■女優業の始まりは突然「私演技するんですか、へぇー」

――ここからはシシドさんについてもお伺いしたいのですが、アーティストとして活動される中、役者を始めたのはどんなきっかけだったのでしょうか。

ドラマ『ファーストクラス』(14年、フジテレビ)の企画書をマネージャーに渡されて、「明日、出演OKって言ってくるから」と言われたことです。

――出演がほぼ決まった状態で話が来たんですね。

そうですね、「私演技するんですか、へぇー」という始まりでした。

――アーティストとして活動している中で、ドラマに出演することに葛藤はありましたか。

最初は、女優業も音楽もすべて、“席の数”が決まっているという考えが強かったんです。アーティストを始めたときに、ほかの分野の方が音楽活動をされるのを見て「こっちの席を取らないで」と感じることがあったので、違う分野の席を奪いに行くような女優のお仕事には抵抗感がありました。

――そんな思いで飛び込んだドラマの現場はどんな雰囲気でしたか。

想像以上に、皆さんが「アーティストのシシド・カフカにどんなことができるか」を一緒になって考えてくださったんです。ありがたいことにそんな現場がずっと続いたので、私もどんどん心が柔らかくなって、演じることや作品を純粋に楽しめるようになっていきました。『ファーストクラス』の現場でも、共演者の皆さんも聞けば何でも答えてくれましたし、監督も納得がいくまで話し合いに応じてくださったので、全員に甘えてやりきることができました。夏木マリさんがいたのも大きかったかもしれません。

――夏木さんとはどんな関係性なんでしょうか。

マリさんとはデビュー前から面識があったのですが、アーティストが芝居の現場に来たことをすごく尊重してくれて、リラックスできるように気を使ってくださったのでありがたかったです。

――素敵な方に恵まれた現場だったんですね。

靴の中に画鋲を入れられるのが当たり前の世界だと思っていたのですが、全然そんなことないんだなと(笑)。皆さんにたくさん世話を焼いていただき感謝しています。誰かと物作りをする楽しさは音楽と同じで、場所が変わっただけなんだという発見がありました。

■今クールは『何曜日に生まれたの』『警部補ダイマジン』の2本に出演

――現在、『警部補ダイマジン』(テレビ朝日)にも出演されていますが、同じクールに2本出演するという経験についてはいかがですか。

同じチャンネルで、こういうのアリなんだ! とビックリしました(笑)。実は『何曜日に生まれたの』は後からお話を頂いたのですが、高い熱量で声をかけていただいたので、ありがたいことだなって。その思いに応えられていたらいいのですが。

――それほど、「久美はシシドさんに」という思いが強かったんですね。『警部補ダイマジン』の賀来さくら警部補はどんな役どころでしょうか。

劇中でも“リア充”という表現が出てきますが、賀来さんは久美とはまた違った形で「我が道を生きている女性」というキャラクターです。

――ビジュアルも全く違うのが印象的です。

本当ですか? 良かった良かった!

――では最後に、『何曜日に生まれたの』の見どころを教えてください。

会話劇でストーリーが進んでいって、視聴者の方の想像をどんどん裏切る展開になっていくと思いますので、ぜひ毎話逃さず見ていただければうれしいです。

■シシド・カフカ
6月23日、メキシコ生まれ、日本育ち。14歳でドラムを始め、2012年、ドラムヴォーカルのスタイルでCDデビューを果たす。2014年、『ファーストクラス』でドラマデビュー。以降、『わたし、定時で帰ります。』(19年)、『ハムラアキラ〜世界で最も不運な探偵』(20年)、『レッドアイズ 監視捜査班』などに出演し、女優としても活動の幅を広げる。現在、『警部補ダイマジン』(テレビ朝日系 毎週金曜23:15~※一部地域除く)、『何曜日に生まれたの』(ABCテレビ・テレビ朝日系 毎週日曜22:00~)に出演中。10月13日にはSpotify O-Westにてワンマンライブを開催する。