スーパー戦隊シリーズ第27作として2003年に放送された『爆竜戦隊アバレンジャー』の「20年後」を描くVシネクスト『爆竜戦隊アバレンジャー20th 許されざるアバレ』が2023年9月1日から全国劇場にて期間限定上映を開始する。
異次元世界・ダイノアースを滅ぼした邪命体エヴォリアンの侵略から、我々の住む地球=アナザーアースを守りぬいたアバレンジャー。しかし若き社会学者・五百田葵(演:大友花恋)はテレビを通じて、20年前のアバレンジャーの戦い方を批判。思いがけない言動や行動が「炎上」の火種となり、いつしかアバレンジャー批判が途方もなく拡散していく。過酷な使命を背負ったヒーローの激しい戦いと、その合間に入る刺激的なギャグ、そして愛すべきキャラクターたちが巻き起こす複雑な人間群像といったオリジナル『アバレンジャー』の要素が、本作にはギュッと濃縮した形で詰め込まれている。
Vシネクスト公開記念インタビューの今回は、アバレッド/伯亜凌駕を演じた西興一朗と、アバレキラー/仲代壬琴を演じた田中幸太郎のスペシャル対談をお届けしよう。いつも心に熱い魂を抱くホットな凌駕に対し、完全無欠であるがゆえに自分だけの「ときめき」を欲し、クールな生き方を貫いた壬琴。すべてが対照的な2人のぶつかりあいは、本作でもストーリーの重要なポイントとなっている。20年の時を経て、かつての若々しいエネルギーや明るさはそのままに、大人の渋みをも兼ねそなえた2人の息の合ったトークをお楽しみいただきたい。
――『忍風戦隊ハリケンジャー』20周年に続き、『爆竜戦隊アバレンジャー』の20周年記念作品が作られたのには驚かされました。アソシエイトプロデューサーを兼任された西さんから、アバレンジャー復活の経緯を教えていただけますか。
西:最初は『ハリケンジャー』20周年と『アバレンジャー』20周年は、まったく別々に動いていたのですが、東映さんから「2タイトルをパッケージにしたほうが戦略的に動きやすい」という話があり、『ハリケンジャー』『アバレンジャー』を連続リリースという形になりました。僕は企画から携わらせていただいて、特にこだわったのは「せっかく20年ぶりにアバレンジャーをやるんだったら、アバレないと意味がない」という部分。20年後の今しか伝えられないアバレンジャーのメッセージがあるはずだと、いろんな要素を盛り込むのに苦労しました。
田中:アバレキラーは他のスーパー戦隊だと「追加戦士」にあたるキャラクターだけど、最後のほうまでずっとアバレンジャーの「最大の敵」だったりして、ぜんぜん「戦隊のフォーマット」を守ろうとしない作品だったから、そういうところを大事にしてくれたんだよね。
――20年前に『アバレンジャー』を観ていた子どもたちが大人に成長し、お2人に「あのころ観てました」と声をかけられたりすることはありますか?
田中:それはもう、めちゃくちゃありますよ。
西:刑事ドラマの犯人役で現場に入っていたはずなのに、スタッフのひとりに特撮ファンがいて、出番のとき「レッドさん入ります!」って呼ばれたことがあったなあ(笑)。周りの人たちはポカーンってなっているし、「オレはやってねえよ!」なんてワルっぽいセリフが言いづらくなるし、困りました。
田中:そういうときはヒーローっぽく「オレ、やってねえっす!」って元気に言っちゃったりして(笑)。
西:それじゃダメでしょ(笑)! でも、そうやってアバレンジャーのことをずっと覚えてくれているのは、嬉しいんですけどね。
田中:嬉しいよね! 当時『アバレンジャー』観てましたって言う人に、僕は疑り深いから「ほんと?」って聞き返すんです。そしたら「アバアバアバアバ、アバレンジャー♪」って歌い出すから、よしわかった、本当だね!って納得するんです(笑)。
西:エンディングテーマのほうが印象強いのかな。やっぱり俺のところにも「アバアバアバアバ」って言う人いるからね。
田中:エンディングのダンスを参考にして振り付けを先生が考えて、幼稚園で踊ったりすることが多かったんだってね。
西:僕としては、みんなエンディングまでチャンネルを変えずに観てくれていたんだなあ、としみじみありがたく思ってしまいます。
田中:なるほど!
――『許されざるアバレ』というタイトルのとおり、昔はOKだったヒーローの「アバレ」が、今では暴力的だと言われ、批判の対象になるなど、現代社会を風刺したような内容が面白かったです。
田中:面白かったよね。
西:アバレンジャーの「アバレ(暴れ)」って、現代では変な風に誤解され、問題視されちゃったらイヤですよねって、脚本協力の西駿人さんのアイデアから始まったんです。
田中:確かにまあ、周りに迷惑がかかるくらいアバレたらダメですもんね(笑)。
西:でも、僕らかアバレてきたのは、そういうことじゃないでしょってことですから。こういう方向のストーリーについて、やめたほうがいいんじゃないかという意見もあったんですけど、日和るよりは、日和らない方向へ向かいましょうよ!って、僕も強く押しました。そうじゃないと、意味ないですから。
――西さんと田中さんは以前、ドラマで共演をされたとうかがいましたが、アバレッド、アバレキラーとして共演されると、また格別な思いがあったのではないでしょうか。
西:それはもちろん、ありますね。以前の共演で面白かったのは、幸太朗くんが刑事役で、僕が捕まる側で出た『法医学教室の事件ファイル39』(2014年)です。
田中:あったねえ。SNSで「アバレキラーがアバレッドを捕まえた」みたいなコメントがあったのを覚えてます(笑)。
西:久々共演ということでは、やっぱりアバレイエローのいとうあいこさんが来てくれたのは嬉しかったね。
田中:いとうさん、芸能界をやめられてますもんね。本当に久しぶりの再会でした。『アバレンジャー』のすぐ後に舞台でご一緒したのが最後だから、18年ぶりくらいかな。以前とお変わりなく、美しかったです。