幼少期から中国武術を習い、類まれなる身体能力で、映画初出演となった『太秦ライムライト』をはじめ、大河ドラマ『鎌倉殿の13人』での暗殺者・トウ、Netflixシリーズ『今際の国のアリス』シーズン2のリサなど、アクション女優として着実に実績を重ねてきている山本千尋。そんな彼女が、傾きかけている埼玉のホストクラブを立て直す超敏腕コンサルタント役として、連続ドラマ主演を務めるのが『埼玉のホスト』(7月25日スタート、TBS系 毎週火曜25:00~25:30)だ。山本にとって女優活動10年目となる節目に挑んだラブストーリー&青春コメディ。「アクションと同じくらいコメディは難しい」と語っていたが、おじけづかずに度胸を持って臨めたのは、ある経験があったからだという――。

  • 山本千尋

『埼玉のホスト』は、何をやっても中途半端だった埼玉のホストクラブ「エーイチ」を舞台に、買収危機にあるホストクラブを立て直すためにやってきた超優秀コンサルタント・荒牧ゆりか(山本)が、自身でスカウトしたちょっと変わったホストたちと、クラブを立て直そうと奮闘する物語。山本演じるゆりかは、超優秀ながら「人を信用するより、数字を信じる」というドライで冷徹な女性だ。

「ゆりかは、しっかりと正論を言う女性。その言葉に説得力を持たせるためにどうしたらいいのかは悩みました。立っているだけで優秀なバリキャリだと分かってもらえるような佇まいも研究しました。自分史上最もセリフが多く、一つ一つの言葉が浮かないようにするためには、しっかりと理解しなければいけないというところから始めました」

慣れない言葉を“覚える”だけではなく、体から湧き出るように発すること。さらにはホストクラブという題材のため、リアルにホストクラブに出向き、現場体験もした。

「実際行ってみると、皆さんすごく丁寧で、嫌な気持ちには絶対させられない。本当に素敵に接客していただいたので、この作品を良いものにしたいという気持ちが強くなりました」

山本と言えば、これまでアクション女優としての認知度が高かった。実際大河ドラマ『鎌倉殿の13人』やNetflixシリーズ『今際の国のアリス』シーズン2で魅せたアクションシーンは、キレキレで圧倒的な画力を見せた。今回もそういった動きのあるシーンはあるのかもしれないが、基本は真逆の文科系女子だ。

「とてもありがたいことで、もちろんアクションは私にとってとても大切なものですが、これまでアクションありきの配役が多かったんです。そんななか、このような役柄、しかも膨大なセリフを言うなど、いままで経験したことがなかったような役柄で、主演として参加させていただけたことはとてもうれしかったです」

さらにもう一つ山本にとって大きな挑戦だったのが、同世代や年齢の下の人たちとの現場での立ち振る舞い。これまでは年下と接する機会が少なかったという。しかし、ゆりかがスカウトとするホスト・岩槻キセキを演じる関西ジャニーズJr.・Aぇ! groupの福本大晴は年下、歌舞伎町の人気ホストクラブ「ラブ2000」のNo.1ホスト赤坂ゲンジを演じる楽駆は同い年だったという。

「これまでどちらかと言うと、素敵な大人の先輩方に巡り合えて甘えさせていただいていたのですが、今作はとても若い人が多く、自分以上に『みんな楽しく現場に入れているのかな』とか『心配なことはないかな』という思いを撮影終わりの帰り道で考えていました。よりみんなで一緒に作品を作れているという気持ちを抱けたのは大きな学びでした」