■ニコニコ動画とボカロ曲との出会いが転機に

現在69歳で、来年には芸能生活デビュー60周年を迎える小林。第一線でパワフルに活躍し続ける秘訣を尋ねると、「面白がること」だと回答。生きていく上で大切にしているモットーも「面白がること」だと話した。

「子供の頃から面白がっていた気がします」とブレないモットーのようだが、ニコニコ動画に出演するようになってからさらに、何でも面白がる大切さを感じるようになったという。

「私は演歌の歌手という形でやってきて、演歌の歌手はこうでなきゃいけないというルールみたいなものが知らないうちにたくさん決まってしまい、ここで生きていていいのかなと思う時期がありましたが、10年ぐらい前にニコニコ動画と出会ってから変わりました。思い込みは捨てようと。思い込みを捨てると、どんなことでも面白くなってくるんです」

ニコニコ動画との関わりの中で、特にボカロ曲との出会いが大きかったそうで、枠を取っ払って何でも挑戦しようと思う転機になったと振り返る。

「こんな歌があるのだとびっくりしました。ボカロ曲を歌うようになって、『千本桜』をカバーした時すごく話題になり、『紅白』でも『千本桜』を歌わせてもらいました。『千本桜』は初音ミクではなく小林幸子の歌だと思っている人もいるみたいで。もちろん、私の曲ではないですが、私の大切な宝物になりました。私たちは時代の空気を知らないうちに吸っていて、その空気に抗わずに受け入れてやっていくことも大事だなと。そうしないとつまらなくなってしまうと思うんです」

新しいことに挑戦する楽しさが「わかっちゃいました!」とほほ笑む小林。今ではどんなオファーも積極的に受けるようにしているそうで、「ディズニーさんからめちゃくちゃ悪役の声優のお話をいただいたらやりますよ!」と悪役にも意欲的だ。

そして、「演歌の歌手としてこうでなきゃいけないという囲いが外れたら全然違う視野が見えてきました。同じ歌の世界でも全然違う世界が見られて、今の時代ってこんな風になっているんだなと思うことがたくさんあります」と新しい世界を楽しんでいる。

ボカロ曲は自分との戦いにもなっているそうで、「どうにもならないぐらいの早口言葉みたいな歌がたくさんあって、挑戦しているとだんだん自分との戦いになるんです。『機械が歌えてなんで私が歌えないんだ』と(笑)。そんなことで切磋琢磨しているのも面白いなと思っています」と語る。

若者たちから「幸子さんって演歌もうまいですね」と言われたこともあるそうで、「『演歌も』って(笑)。『ありがとう』と言いましたが、いろんなコメントがあって面白いですね」と驚きのエピソードも明かしてくれた。

■「小林幸子というジャンルを作っていきたい」

常に進化を続けている小林だが、「変えないほうがいいところもたくさんある」と言い、「演歌はもちろん大好きで今も歌っていますし、演歌で小林幸子のファンになってくださった方もいるわけですから、演歌はずっと歌っていきます」と変わらぬ演歌への思いを語る。

続けて、「演歌も歌いつつ、ジャズを歌ったり、ボカロ曲を歌ったり、これからもいろんなことをやっていけたら」と幅広い活動に意欲を見せ、「小林幸子というジャンルを作っていきたい」と力を込めた。

そして、何事においても「根底にあるのは人間愛」だと言い、『ホーンテッドマンション』も人間愛を感じられる作品だと太鼓判を押す。

本作は、壮大だけど少し不気味な館に引っ越してきた母と息子が、不可解なことが続く館の謎を解明するために、幽霊を信じない心霊写真家や調子が良すぎる神父らとともに奮闘する物語。館には999人のゴーストたちが住み、数々のトリックが仕掛けられており、不気味な体験を通して館に隠された悲劇的な真実に気づいていく。

小林は「出てくるゴーストたちもみんなそれぞれの人生を選んで生きてきていると感じ、私も先祖を大事にしなくちゃいけないなと思いました。ただ怖いだけではなく、ワクワクして笑った最後は感動します。そして、アトラクションに出てくる伸びる部屋なども表現され、アトラクション感覚で楽しめる作品です」とアピール。「ゴーストがみんな最後はかわいいのよ!」と熱く語っていた。

■小林幸子
1953年12月5日生まれ、新潟県出身。1964年に10歳でデビュー。1979年、「おもいで酒」が200万枚突破の大ヒットとなり、日本レコード大賞最優秀歌唱賞をはじめ数々の音楽賞に輝く。同年、『NHK紅白歌合戦』に初出場、以来34回出場。近年はYouTubeチャンネル「小林幸子はYouTuBBA!!」にも力を入れ、「ラスボス」と称され若い世代やネットユーザーからも人気を集めている。2006年に紺綬褒章、2013年に新潟県民栄誉賞、2020年に文化庁長官表彰を受賞。2024年に芸能生活60周年を迎える。