!」と、中村さんのアイデアで台本を変更することもあります。台本について役者さんから声をかけられるときは、自分にまつわる箇所について相談されることがほとんどなのですが、中村さんの場合は全く違って、作品が面白くなるかどうか、作品に整合性が取れているかどうかという相談なので、納得感もあるし、その提案で作品がより良いものになっていくので、本当に優秀な方だなと感じます。

ほかにも、居酒屋△での撮影が長引いてノンアルコールビールの泡が消えちゃったときは、美術さんが直さなくて済むように自分のグラスの泡を立て直しておいたり、現場で助監督がバミリを外し忘れてるときは「あ、ここついたままだよ~」とサッと教えてくれたりして、本当に細かいところまで気がつく方なんです。あるときは「今日はこのシーンをあと何回くらいやって、終わるのは4時半かな、じゃあ“飯押し”(食事より前に撮影を終わらせること)で行こうか」とさりげなくスケジュールを巻いていたりもして。俳優でありながら、プロデューサーでもあり、演出家でもあり……常に全体の動きを見ていてちょっと恐ろしいレベルです!(笑)

  • 中村倫也
  • 中村倫也

■セリフ量の30倍喋り倒していたキャストたち

――具体的なエピソードの数々から、中村さんのすごさが目に浮かびました! 続いて、消防団員を演じたベテランキャストの皆様の魅力も教えてください。

とにかく根っこから明るくひょうきんで、蛍光灯のようなムードメーカーしかいない現場でした。くだらない話をしては盛り上がっていて、皆さん、ドラマのセリフの量の30倍は喋り倒して帰って行かれていました(笑)。そうやってふざけてばっかりですが、もちろん芝居の本番はビシっとキメてくださって。原作のキャラクターのイメージからキャスティングしたので、やはり役とご本人のキャラがシンクロしていると感じることがたくさんありました。

生瀬勝久さんは、このメンバーの中では「番長」。いつも柔らかい空気をまとっていますが、時々ハッとするような含蓄のある言葉をくれて「兄貴!」と呼んでついていきたくなる頼もしさがありました。橋本じゅんさんは、演じる郁夫さんと同様に優しい方で、周囲への気遣いがとても細やかです。梶原善さんはマイペースで、岡部たかしさんは方言の練習に熱心。そしておじさまではないですが(笑)、満島真之介さんは中村さんと同様に周囲をよく見ているクレバーな方でありながら、今回の現場では全員から愛される弟分で、朝から晩まで誰かと笑って全おじさまになついていました。

――皆さんとキャラクターがシンクロしているのが伝わってきました。“全おじさま”になつく満島さんも勘助のようですね。第2話では、生瀬さん演じる賢作と橋本さん演じる郁夫の学生時代の回想シーンを、2人が代役を使わず演じ切ったことで、SNSでも「不意打ちすぎて笑う」「斬新でおもしろかった」との声が上がり大きな話題になりましたね。

直前まで2人とも「大丈夫かな……これすべってるんじゃないの」「本当にいいの? このメイクのままでやって」と言っていましたが、いざ始まってみると面白いシーンにしようと全力投球してくれたので、さすがの一言でした。

――そんなキャストの皆さんの姿で印象に残っていることはありますか。

撮影終了後、俳優の皆さんは着替えてメイクを落とさないといけないので、普通は帰るまで少し時間がかかるのですが、この現場では中村さん含めて全員撤収がめちゃくちゃ早く、秒速で出てしまうので、プロデューサー陣が帰りの見送りに間に合わないことがほとんどでした。「見送られない」ことを一切気にしていないのも、ハヤブサの役者の特徴だったかもしれません(笑)。

■最終回は「ハヤブサ消防“劇”団」に注目

――では最後に、14日に放送される最終回の見どころを教えてください。

ラストはハヤブサを巡っての攻防戦になります。中村さんVS川口さん、中村さんVS浜田信也さん(杉森役)の芝居合戦や、古川雄大さん(真鍋役)の演技など、めちゃくちゃ見応えのあるお芝居が繰り広げられる最終回になっています。どのキャラクターも本性を現して大変なことになっている中、太郎がハヤブサと彩を守れるのかという一大決戦を、ハヤブサ消防“劇”団が演じるさまに注目してください。

■テレビ朝日 飯田サヤカプロデューサー
2001年テレビ朝日に入社し、2010年よりドラマプロデューサーを務める。主な作品に、『バラ色の聖戦』、『死神くん』、『民王』シリーズ、『ホリデイラブ』、『サインー法医学者柚木貴志の事件』、『不協和音』、『微笑む人』、『漂着者』、『妖怪シェアハウス』シリーズなど。