• スカイライダー

    スカイライダー

――スカイライダー/筑波洋役・村上弘明さんをはじめとする、共演者の方々との思い出を聞かせてください。

一人だけの出番が多く、レギュラーのみなさんとの絡みは多くなかったんです。アフレコルームだとナオコ役の鈴木美江さん、アキ役の江口燁子さん、谷源次郎役の塚本信夫さんたちとご一緒することがあり、ずいぶん仲良くしていただきました。村上さんは主役ですからとにかく忙しくて、現場では数えるほどしかお会いしていませんでした。村上さんといえば『仮面ライダー(新)』が終わって数年後、『必殺仕事人V』(1985年)に出演(花屋の政)されていたでしょう。うちの師匠・桂ざこばが「桂朝丸」という名前だったころ『必殺仕事人V風雲竜虎編』(1987年)に「絵馬坊主の蝶丸」役でレギュラー入りしまして、村上さんに会ったとき「がんがんじいって覚えてはりますか? 私、がんがんじいの師匠ですねん」なんてお話をしていたそうです(笑)。

『仮面ライダー(新)』放送中、うちの師匠と兄弟子の桂枝雀師匠が上野の鈴本演芸場で「枝雀・朝丸 兄弟落語会」を開催し、僕も前座で出させていただくことになりました。東京の落語会に出るのは初めてで、その話をアフレコルームで塚本さんや魔神提督の中庸助さんにしましたら、なんとお2人が演芸場へ来てくださったんです。あのときは、ほんま嬉しかったですね……。中さんってテレビだと物凄いメイクだし、怖い声でしゃべりますけど、普段はめちゃくちゃええ人でした。塚本さんも面倒見がよくて優しい方でしたね。

――がんがんじいとしてテレビに出られたことで、周囲からの反響はあったでしょうか。

僕は『仮面ライダー(新)』と同じ時期、京都で枝雀師匠とラジオ番組に出演しておりました。局からご自宅まで車で送り迎えもしていて、家に着くのがお昼ごろだったんです。ちょうど、枝雀師匠の長男(現在は落語家『桂りょうば』として活動中)が小学校から帰ってくる時間と重なるんですけど、いつも玄関に彼と友だちが5、6人待っていました。「がんがんじいがうちに来ている」ってみんなに言ってたそうです。噺家仲間からも「わし、がんがんじいと友だちやと言うてしもたんで、いっぺん家に遊びに来てくれへんか」とよく頼まれました(笑)。

僕の息子は『仮面ライダー(新)』の放送後に生まれたので、特にがんがんじいのことを話していなかったのですが、ある年の夏休み、嫁はんの実家へ遊びに行ったとき、そこでたまたま『仮面ライダー(新)』の再放送をやっていて気づかれました。別に隠してたわけではないので「家にビデオがあるから観たらええがな」と言って、お袋がビデオデッキを購入してまで録画してくれた当時のビデオを、何人かの友だちと一緒に観ていましたね(笑)。

――とても個性豊かなネオショッカー怪人が登場しましたが、塩鯛師匠が今でも覚えている怪人はいますか?

たぶん写真を見れば、自分が関わった回の怪人はぜんぶ思い出せますよ。中でもよく覚えている怪人はアブンガー(第47話「スカイライダー最大の弱点! 0.5秒の死角をつけ」)。アブンガーは前回、前々回から姿を見せていて、スカイライダーを絶対に倒す作戦を立てていた強敵でしたからね。あとは、せっかくのオニギリをダメにしてしまったドロニャンゴーなんて、思い出深いですね(笑)。怪人といえば、あの独特のネーミングが楽しかったです。枝雀師匠から「都丸にいちゃん、今度はどんな怪人が出てくるの?」ってよく尋ねられたので、「タコギャングです」とか「アブンガーです」と答えたら「タ……、タコギャング!?」「ア……、アブンガー!?(笑)」って、名前だけで爆笑してました(笑)。

――がんがんじいのファンの方から、今でも声をかけられたりすることはありますか?

たまに落語会へ来てくださったお客さんで、色紙に「がんがんじい」と書いてもらえますか、という方がいらっしゃいますね。がんがんじいの小さなフィギュアをいただいたこともあって、今でもがんがんじいのことを覚えているファンの方には感謝しております。でもスカイライダーならまだしも、がんがんじいを今ご存じの方って、かなり深い仮面ライダーファンなんじゃないですか(笑)。

――『THE仮面ライダー展』大阪会場で、がんがんじいやスカイライダーの立像と対面されたときのお気持ちと、師匠が『仮面ライダー(新)』に出演されていた時代をふりかえって、ご感想をお願いします。

今日こうして、がんがんじいと再会することができて本当に嬉しいです。なにしろ『仮面ライダー(新)』は僕のドラマデビュー作品ですからね。スカイライダーも、歴代仮面ライダーでいちばんスマートだし、カッコいいと思っています。聞くところによるとがんがんじいもスカイライダーも、当時の仮面や衣装を忠実に再現されたそうですね。とてもよく作られていて、すごいという言葉しか出てこないです。

  • 『仮面ライダー(新)』でがんがんじい/矢田勘次を演じた桂塩鯛

会場を巡りまして、仮面ライダーが時代の流れに合わせて何度も進歩・発展しながら長く続いていたことを、改めて感じました。『仮面ライダー(新)』のネオショッカーは地道な悪さをしていることが多く、「そんなことやってて世界征服できるんかいな」と、出演しながら少し心配していましたけど(笑)、子どもたちの身近な場所に怪人が出てきて、そこに仮面ライダーが駆けつけるというシンプルなヒーロー像が、あの時代には求められていたんだと思います。

(C)石森プロ・東映