1993年にNSC大阪第11期を卒業し、お笑い芸人になってから30年の歳月が流れたケンドーコバヤシ。ピン芸人として独自の路線を突き進むケンコバだが「アクセルを全開に踏んだら誰も笑わない。こんな言い方をするとお叱りを受けるかもしれませんが、めちゃめちゃ手を抜いているんです。本気を出すことは30年前に捨てました」と語る――その真意とは?
2021年にケンコバが主催して行われたお笑いライブ「地獄寄席」。おどろおどろしい名の通り、地下で這いつくばっているがケンコバが「面白い」と思う芸人を、日の目に浴びさせたいというコンセプトのもと行われた。2年後、第2弾「地獄寄席LEVELII」(8月17日 座・高円寺2)を開催するということは、前回大きな反響があったということだろうか。
「前回はコロナ真っただ中で、みんなライブが終わったら足早に帰ったので、お客さんの反応も、メンバーたちの手ごたえも全くなかった。僕自身もまったく(笑)。まあ、手ごたえを感じるようなキャリアでもなく、やる前からこのぐらい受けて、このぐらいの満足感かなと思っている通りだったんですよね」
それでも第2弾が開催される。そこにはケンコバ自身も何か期待があるのだろうと思ったが、「全くないです(笑)」と否定する。
「単なる安請け合い。マネージャーが異動になると思っていたので『いいよ、やりますか』と答えたら、マネージャーが異動にならず、やることに(笑)。もうやらない前提でしたが、地獄というのは5層あるみたいなので、2番目の地獄をやるのもいいのかなと思います」
とはいえ、ケンコバチョイスの芸人。そこには、なにか浮上するきっかけを――という親心もきっとあるはずだ。
「ないですね。まあ、行きつくところがないだろうなという意味で引っかかったメンバーたち。ここで選ばれたというのは恥じるべきことなんです。ある意味でこの寄席で引導を渡すというか(笑)」
ケンコバらしい叱咤激励のように感じるが、独特の物言いと芸人としての立ち位置は、類を見ないほど個性的だ。それでもケンコバは「全然アクセルを踏んでいない」と語る。
「僕がアクセル踏んだらとんでもないことになってしまう。常人だと理解できない。その現実はデビューした時に突きつけられているんです。本気を出していたら誰も笑わない。むしろ怖いと思われていて。いろいろな人にお叱りを受けるかもしれませんが、そこから手を抜くようになりました。そうしたらお客さんが笑い出した。出力を絞ったら笑ってもらえたんです」