――スパナの衣装についてのこだわりポイントを教えてください。
黒いレザージャケットに、ポイントとして入っている「紫」のカラーですね。ネクタイの色と一緒であり、変身後の「ヴァルバラド」にも紫が使われています。普段は見えにくいかもしれないですけど、ネクタイの先に小さくロゴが入っているとか、ジャケットの丈を撮影開始ギリギリまで調節して、いちばんカッコよく見えるスタイルに仕上げているとか、衣装にはかなりこだわっています。この格好だと真夏の撮影がキツいので、上着を着ているシーンでは半袖シャツにしていたり、背中に保冷剤を入れたりして、なんとか猛暑を乗り越えるようメイクさんや衣装さんが工夫を凝らしてくれてます。みなさんには本当に感謝しています。
――スパナはなんといっても仮面の戦士ヴァルバラドへ変身するというのが大きな特徴だと思います。変身ポーズはどのようにして決まったのですか。
まず、ベースになる動きが最初にあって、アクション監督の福沢博文さんと僕で「こうしたほうがいい」「こっちのほうがカッコいい」とお話をしながら決めていきました。変身ポーズといえば仮面ライダーの大きな見せ場じゃないですか。このときうかがった話で興味深かったのは、足を交差させるような動きのとき、絶対に後ろに下がらず、足を「前に出す」のが大事なんだそうです。後ろに下がると「守り」に入る、弱気に見えるから、ヒーローになるには前に踏み出さないといけない。そこまでこだわっていることに、驚きつつ感心しました。
――ヴァルバラドの姿を実際にご覧になったときの感想を聞かせてください。
ガッチャード/宝太郎には悪いんですけど、ヴァルバラドのほうがカッコいいと思っています（笑）。僕が子どものころ、こういうキャラクターが好きだったなあ、と思える要素が詰め込まれているからです。ヴァルバラドのスーツには各部に「汚し」が入っており、宝太郎よりもずっと前からひとりで戦い続けていて、経験や泥臭さが汚れとサビになって表現されているんです。汚し方ひとつにも意味を持たせるこだわりがあり、僕は大好きです。
ちなみに、福沢アクション監督はアバレッド、ヴァルバラドに関わっていただいた今井靖彦さんはアバレキラーと、2人とも僕が子どもの時に好きだった『アバレンジャー』のスーツアクションをされていて、特に今井さんから当時のお話をうかがっていました。自分が幼少時、大いに影響され、熱中して観ていた作品に携わっていた方にお会いできたのは、とんでもなく嬉しいことでした。
――ヴァルバラドのアクションにご自身の声を吹き込む「アフレコ」を経験されて、いかがでしたか。
映像を観ながらヴァルバラドの動きに声を合わせる作業は、思った以上に難しかったです。武器を持ち換えるときには「フッ」と声を入れ、観ている方に武器の重さを実感してもらうテクニックがあるのですが、このようにひとつひとつの動作にすべて「音」が存在するんだと、改めて気づくことができました。ヴァルバラドがアクションをする際は、スタジオの中で自分も同じような動きをしながら、自然なかけ声が出せるよう努めました。
――ガッチャードやヴァルバラドなど、キャラクターアクションのプロフェッショナルの方々の動きを間近でご覧になって、どう思われましたか。
以前、歴代シリーズで主役ライダーを演じ続けた高岩成二さんの動画を拝見して、微妙な仕草の変化でキャラクターの思いを伝える、その表現力の素晴らしさに感動したことがありました。スパナ/ヴァルバラドという役を作り上げるにあたって、スーツアクターさんからいろいろと良いところを盗んで覚え、表現力を自分のものにしたいという思いは強いです。
アクション部の方たちは、剣の振り方ひとつにしても「こっちからこう振るとカッコいいよ」とか、画面への効果的な映り方も含めて、詳しく丁寧に教えてくださってありがたいです。変身前の僕、変身後のスーツアクターさんとで魅力的なキャラクターを創り上げることができたらいいなと思っています。
――『仮面ライダーガッチャード』の放送を楽しみにしているファンの方たちに伝えたい、藤林さん的な見どころを教えてください。
見どころがありすぎて、どれからお話すればいいか迷います。まずは、宝太郎役の本島くんや、りんね役の（松本）麗世ちゃんが、ホン読み（脚本読み合わせ）のときから撮影が始まった現在まで、短期間のうちにものすごく成長しているところ。錬金術師としても、俳優としても日々大きく強くなっていく様子が手に取るようにわかります。画面からもそういった部分は伝わるはずですので、ぜひお楽しみにしてください。そこに、僕が演じるクールなスパナがどんな風に関わっていくか、にも注目をお願いします。身近に思える人々や、身近なシチュエーションの中で次々と起きる「ファンタジー」ドラマをぞんぶんに味わって、楽しんでいただければ嬉しいです。
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