神木隆之介主演の連続テレビ小説『らんまん』(NHK総合 毎週月~土曜8:00~※土曜は1週間の振り返りほか)で、浜辺美波演じるヒロイン・槙野寿恵子の叔母・笠崎みえ役を演じている宮澤エマ。舞台が主戦場だった宮澤が、映像作品で注目されるきっかけとなったのは3年前に出演した朝ドラ『おちょやん』(20~21)だと言う。今回再び朝ドラに出演した宮澤に、みえ役への思いと共に、舞台と映像作品のそれぞれの魅力を語ってもらった。
■『おちょやん』は映像作品で注目されるきっかけに
高知県出身の植物学者・牧野富太郎をモデルにした『らんまん』は、幕末から明治、大正、昭和と激動の時代に、植物を愛し、その研究に情熱を注いでいく槙野万太郎(神木隆之介)とその妻・寿恵子の波乱万丈な生涯を描く物語。新橋の料理屋の女将であるみえは、ちゃきちゃきの江戸っ子で、姪の寿恵子が玉の輿に乗れるように世話を焼いたが、寿恵子は万太郎を選んだことで、2人はしばらく疎遠に。しかし、槙野一家が生活に困窮したことで、寿恵子は重い腰を上げ、みえに金の工面をお願いしにいく。
宮澤は、『おちょやん』について「映像でのお芝居で、大きなターニングポイントというか、転機になる大きなきっかけを作ってくれた作品」と心から感謝しているそうで、「またいつか朝ドラになんだかの形で関わりたいと思っていたのですが、まさかこんなにすぐに呼んでもらえるとは思ってもいませんでした」と喜びを口にする。
『おちょやん』で宮澤が演じたのは、杉咲花演じるヒロイン千代の継母・栗子役。元料理屋の仲居で三味線が得意という栗子について「元芸者のみえ役と通ずる部分があり、そこは『おちょやん』を彷彿させる部分はありました」と言いつつ「栗子とみえは違う性格のキャラクターです」とも語る。
「『らんまん』の中でのみえはスパイスと言いますか、いろいろと引っ掻き回していく人物になるんじゃないのかなと思っていたら、案の定そんな感じの役でした。だからそこに対してしっかり向かい、物語を盛り上げていく一要員として責任重大だなと思いました」
さらに、みえのキャラクターについて「寿恵子さんや姉のまつさん(牧瀬里穂)よりも、より先進的で、どんどん新しい世になっていく波に乗っていきたい人物という感じがしました。寿恵子さんもまつさんもすごく柔らかい雰囲気の人なので、そこに切り込んでいくみえは、独特なテンポ感やしゃべり方を意識し、勢いを持って演じたいなと思いました」と役作りについて語った。
■寿恵子を抱き寄せるシーンは「自然と自分の中で感情があふれ出た」
10年ぶりに寿恵子と再会したみえの心境について宮澤は「最初の頃は、寿恵子の恋路を邪魔するというか、視聴者の皆さんからは『うるさいおばさんがまた来たよ』という風に思われていたんじゃないかなと。でも、みえは寿恵子の将来を案じていて、すべては彼女を思っているが故の行動であることは一貫しています」とみえを擁護する。
「彼女からしてみたら、寿恵子のためにベストを尽くしてあげたかったけど、それが空回りしてしまったところで終わっていたんです。結局、寿恵子が高藤様をふって、万太郎さんと一緒になったことに対して、みえがかんかんに怒っているという台詞もあり、実際にそれ以降10年もの間、登場しないのですが、寿恵子が窮地に陥った時に、みえを頼りにして訪ねてくれたことは心から喜んだのではないかと」
再会後、みえが寿恵子を抱き寄せるシーンの裏側も明かしてくれた。
「寿恵子の突然の訪問だったので、みえとしてどうアプローチしようかなとすごく悩みました。リハーサルの時は、お着物を着ていたのと、座る位置の関係もあり、抱き寄せるのがちょっと難しく感じまして。監督からも抱きしめるのはドラマチックすぎるかもしれないから、手を握る感じでやってみましょうかとも言われました。でも、これだけ時が空いた中で自分を頼りにして来てくれたという思いの方が強くて、その愛しさが募り、来た瞬間に抱きしめるほうがみえらしい気がしたので、結局は抱きしめることに。そのとき肉親の体温を感じられて、良かった! 生きてる! ということを実感できたシーンになりました」
また、同シーンでの浜辺については「寿恵子さんは小柄な方ですが、この小さな体で子どもたちと旦那を支えてきたのかと思うとこみ上げるものがあったし、体を触ることで温かみも感じたので、そこで芝居も変わりました。浜辺さんは、こちらが打ったものをしっかりキャッチして投げ返してくださる役者さんで、嘘がない素直な方です。2人が再会したシーンでドラマチックな瞬間を作り上げてくださったのは、浜辺さんのおかげだなとも思っています。実際に彼女を抱きしめた瞬間に、自然と自分の中で感情があふれ出ました」と振り返る。
■再登場したみえの変化「日本髪ではなくなっている」
寿恵子の母で、みえの姉・まつを牧瀬里穂が演じている。宮澤は「牧瀬さんはとても感じがいい方です。舞台がお好きなので、舞台のお話などもさせてもらいましたが、優しさやおおらかさが、頼りになるお姉さんであると同時に、商売上手じゃない不器用さも感じられ、そこが牧瀬さんご自身の性格とどこか重なるところがある気がしました。だから『姉さん、しっかりしてよ』といったことも言いやすくて、妹然としていられました」と語る。
また、まつとみえの考え方の違いについては「幼少期を送った境遇は似ていても、姉の方は芸者として一世を風靡するような売れっ子になってから引退しましたが、みえはきっとそこまで売れてはなかったのかもしれないし、セカンドライフ的に言えば、料亭の女将さんという職業にものすごく生き甲斐を見出している人でもあるのかなと。女性にあまり選択肢がなかった当時、みえは女性でも生まれを気にせずに上に登っていくことができるということをすごく楽しみにしていた人で、今で言うところのキャリアウーマンだったと思います」と捉えた。
そして、再登場したみえの変化について「素敵な着物を着ていて、髪も唯一みえだけが日本髪ではなくなっています。当時、男性はどんどん髪を切っていても、女性は髪型を変えるのはなかなかできないことだったと思いますが、先進的なみえは新しいもの好きだから、自ら髪の毛を下ろしています」と解説した。