きょう22日に最終回を迎えるフジテレビのドラマ『僕たちの校内放送』(毎週火曜24:25~ ※関東ローカル)。引っ込み思案で目立たない存在の放送部員・今野浩哉(木戸大聖)が、ひょんなことから仲間となる同級生たちとラジオを意識した番組で校内放送を盛り上げていく青春群像劇で、今作でプロデューサーデビューを果たしたのが、同局入社4年目の足立遼太朗氏だ。
フジテレビ ドラマ・映画制作部の最年少プロデューサーとなった同氏は、自身もラジオに救われたというが、初めてのプロデュース作品にどんな思いを込めているのか。制作の舞台裏などを含め、話を聞いた――。
■木戸×前田の掛け合いは撮入前に2度リハーサル
校内放送=ラジオをテーマにした青春群像劇という今作を企画したのは、「深夜でまっすぐな学園青春ドラマが作りたかったというのと、一緒に企画を開発していた脚本家さんもラジオが好きだったということもあり、校内放送でラジオをやったら面白いんじゃないかなと思いました。ラジオは基本的には1人で聴くものである一方、校内放送は生徒みんなが聴くもので根本的には全然違うのですが、ラジオが好きであるゆえに見よう見まねで、校内放送でラジオをやってしまうという始まりが、とても青臭くて学生ならではの青春で良いなと思ったんです」という足立氏。
また、「近年で言うと、高校生が仲間を集めて時代劇を作る『サマーフィルムにのって』という青春映画が大好きで、ハダシ(伊藤万理華)をはじめとする登場人物たちが本当にまぶしくて…。ああいう作品作ってみたいなという思いもずっとありました」と打ち明ける。
今回が連ドラ初主演の木戸を抜てきしたのは、「『First Love 初恋』(Netflix)を見たときに、“とんでもない役者がいる…”と興奮しました。しかも同い年…全然同い年に見えなかったですしお芝居の振り幅に驚きました。今回の企画を考えていたときに、木戸さんなら浩哉というキャラクターを僕たちの想像以上の主人公として表現していただけるのではないかと思い、オファーさせていただきました」と狙いを明かす。
校内放送でタッグを組む木戸と前田旺志郎による、ラジオならではの掛け合いシーンは、クランクインの前に2度にわたってリハーサルを実施。「清矢(明子)監督もおっしゃっていましたが、初めてのリハーサルのときに、すでに浩哉と健太(前田)が目の前にいたと言いますか、瑞輝役の中田(青渚)さんも含め、その高い完成度とお芝居の力に圧倒されました。この方々に演じていただけることになって本当に良かったと思いました」と手応えを感じた。
そんな撮影現場の様子を聞くと、「皆さんとても楽しそうに過ごしてくださっていて、見ているこちらも楽しくなりました。木戸さん、前田さん、中田さんは、放送室のシーンが多かったのですが、清矢監督や僕に“ここはこうしたほうがいいですか?”など、とても積極的に疑問点や改善点など意見のコミュニケーションを図っていただいて、より作品を良くしたいという思いが非常に強く、真摯(しんし)に向き合ってくださる人たちで感銘を受けました。木戸さんと前田さんは“僕たちの熱い気持ち、楽しそうな雰囲気が画面越しに視聴者の方々に伝えられるように頑張ります”と高い熱量でお話されていて、常に僕たちスタッフも気持ちが引き締まっておりました」と、若いキャストたちに刺激を受けたそうだ。
■限られた予算でも妥協しなかった“ラジオブース”
放送室のセットは異例にも、本来は打ち合わせや稽古などを行うリハーサル室に作った。深夜ドラマの限られた制作費でも、物語の核である“ラジオブース”には妥協したくない考えがあった中、「スタッフで作戦会議していたら、リハーサル室にあるガラス窓がラジオブースの窓に似ていて、“あ、これ生かせるんじゃない?”と。最初は“いやいやいや”と思いましたが、やってみると美術さんの力で素晴らしいラジオブースが完成しました。初めてセットを見たときは本当に感動しましたし、スタッフもキャストの皆さんもテンション上がっていました」と振り返る。
また、グループ会社のラジオ局・ニッポン放送の協力も大きい。「ニッポン放送の冨山雄一さん(『オールナイトニッポン』統括)に企画段階からご相談させていただいており、『佐久間宣行のオールナイトニッポン0』チームの皆さんのご出演、『木戸大聖のオールナイトニッポンX(クロス)』の放送、番組ステッカーの提供のほか、佐久間さんや三四郎さんのラジオ音源を使用させていただいたり、実は放送室の隅々に『オールナイトニッポン』のガチャガチャのグッズやシールを置かせていただいたり、台本の時点でプロの視点からご意見を頂いたりしました。もう大変協力的でありがたい限りでした」と、リアリティの実現に一役買っている。
足立氏にとって思い出のラジオは、高校3年で大学の受験勉強をしていた頃に聴いていた『オードリーのオールナイトニッポン』。「当時は朝から晩まで勉強ばかりしている時期で頭がおかしくなりそうになっていたのですが、休憩時間や寝る前にベッドで聴いていて、そのときだけは受験の不安を忘れて純粋に笑える時間になっていました」と、救いの存在だったという。“ラジオを聴いていれば孤独じゃない”という今作のテーマの1つは「脚本家さんの原体験からも、また私自身の経験からも感じております」と、説得力を持って届けられているのだ。
また、今作の登場人物たちと同じように、「ドラマ制作も、やってみたいこと、伝えたいことはあるけど、1人では決してできないことばかりですし、スタッフの皆さんやキャストの皆さんなど仲間と一緒に1つのことを作っていきます。その中で、ぶつかり合ったりすることもありますし、一緒に喜んだりすることもあるので、そこは通じる部分だと思います」と、共感しながら制作に臨んでいる。