デビューから10年目という節目の年に巡ってきた連続ドラマ主演。バリキャリというキャラクターでありながら、恋愛模様やコミカルな作風など、これまでの山本とは違う面を観ることができる。

「コメディって、すごく相手との間が大切だなと感じますし、アクションと同じくらい難しいと思うんです。今回は芸人の守谷日和さんなどもいらっしゃって、本当に1行のト書きでびっくりするぐらい場面を膨らませていて、笑いをこらえるのが大変でした」

山本自身、難易度が高いと感じているコミカルな場面でも、予想以上に思い切り演じることができた。そこには2020年に三谷幸喜氏が作・演出を務めたシットコム『誰かが、見ている』出演の経験が大きく活きているというのだ。

「『誰かが、見ている』はとにかく三谷さんを含め共演の方々も、みんな遊び心がすごくて、臨機応変に対応していかないと、とてもついて行けない。あの現場ではすごく鍛えられました。今回思った以上に、ここぞという場面で怖気づかないで、躊躇なくふざけることができたのは、『誰かが、見ている』の現場を経験していたからだと思います。しかも、度胸を持って演じた部分に対してOKを出してくださることが多かったんです(笑)」

映画『キングダム2 遥かなる大地へ』で演じた羌象、『鎌倉殿の13人』での暗殺者・トウ、『今際の国のアリス』シーズン2のリサなど、ファンタジックで印象的な役柄を演じつつ、さらに本作では、日常にいるキャラクターで喜怒哀楽を表現し、また新たな山本の魅力が垣間見える。充実一途と言っても過言ではない活躍だ。

「俳優を始めて10年経ちますが、まだまだうまくいかないことだらけです。いまでもその感覚は強く、やっぱり難しい世界だなと強く思っています」と意外にも感じる言葉を発するが「でもだからこそ、俳優業は楽しいです。難しいからこそ、一つでも思いが叶うと、この上ない幸せなんです。とてもやりがいがあります」と目を輝かせる。

「成長できる機会を与えてくださるからこそ、頑張れるんです」と語った山本。「私の唯一の長所は、人に恵まれていること。これまでたくさんの素敵な先輩に巡り合えました。そして20代後半に差し掛かった今年、今度は『この子たちのために』と純粋に思える年下の子たちと作品を共にできました。年齢を重ね一つ新しい環境になったのかなと思うと、とてもうれしいです」と今後さらなるステージへの飛躍に思いを馳せていた。

  • 『埼玉のホスト』第1話の場面写真 (C)『埼玉のホスト』製作委員会

■山本千尋
1996年8月29日生まれ、兵庫県出身。3歳から中国武術を習い、数々の世界大会で優勝。JOCジュニアオリンピックカップでは「長拳」「剣術」「槍術」の3種目3連覇の実績を持つ。女優をはじめてからは、持ち前の身体能力を活かし、多くの作品でアクションシーンを演じ、2015年に映画『太秦ライムライト』でベストアクション女優優秀賞を受賞。2022年、テレビ朝日系ドラマ『未来への10カウント』では、プロボクサーライセンスを活かした最強のライバル役を演じ、NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』トウ役も話題に。映画『キングダム2 遥かなる大地へ』では羌象役、Netflixシリーズ『今際の国のアリス』シーズン2』ではリサ役を務めた。